急性弛緩性脊髄炎(AFM)/急性弛緩性麻痺(AFP)

------------------------------------------------------------------------------
15歳未満の急性弛緩性麻痺が全数届出に 日本小児科学会が周知 日本小児科学会2018年5月24日 (木)配信
日本小児科学会はこのほど、15歳未満の「急性弛緩性麻痺(AFP)」が2018年5月1日から全数届出疾患になったことを公式サイトで周知した。2015年秋の急性弛緩性脊髄炎(AFM)の大流行後、同様の流行が発生した場合に備え、同学会予防接種・感染症対策委員会がAFPサーベイランスの準備を進めていたという。今回、5類感染症となったことで、管轄の保健所に7日以内に届け出ることが義務付けされた。(以下略)

2018年5月1日から15歳未満の「急性弛緩性麻痺」は全数届出疾患になりました(日本小児科学会)
急性弛緩性麻痺(Acute flaccid paralysis:AFP)サーベイランスは、世界ポリオ根絶計画のため、多くの国々で導入されていますが、日本は世界保健機関(WHO)西太平洋地域の国々の中で、唯一、AFPサーベイランスを実施していない国でした。
-----------------------------------------------------------------------------
↑ 
これだけでは,何が何だかわからないという人は下記をどうぞ.

------------------------------------------------------------------------------
急性弛緩性麻痺を認める疾患のサーベイランス・診断・検査・治療に関する手引き (「エンテロウイルス等感染症を含む急性弛緩性麻痺・急性脳炎・脳症の原因究明に資する臨床疫学研究」研究班2018年4月)より抜粋

●急性弛緩性麻痺 (AFP) は急性に四肢の弛緩性運動麻痺を呈する疾患の総称である。
●急性弛緩性脊髄炎 (AFM) は AFP の一つであり、エンテロウイルス D68(EV-D68)の流行期に多発した急性脊髄炎による弛緩性麻痺を検知するために提唱された概念である。
● AFM では MRI 検査や髄液検査にて脊髄炎を示唆する所見を認める。
●AFM では起因病原体の種類は問わない。

急性弛緩性麻痺 (AFP:Acute Flaccid Paralysis)は、世界ポリオ根絶計画 のなかで提唱された概念で、「急性に四肢の弛緩性運動麻痺を呈する疾患」の総称である。一方急性弛緩性脊髄炎 (AFM:Acute Flaccid Myelitis)は 2014 年に米国でエンテロウイルス D68(EV-D68)感染症流行と同時期に発生したポリオ様麻痺の多発を受け、AFP との混乱を避けるため提唱された.EV-D68 流行期に発症した AFM は、EV-D68 の関与が強く疑われるにもかかわらず臨床検体からの EV-D68 検出率が低い。これは EV-D68 が他のエンテロウイルスと異なり腸管ではなく主に呼吸器に感染し短期間増殖するため、麻痺出現後の検体からの検出率が低いことや、採取検体の種類やタイミングが原因としてあげられる。
------------------------------------------------------------------------------
エンテロウイルスD68に関連する急性弛緩性脊髄炎(2017年11月09日更新)より抜粋
2014年8月から12月までに、米国疾病対策センターには、エンテロウイルス(EV)D68によって起こる呼吸器疾患の流行に関連して、急性弛緩性脊髄炎(AFM)の増加が報告されました。AFMと報告された患者は120人で、34州に及んでおり、年齢中央値は7.1歳(4.8-12.1歳)、59%が男性、81%が神経症状の発症前に呼吸器疾患を伴っていました。
2016年に、ヨーロッパ疾病対策センターは、デンマーク、フランス、オランダ、スペイン、スウェーデン、イギリスから、エンテロウイルスに感染した子どもと大人で重症の神経学的な症候群が集団および孤立例として報告されたことを周知しました。このエンテロウイルスはD68でした。
(原文は PAHO. Epidemiological Alert. 1 November 2017 Acute Flaccid Myelitis associated with enterovirus D68 in the context of Acute Flaccid Paralysis surveillance
Acute Flaccid Myelitis of Unknown Etiology in California, 2012-2015 JAMA 2015;314(24):2663-2671
------------------------------------------------------------------------------
原因不明の急性弛緩性脊髄炎(AFM)が今年に入ってから米国22州で62人に発生 Biotoday 2018-10-18
四肢のいずれか1つ以上の麻痺を特徴とするほぼ原因不明の急性弛緩性脊髄炎(AFM)が今年に入ってから米国22州で62人に認められています。罹患者の殆どは小児で、生じる症状はポリオウイルス・非ポリオエンテロウイルス・アデノウイルス・西ナイルウイルスなどの感染症に似ていますが、発症の殆どの原因は把握されていません。AFMは2014年に初めて発生数の急増が認められてから1年おきに主に晩夏から初秋にかけて同様の急増を繰り返しています。
More Reports of Children Being Paralyzed by Mysterious Disease / TheScientist
AFM Investigation / CDC
Acute Flaccid Myelitis Cases Confirmed in 22 States / PHYSICIAN'S FIRST WATCH
------------------------------------------------------------------------------
(図書館にアカウントのある人=購読できる人向け)日本語の総説としては,吉良 龍太郎 急性弛緩性脊髄炎 BRAIN and NERVE 2018;70(2):99-112がよくまとまっている.

二条河原へ戻る