便所の落書きの監修だと?
ーWELQ問題を考えるー
何を大騒ぎしているのか?みのもんたの繁殖場所がテレビからネットに移動しただけではないか.我々はウェルクのようなゴミ箱あさりに精を出すようなバカでもなければ暇人でもない.
高かった授業料
リテラシーは教養ではない.喧嘩の道具である
モバゲーに代わる収益の柱は便所の落書きだった
ネットで復活した「おもいっきりテレビ」
便所の落書きで何がわかる!
怪しげな組織の判断基準
参考:「女工哀史」という視点
高かった授業料
南場さんの話から次のような問題点が浮かび上がってくる
●一口に「医療情報」といっても,それを発信する側,発信する内容,受ける側の3つの変数それぞれに大変なばらつきがある
●当該医療情報の「正しさ」を判断できる人間などどこにもいない.
●「適切な医療情報」などというものは画餅に過ぎない
●その画餅を描くにさえ,莫大ななコストがかかる.
以上より,「(医療に限らず)正しい情報を必要な人に提供すれば,その人々が喜んで対価を払ってくれる.だから,それがビジネスになる」という主張は妄想に過ぎない.にもかかわらず,(卒業した学校の偏差値や社会的に地位・肩書きとは全く関係なく),人々がそういった妄想に取り憑かれやすい.リテラシーの形成機序についての理解が不十分だからだ.
リテラシーは教養ではない.喧嘩の道具である
まず,上記の問題点の解決の鍵は個人のリテラシーである.どんなにガセネタが氾濫しようとも,受ける側に十分なリテラシーがあれば,そのガセネタは消えて行くし,そのガセネタを利用するビジネスも成り立たないからだ.ところが,個人のリテラシーは,その本人に危機感を伴った当事者意識が生まれ,かつそれが持続しない限り,決して生まれないし,育たない.リテラシーは教養ではない.喧嘩の道具である.喧嘩をしなくても済む人間には一切必要がない.それは以下のような事例からすぐにわかることだ.
●どんなに良質な法的リテラシーの学習資料が存在しようとも,実に6割の国民が裁判真理教という天動説を信じている環境では,警察・検察・裁判所に対する不満なんぞ,生まれようがない.
●Jikei Heart Studyがとんでもないイカサマであることは,すでに2007年にランセットに掲載された当時から公開情報だった.それが5年以上経って新聞が騒ぎ出して上を下への大騒ぎになったのは,日本の多くの医師が,「治験なんて薬屋のやることで医師の仕事ではない」と嘯くばかりだったからだ.
●「食のリスクを問いなおす」が全然売れないのは(^^:),裁判真理教信者同様に,リスクリテラシーの「面白さ」が理解できない人がまだまだ圧倒的に多いから.
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「WELQでガン調べて愕然…」 夫の看病で社長引退、南場会長が語った言葉 「ネットは役に立たない」
withnews 2016/12/8(木) 7:00配信より抜粋
「南場会長のかかわった医療メディア『メドウェッジ』の記事がWELQに譲渡されていた。医療で払うべき細心の注意が払えなかったことや、事業を手元に置いておくべきだったとか、反省点がないか」と問われました。
「メドウェッジ」について、南場会長は「学術論文を一般の家族や健康に関心がある人に届けることが目的で、医療のプロが書いていたが、想定ほどユーザー数が伸びなかった」と振り返りました。
譲渡した経緯については「WELQを始める時にある程度の記事量を確保するため、最初の種コンテンツとしてまとまったものがほしいということで、内容は過程からして信頼置ける内容だったため」と説明。
一方で「専門的な情報を素人に届けることを事業として続けられる状態の解を見つけることができなかった」と反省の弁を口にしました。
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モバゲーに代わる収益の柱は便所の落書きだった
黒字の秘訣は,コンテンツを医学論文から便所の落書きに切り替えたことによるコストダウン.
