インフルエンザによる死亡数/超過死亡数の乖離に関する考察
-迅速診断キットと治療薬開発の影響について

インフルエンザによる死亡数の推移と超過死亡数の間に乖離があるのは当然だが,その乖離が年ごとによって大きく異なるとなると,話は別だ.社会実情データ図録における「インフルエンザによる死亡数の推移」と「シーズン毎の超過死亡数の推移」の図を比較すると,特に2000年以降のインフルエンザによる死亡数の推移と超過死亡数の推移とが全く相関しない.
 具体的には,2000年以降2014年までは,インフルエンザによる死亡数は数百人から2000人の間を上下していたが,2015年には2262人と1976年以来40年ぶりに2000人を超え,翌16年こそ1463人と2000人を割ったが,17年2569人,18年3325人,19年3571人と増加の一途を辿っている.一方,超過死亡は2000年以降,1万人を超えたのは02/03(同年のインフルエンザによる死亡数は358人),04/05のシーズン(同年のインフルエンザによる死亡数は3694人)のみで,特に2015年以降は5000人以下に止まっている.

このような乖離の原因を考察する上で,インフルエンザの診断法と治療薬の影響を考えてみる.
2000年:初のインフルエンザの迅速診断キット(DirectigenTM Flu A+B(Becton Dickinson and Company,USAが日本で承認・発売された.
2000年12月:リレンザ(ザナミビル)販売開始
2001年2月:タミフル(オセルタミビル)販売開始
2010年1月:ラピアクタ(ペラミビル)販売開始
2010年9月:イナビル(ラニナミビル)販売開始
2018年3月:ゾフルーザ(バロキサビル)販売開始

上記の経緯を踏まえると,次のような流れが見えてくる.
治療薬が充実するほど→診断の意義が大きくなる→お医者様達が積極的に診断するようになる→診断される患者数が増える→(迅速診断キットが出現する以前は確定診断されずに亡くなっていったであろう人=超過死亡数の中に入っていた人も)インフルエンザと診断されて亡くなる人の数も増える. 私には他に乖離をうまく説明する理屈が見つからないが,より説得力のある理屈を考えた方は→乞連絡

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