DIY特区

医療は本来地場産業だから,地域医療というのも,考えてみればおかしな言葉だが,全国レベルの医療を論じたい人々があまりにもたくさんいるので,わざわざ地域という言葉を冠する必要が出てくるのだろう.

実際に行われる医療の主体が地域医療ならば,公衆衛生意識を高め,健全な医学的批判精神を育てるのも,地域住民を対象にすべきであって,日本医師会幹部や,厚生労働省を批判しても,何も始まらない.

現場の実情を弁えない全国紙の記事やおもいっきりテレビに対する批判は,東京が日本の中心であると信じ込んでいる人々に任せておけばよい.また,地域住民に健全な医学的批判精神が育てば,地域住民自身がおもいっきりテレビを批判的に見てくれるようになるだろう.そのような住民は,また,地域の医療資源を大切に使ってくれるだろう.

地域住民に健全な医学的批判精神を持ってもらうためには,地域メディアの協力が不可欠である.幸い,地域メディアに従事する人々の多くは地域住民でもある.地域の実情をよく知り,人と人とのつながりも持っている.お互いに顔がわかっていれば,いい加減な仕事はできない.地域メディアを大切にすれば,相手もこちらを尊重してくれる.

公衆衛生意識の向上,健全な医学的批判精神育成,医療資源の効率よい利用方法の習得.こういった目的を自分の地域で実現するのが,DIY特区である,と言えば,何やら大事に聞こえるが,実は本来の地域医療活動に過ぎない.新しくイベントを打ち上げたり,つまらない箱物に無駄な金を使う”地域おこし”より,よほど地域振興に役に立つ.

国に特区の申請と大騒ぎをするが,特区とは本来,お上にお願いして頂戴するようなものではなく,自分で作り上げて,それを国に認めさせるものである.乞食のように国に頭を下げてもらった金で何が育つというのか.

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