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モラルなし DeNA医療情報サイト 日経新聞 2016/12/1
(前略) 実はDeNAによる医療情報サイトはウェルクが初めてではない。14年10月に、子会社で個人向けの遺伝子解析事業を手掛けるDeNAライフサ
イエンスが「Medエッジ」と題したヘルスケア情報を扱うサイトを開設。著名な医師を監修に迎えて、医学論文などを基に医療情報を提供していたが、16年
2月にウェルクに吸収された。 医学的な知識と執筆力を持つライターはそう多くはなく、その記事内容をチェックできる人材も少ない。つまり、医学的に正確
な情報を供給するのには高いコストが必要となる。当時の関係者はMedエッジが高コスト体質だったことを認めるとともに「吸収されたとき、現在のような質
の記事が掲載されることは予想できた」と話す。
DeNAが効率に軸足を置きすぎた姿勢は否めない。「モバイルゲームと並んで収益の柱になる事業だ」。守安社長はウェルクなど10媒体を束ねるキュレー
ションプラットフォーム事業に大きな期待をかけてきた。14年からの先行投資が実を結び、今年9月には単月黒字を達成。「18年3月期には四半期ベースで
10億円以上の黒字にできる」と意気込んでいた。
主力事業であるモバイルゲームの後退で、16年3月期の連結営業利益は198億円とピークの4分の1近くまで縮んだ。自動運転や遺伝子検査など将来に向
けた種まきに取り組んでいるが、こうした事業が芽吹くのはまだまだ先。だからこそ、短期の黒字化が見越せるキュレーション事業の期待感は高かった。(後略)
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ネットで復活した「おもいっきりテレビ」
非公開ってことは,そのコンテンツに,まだまだ未練たらたらってことね.便所の落書きを監修だと? へっ、もし、そんなことをやってやろうなんて暇人がいたら、お目にかかってみたいもんだぜ。仕事をもらえない「専門家」だから,きっと安い労賃で引き受けてくれるだろう。この会社のやっていることは、決して新しいことではない。1987年から始まり20年間も続いたデマ垂れ流し番組をネットで再現しているに過ぎない。デマはデマである。悪意の有無とは関係ない。私を公文書でやぶ医者呼ばわりした仙台地検の検察官も仙台地裁の裁判官にも、おそらく悪意はなかっただろう。しかしデマはデマである。
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DeNA、医療サイトを非公開に 無断利用や誤り指摘で 朝日新聞 2016年11月29日
http://digital.asahi.com/articles/ASJCY6HHMJCYULFA02M.html
IT大手のディー・エヌ・エー(DeNA)は29日、医療や健康情報のインターネットサイト「WELQ(ウェルク)」の全ての記事を同日夜から非公開に
した。サイトは外部のライターや一般からの記事を掲載していたが、内容に誤りがあるのではないかといった指摘が寄せられていた。
すでに医療関係の記事は非公開にしており、29日夜からは全てを非公開にした。今後、記事内容を医師ら専門家に監修してもらい、問題がないものから掲載を再開するという。「寄せられた意見を真摯(しんし)に受け止めた」としている。
ウェルクは2015年秋にサービスを開始。外部のライターやネット利用者らから記事を募り、それをまとめる「キュレーションサイト」と呼ばれる方式だ。
美容や健康情報だけでなく、白血病や肺炎など専門的な知識が必要な医療関連の記事も掲載した。月1回以上サイトを訪れる利用は、のべ2千万件以上あるとい
う。同社にはサイトの閲覧で広告収入が入り、ゲームに次ぐ収益の柱につながると力を入れてきた。
ただ、10月ごろから記事に対し、他のサイトの記事を無断で利用しているほか、内容自体にも誤りがあるのではないか、との指摘が寄せられていた。専門家による記事の監修は一部にとどまっていた。
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便所の落書きで何がわかる!
焼き物や能の面白さを文字言語だけで伝えようと誰が思うだろうか?医療も同様。医療面接一つとっても、言語性の部分はおそらく1割にも満たない。それを知っている人間は、便所の落書きの監修に自分の大切な時間を費やすような真似は決してしないものだ。
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診察室で実際に会って話をして診察を受ける時の何十分の一か何百分の一かの情報で,大切な命のやりとりの判断ができると考える質問者と回答者の双方とも,正気の沙汰とは思えません.ネットで医療相談が可能と考えている医者にせよ患者にせよ,人間を診ずに病名だけで判断できるという錯覚に陥っているのではないか.そう危惧しています.少なくとも私は,自分の命のために必死で相談してくる患者さんに対して,文字だけで自信を持ってコメントできるほど,自分が名医だとは思っていません. (
『メールでの医療相談はやっていません』 より)
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怪しげな組織の判断基準
WELQ一つ叩いたところで,便所の落書きは決してなくならない.ならば,便所の落書きの被害を受けないように自己防衛する必要がある.つまり自分のヘルスリテラシー育成する必要がある.ヘルスリテラシーが育てば便所の落書きを認識し,さらに、便所の落書きを売りつけようとする勧進元の怪しさを見抜けるようになる.たとえば,DeNAは次のような特徴を持っている.
