医師の監査制度を考える

はじめに:
典型的なトンデモ医事裁判である北陵クリニック事件でも猛威をふるった「国民感情」 と呼ぶところの世論操作を全面的に請け負ってきたのは,「司法記者クラブ」という名の検察広報部です。検察は、この広報部が作成した全国紙の社会 面やテレビを通して、あることないことを垂れ流し、我々医師を恫喝してきました。しかし,それは我々医師自身が招いた結果です.

医師の中にも、いわゆるリピーター医師の ようなトンデモ医師達がいます。我々はそんな彼らの審理を怠って「かばい合い・身内に甘い」という一般市民の批判から逃げ回ってきました。その一 方で、脈の取り方も知らない警察官や検察官に善良な仲間が脅迫・恫喝され、冤罪に陥れられるの を見て見ぬふりをしてきました。今やそのつけが我々自身に回ってきているのです.

トンデモ医事裁判解消への道は、検察広報部である大手メディアが 焚き付ける「国民感情」と、メディア・リテラシーを備えた一般市民の冷めた視線とを明確に区別することから始まります。我々医師自身が診療の質に 対する自律性と当事者意識を取り戻し、日本の弁 護士や欧米の医師会でも持っている自律的な監査・懲戒制度により、自分達の過ちを仲間の冤罪にすり替えたような、卑劣極まりない医師達を処分して、良識ある一般市民の声なき声に応える以外に,トンデモ医事裁判の根本的解決策はありません。

メディアの罠
メディアが医師監査制度の欠如に気づいていないのをいいことに、我々は問題を先送りにしてきました。しかし、それは、メディアの罠です。医師監査 制度さえなければ、メディアは自分たちが目をつけた医師だけを血祭りに上げ、検察に売り渡すことができるからです。医師監査制度さえなければ、そ の医師が本当に監査・懲戒を受けなくてはならないのかどうか、メディアには全く判断する能力がなくても、記事を書き、番組を作ることができるので す。

なぜここまで我々は問題を先送りしてきたのか?弁護士並みの監査・懲戒制度がなぜ必要なのか?
●医師とその職能集団は社会の負託に応える義務がある。その役割を果たすのに欠かせないのが監査・教育・懲戒の仕組みである。英米独仏の医師会は 全て監査・教育・懲戒の仕組みを持っている。
●現行のトンデモ医事裁判は正直者が馬鹿を見る制度である。脈の取り方一つ知らない弁護士・警察官・検察官・裁判官が、医師を被告として、あるい は業務上過失に問う中世魔女裁判が現行の医事裁判である
●つまりトンデモ医事裁判のガラパゴス性は、医師の自律性の欠如というガラパゴス性の反映である。
●医道審議会は懲戒制度ではない.トンデモ医事裁判の下請けでしかない.
●社会の負託に応えられない医師は、監査・教育・懲戒の対象となるが、医師会が全員加入ではないこともあって、事故を繰り返すリピーター医師が見 逃されている。それでも日本医師会員はまだいい方.非会員の多くを占める勤務医のリピーター医師は誰も把握できない.

参考資料
医師の自律性
リ ピーター医師対策に主眼、日医委員会提言 (m3.com編集部) 2014年5月28日 
「医師処分、極めて 少ない」と制度改善提言、日医委員会 (m3.com編集部)  2014年4月17日(木)
リピー ター医師の実態解明に向けて走り出した日本産婦人科医会 医療安全推進者ネットワーク
医事紛争の現状と日本医師会 医師賠償責任保険制度 日医ニュース第1041号(2009年1月20日):日医に加入していない勤務医にどのくらいリピーターがい るのか誰もデータを持っていない(日医も会員のリピーター数を公表しているわけではないが)
西村高 宏  日本における「医師の職業倫理」の現状とその課題 医療・生命と倫理・社会 2006;5(1-2):1-13

医師監査制度と関連するページは、「一般市民としての医師と法」にまと めてあります。