Essential Drugs

The Use of Essential Drugs. World Health Organization Geneva 1997.

この,全部で74ページしかない薄っぺらい本に載っている薬の数はわずか320.注射薬や外用薬はもちろん,造影剤や蛍光眼底用の薬も含めてだ.しかもその中にはトリパノソーマ症に使う薬なんぞが入っているから,日本で必要な薬はせいぜい300というところ.例えば日本のお医者さんが大好きなセフェム系の抗生物質は一つもリストに載っていない.アンピシリンとペニシリンの類がちらほらあるだけ.

日本中どこを探しても,薬局にある薬の数が300という病院はどこにもないだろう.私が所属するコロニー嵐山郷では薬の数を徹底的に絞っている.たとえば降圧薬はトリクロロメチアジド,プロプラノロール,エラナプリル,ニフェジピンしか置いていないし,注射用抗生物質はアンピシリン,セファゾリン,ゲンタマイシン,セフォペラゾンしか置いていない.これだけでも当施設の医者の見識が如何に高いか,がわかっていただけると思う.それでも経口薬,注射薬,外用薬併せて600ある.

薬価云々,薬漬け云々を議論する前に,まず薬を使う医者が,本当に良心に恥じない処方をしているかどうか,この本を前にして自らに問いかけてもらいたい.薬局の在庫リストにカルシウム拮抗薬やACE阻害剤がそれぞれ5種類,セフェム系の抗生剤に至っては10種類以上もあるなんて,絶対おかしいんだよ.それを野放しにしているっていうのは,あなたが如何に日常の臨床をおろそかにしているかって証拠に他ならない.

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