株主を大切にするばかりで、情報。サービスの品質管理やアウトカム評価には関心が無く、さらに良質なサービスを提供するための人材育成には一切関心が無い→だから、「キュレーション」(要はゴミ集め)でコンテンツを形成し、暇を持て余した自称専門家達に二束三文でお化粧させたゴミで、馬鹿な金持ちを釣り上げて、怪しげな「遺伝子検査」やら、怪しげな「健康事業」を売りつける。
件のテレビ番組の司会者は,別の番組でも,医療事故裁判に関して,さんざんデマを垂れ流していた(関連記事).この種の裁判に「おもいっきり」関与していたのもまた,公権力を含む怪しげな組織だった。『情報。サービスの品質管理やアウトカム評価には関心が無く、さらに良質なサービスを提供するための人材育成には一切関心が無い』旧主流派マスメディアと,そこに所属するジャーナリスト達に靴底を嘗めてもらっている公務員が集う司法機関、非営利だって,立派に怪しげな組織になれるのである。
参考:「女工哀史」という視点
DeNA問題の困難極まる病巣除去 キュレーションサイト運営は21世紀の「女工哀史」 医薬経済2017年01月01日号
すでに旧聞に属するが、16年の「新語・流行語大賞」は広島東洋カープの快進撃に絡む「神ってる」が選ばれた。プロ野球に興味のない向きには何のことだか、さっぱりわからない。一方、これと比較するのも酷な話だが、英オックスフォード大学出版局が選ぶ「今年の単語」は「post―truth」に決まった。
直訳すれば「ポスト真実」。感情や個人的な信念への訴えかけが、客観的事実より影響力を持つ状況を示す形容詞とのことである。英国のEU離脱や米大統領選でのドナルド・トランプ氏の当選時に、メディアなどにおいて15年比で約20倍も多用されたという。真実などどうでもよい、といったモラルハザードな時代の風潮を端的に示す言葉と言えそうだ。しかも不幸なことに、こうした悪しきトレンドは日本も例外とはならなかった。
本来ならば、徹底的に科学に立脚するべき医療・健康の分野に話を限っても、ノバルティスファーマの「ディオバン」を巡る臨床データの改竄や、武田薬品の「ブロプレス」に関わる誇大広告問題など、真実を軽視したと思われる由々しき事案が近年、相次いで発生した。そして16年12月も、消費者向け遺伝子検査サービスを鳴り物入りで始めるなど、ネット企業の中でもヘルスケア事業に力を入れていたDeNAがやらかした。
同社が運営する医療・健康系キュレーション(まとめ)サイト「WELQ」において、多くの下請けライターによって粗製乱造された(=著作権法抵触の疑い)信憑性に乏しい記事(=医薬品医療機器法違反の疑い)が、一部の識者などから読者への悪影響(=一般不法行為の恐れ)を指摘されながら、大きな社会問題と化すまで放置して利益の拡大を優先(=企業倫理の欠如)させてきたというから、正直、つける薬がない。
正直に明かせば、キュレーションなる言葉自体を今回の騒動で初めて知ったのだが、改めて辞書を引くと、「博物館や美術館などの展覧会の企画、構成、運営を司ること」とある。生半可な知識では対応できない相当な造詣を持った専門家によるサイト運営があって、初めてキュレーションサイトと名乗れるというのが本来のようだ。
当初の志は高かった
だがDeNAが行っていたのは、「クラウドワークス」という耳触りのいい言葉で集めた事実上の素人たちを安価で雇い、検索最大手グーグルのアルゴリズムの裏をかくかたちで「オリジナルコンテンツを装った5000~1万字に及ぶ大ボリューム記事を大量生産する」(業界関係者)ことだった。こうすることで検索時に、自社の記事が上位を占めるようにし、WELQのページビューを増やした挙句、結果として、コンテンツの値打ちとは不釣り合いな分厚い広告収入を運営側のみが得ていた。21世紀の「女工哀史」のような世界だ。
DeNA自身、こうしたキュレーションサイトビジネスが孕むいかがわしさを、十分認識していたと思われる。その証拠に、WELQ問題が炎上するや、若い女性をターゲットにした人気の“女子力応援サイト”「MERY」をはじめ、すべてのキュレーションサイトを突如非公開扱いとして、自社の本丸への延焼を防ぐ緊急止血策に踏み切った。「DeNAからは(非公開化について)何の連絡もなかった。おかげで『MERY
