トップセールスの罠:原発村とアビガン村
安倍首相が推しまくるアビガン「不都合な真実」
トップセールスで売り込む品:それはその国の市民を幸せにするのか?
一国の首相/大統領が 自国の製品を売り込むために他国に営業をかけることはよくあることだ.しかし,その輸出品は多くの場合、市民の幸せとは対極にある.その典型例が武器である。特に米国の現大統領は武器のセールスマンとして、つとに有名である。一方、戦後の我が国の首相はもっぱら武器以外の工業製品を売り込んできた。本稿では,原発村とアビガン村に共通する,「トップセールスの罠」という観点から,アビガン事件の本質を解説した.来たるべき極東国際薬害裁判への対応の指針として,関係者の方々に役立てて頂ければ幸いである.

原子炉輸出国となるまでの道程
1962年に池田勇人首相が欧州一の武器輸出大国を訪れた時の土産はトランジスタラジオだった。フランス大統領から「あんたはトランジスタラジオのセールスマンか」と言われて、「武器を売り込むよりずっとましだろう」と言い返した という記録は寡聞にして知らない。武器と並んで原発の輸出大国としても有名なフランスは、日本の原子力村を長年に渡って支えてきた。そのお陰もあって、日本は核保有国以外では世界初の原子炉輸出国となった。2005年に閣議決定された「原子力政策大綱」に基づき、日本は官民一体となって原発輸出の実現へと怒涛の如く走り出したのである。(日本の原発輸出政策はなぜ失敗したのか

ベトナムへの原発輸出
その閣議決定から5年、あの劇的な政権交代の翌年の2010年10月、東京工業大学・応用物理学科卒菅直人内閣総理大臣がベトナムの原発を、トップセールスで受注した。その時のニュースキャスターや現地リポーターの興奮した口調を、菅総理の誇らしげな面持ちと共に伝える動画が(*)、今もなお奇跡的に消去されずに残っているので、是非御覧戴きたい。もし既に何者かにより消去された後だったならば、日経の記事で我慢しなさい。その後も野田佳彦首相安倍晋三首相と,党派の恩讐を超え三代にわたって粘り強く引き継がれてきた,このベトナムへの原発輸出プロジェクトも、2016年11月、白紙撤回となった。しかし,御心配(してないって?)には及ばない.何事にも準備万端の安倍首相は,ベトナムが白紙撤回する10日も前にインドを訪れ,今度は自らが原発のトップセールスを成功させている
* 菅総理によるトップセールス受注を速報した動画が この10年間、いまだに消去されずに6720回視聴、thumb up 19、thumb down 3(2020年5月16日現在)で野晒しのまま放置されている理由は熟考に値するが,紙面の関係でここでは触れない。ただ、日本の原子力村を長年支援してきたフランスも2018年11月、ついに脱原発に舵を切ったことは申し添えておく。

外務省:相手国を馬鹿にして騙す役所
では,アビガンは輸出・供与先の市民を幸せにするのか?ありえない.アビガンが輸出・供与先の市民を幸せにすると断言する人間は嘘つきである.偽善者である.それは私だけの意見ではない.薬害オンブズパースン会議ニューヨーク・タイムズ,国や立場が違う個人,組織の共通意見である.「絶対安全」を看板にして、文字通り国家を挙げて取り組んできた原子炉輸出でさえ、上記のように苦難の歴史がある。一方アビガンには重大な副作用がある。それだけではない。有効性も科学的に証明されていない。百害だけで利益を受けるのは企業だけという、史上類を見ない「百害錠剤」である。それを推奨するのが、医師資格を持ちながら添付文書が読めないどころかヒポクラテスの誓いさえ知らないセールスマンときてる。なんてこった.

そもそもアビガンを輸出すること自体,「相手はニューヨーク・タイムズも読めない馬鹿どもだ」との大前提に立っていることになる.読んでさえいれば,必ずアビガンを拒否するだろうから.そこで問題なのが既にアビガンを購入あるいは供与された国の反応である.4月2日付けの共同通信の記事には,既にドイツが数百万錠を発注,イタリアでも臨床試験が行われているほか、インドネシア政府も多数を発注した」とある.これらの国でも当然,ニューヨーク・タイムズは読める.もし私がこれらの国の市民だったら,一体全体,日本はなぜこんな薬を輸出・供与したのか?自分の国で有効性も証明されていない上に重い副作用もある「錠剤」を,なぜ「これはいい薬だから」と嘘をついて送りつけてきたのか?我々を実験台に使うつもりだったのか.とんでもない国だきっとそう思うだろう.

4月2日からもう一ヶ月半経つ.ドイツで,イタリアで,そしてインドネシアで,アビガンは誰にどう使われたのだろうか?その情報を誰がどのようにして把握しているのだろうか?外務省は責任を持って答えられるのだろうか?それとも相手国に何もかも任せきりなのだろうか?だとしたら,なぜそんな危険なことをしたのだろうか?中でもドイツはサリドマイドを生み出した国であり,単位人口当たりのサリドマイド禍被害者は3049人,日本の12.5倍だった.当然,催奇形性には日本以上に敏感である.アビガンの輸出・海外への供与の扱いは,まかり間違えば重大な外交問題に発展する.それを承知の上の輸出・供与だったのだろうか?私には回答してもらわなくても結構.来たるべき極東国際薬害裁判でしっかり説明してもらえればそれで結構だ.

アビガン村の悲劇を回避するために私ができること
ここまでコロナ禍を見事に乗り切ってきた安倍首相の回りには、ことアビガン事件に関しては,アビガンのセールスマンのように,彼に媚びへつらうしか能の無い取り巻きは掃いて捨てるほど居ても,適切な危機管理を助言できる人物は誰一人としていない.その結果,彼にとってアビガン事件は掛け値なしに最大の危機となった。私は彼には一度も会ったことはないし、これから一生会うこともない。彼は私の上司ではないから私の業績評価や給料にも関係ない。だから彼の運命なんて、正直どうでもいいと思っている。アビガンのセールスマン共々,来たるべき極東国際薬害裁判で彼らがメディアによって国民の皆様の前で吊し上げられる結果になっても、自業自得だ、ざまあねえやと思うだけである。薬害オンブズパースン会議もニューヨークタイムズの記者も アビガンの正体を知っている世界中の人間は全員そう思っている

 ただ私は、彼らに騙されている患者さんが不憫である。「総理大臣だけでなく日本医師会会長様までが『素晴らしい薬』だとおっしゃっている。刑務所しか勤め先が見つからなかった医者が何を言うか」それが普通の市民の反応である。私はそういう市民が騙されても自業自得だとは決して思わない。だからムショ勤めの身でも、こうしてこつこつアビガンの正体を綴っている。もちろんアビガンの承認がもたらす結果は私にはコントロールできない。しかし、自分のできることはやっておく。それが将来必ずやってくる審判の日に、自分を守る何よりの盾になるのだから。
承認されたってへいちゃらさ.だってアビガンを勧めるような破廉恥なお医者様はお断りすればいいんだから
自分の命は自分で守ろう!!
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