国立病院重症心身障害者病棟担当者会議報告

2002年10月,博多で,国立病院医学会という,内輪の学会がありました.同時に重心棟の施設長/実務担当責任者会議もありました.下記がその報告です.何かのご参考になれば.

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平成14年度国立重症心身障害病棟担当医師協議会

日時:平成14年10月18日(金曜)15時―17時
場所:博多港国際ターミナル(国立病院療養所医学会総会にあわせて開催された)

会の印象:国立病院療養所の重心棟担当者のほとんど全てが年に一度集まる唯一の会議である.重心病棟の実務担当者会議である.院長・副院長クラスか,筆頭医長クラスで占められている印象である.出席率は非常にいい.この上に,国立重症心身障害協議会がある.これは全国各地の病院長クラスの会議である.

議長挨拶
1.支援費制度が来年度から始まり,担当の役所が児童相談所から市町村に移る
2.平成16年度からの独立行政法人化で何がどうなるのか,その影響と,どういう対策を立てていけばいいのか全く見えてこない
3.民間への委譲について:現在78施設だが,今後も,美幌,南愛媛,小樽の各病院・療養所が民間へ委譲の予定.閣議決定では民間への委譲をさらに進める方向だが,世論の動向は,それとは反対に,重心こそ,国が政策医療として担っていくべきで,簡単に民間委譲すべきではないという意見が根強くあるようだ.このあたりの世論の感覚に,重心病棟担当医師は敏感になっていかなければならない

国立重症心身協議会の要望書について
これからの重点項目としての通園事業を進めたいが,困難も多い国立療養所はこれまで通園事業に消極的だったが,今後はB型と不十分ではあるが通園事業を進めていき,さらにはA型を目指していく.現在,いわき,下志津などがやっているが,これから鈴鹿,富山,三重,長崎がさらに通園事業をやっていく.
討議:通園事業の金がすべて一旦国庫に入ってしまって,自由に備品が買えない?通園事業のための人件費(非常勤)に使えない? また建物の改装にも使えない?問題は,人を新しくつけるだけの金が回ってこないこと.通園事業をやるためには,まず,次年度の事業計画に入れて正式に予算を取ることが必要である.

国立重症心身協議会理事会での話題
重心児(者)を見られる医者が少なくて,どの施設も困っているこれが,国立重症心身障害協議会の理事会で一番深刻な話題になった.医者が足りないと,重心児(者)を見る看護師や保育士も育ってこない.平成16年度からの臨床研修必修化が始まるが,その中にどうやって組み込んでいくかということも問題になった.(しかしはっきりした方針は決まらなかった.池田注:何しろ臨床研修必修化の具体的内容そのものを,医道審議会がまだ決められないのですから)

独立行政法人化に向けて
何も情報が入ってこない.個別法で何も決まっていない.他の自治体病院と同じ企業会計になるということぐらいしかわかっていない.
質問:現在,措置費が実質的に搾取されている可能性が指摘された.つまり,国,厚労省と現場がぐるになって,措置費が重心児(者)のために使われずに,一般病棟・外来のために使われている.これが現在の時点でも問題であり,独立行政法人化後は,本来の,正しいお金の使い道をするという意味から,大きなスキャンダルに発展する可能性がある.回答:確かに,措置費は一旦国庫に入り,その他の収入と一緒くたになって使われている.だから措置費が全て純粋に重心棟のために使われているとは言えない.その面で搾取があるだろう.少なくとも,我々は本当に搾取があるのか,明らかにしていかなければならない.具体的に言えば,措置費の収入がいくらあって,重心棟の経費がいくらかかっているのかを明らかにしていく作業である.しかし,これはなかなか難しい作業でもある.というのは,例えば,診療面では他の診療科から応援を受けている.こういう面をどう評価するかという問題もある.

重心病棟での行動制限の問題
身体拘束(固定),隔離,施錠のガイドラインの作成があちこちで進んでいる.国立療養所松籟荘の例が紹介された.病棟の施錠,隔離について内規を作ったことが紹介された.また,国立重症心身障害協議会でも,重心病棟における行動制限についてのガイドライン試案が提示された.

政策医療ネットワークからの連絡事項(国立精神神経センター 佐々木医長)
質問:患者情報データベース登録にあたり,本人あるいは保護者からの了承を得ることが必要ではないか?回答:その通りで,遅ればせながら,書式を用意している.

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