推奨!』と印刷していた販促シールを、商品容器からすべて剝がさなくてはならなくなった」と、ある中堅化粧品メーカーの社員は憤る。その対象は1万本に上るという。DeNAの慌てぶりが窺える。
同社は一応、第三者委員会を立ち上げ、このようなビジネスを誰が主導したか、なぜ問題を放置したのかなどを調査し、その後、関係者の処分に踏み切る方針を表明している。しかし、DeNAはここ数年、四半期決算ごとに彼らが「メディア事業」と呼ぶこのキュレーションサイトビジネスの成長性や実績を、市場関係者に強く訴えてきたという事実がある。同社の創業者である南場智子会長を含めた“組織ぐるみ”であった可能性は高いと見るのが自然だろう。
後発のネットオークションの運営会社として99年に産声を上げたDeNAは、事業のプラットフォームを逸早く携帯電話に特化することで他社との差別化を図った。その延長線上で、たまたま携帯ゲーム「モバゲー」が大ヒットしたことから今日の礎を築くことに成功。プロ野球球団の経営にまで手を伸ばすまでになった“わらしべ長者”のような企業である。医療・健康分野との関わり合いは、そもそも皆無に近かった。
ところが周知の通り、南場会長の夫が病に倒れ、経営を一時退いてまで介護に当たったという個人的な体験からヘルスケア事業への関心が生まれた。そして、ネット上に溢れる怪しげな健康情報に不満を感じた南場会長の意向によって14年夏、WELQの前身である医療情報サイト「Medエッジ」がオープンした。
Medエッジは、「最先端を親切に」をコンセプトに、医療と健康に関する国内外の情報をわかりやすく伝えるヘルスケア特化型のニュースサイトと志は高く、医療関係者の評価も低くはなかった。だが、肝心のページビューが伸びず、1年半ほどで閉鎖され、似て非なるWELQへと衣替えされた。この背景には、基幹事業のゲームビジネスに飽和感が強まり、次の収益の柱を確立しなければならないというDeNA経営陣の焦りがあったことは指摘するまでもない。
いろんな事業を試みるなかで、今回もたまたまキュレーションサイトの旨みを知り、「DeNAの社内にゴロゴロいる旧帝大卒やМBA取得者」(前出関係者)たちが知恵を絞り、法律すれすれのpost―truthなビジネスモデルを編み出した、といったところが経緯だろう。医療や医薬に対する根源的なリスペクトの情はなかった。
と同時に、サイトの運営実態を精査もせず、ページビューが多いという安易な考えに基づいて広告を出していた一部製薬会社の低いモラルも忘れてはならない。
WELQが提起した問題は、現在進行形であると同時に根が深い。今回はたまたまDeNAが発火点となったが、病理構造的には、キュレーションサイトを擁するネット企業のどこで起きても不思議はなかった。“マネタイズの亡者”とも例えるべき連中は、ジョブ・ホッピングを繰り返しながら各社を転々としているからだ。
DeNA、少なくとも南場会長は医療・健康系キュレーションサイトの再開に望みをつないでいる。だが、現実的には難しい。地に落ちたブランドもさることながら、情報の品質保証と事業収益性を両立させる手段が高度なAI(人工知能)でも使わない限り、挽回策は見当たらないからだ。グーグルのほうも検索アルゴリズムのバグを消し、各種のコンプライアンスに引っかかるような記事は上位に載らないように対処してくるだろう。
南場会長が13年に著してベストセラーとなった『不格好経営』では、「マッキンゼーで学んだことは、実際の経営には何も役立たなかった」との一文が綴られている。南場会長が今回の騒動から何を学んだのかはほどなく明らかになるだろう。一方、我われが学んだ教訓は「この連中が吐く、もっともらしい美辞麗句を信じるな!」の一言に尽きる。遺伝子検査と治療が必要なのはDeNA自身である。
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