大手メディアの緩慢な死 その2
ーサイレントクレーマーの立ち去り行動にどう対応するか?ー

まずは昔話から。以前(っていつだっけ?)は、警察の留置場にぶち込まれる猛者がいたものだ。しかし、日本が大東亜戦争に負けてから、みんなGHQの言いなりになっ てとてもお行儀が良くなってしまった。大東亜戦争後は「官憲のご厄介になる新聞記者」というのは、本当に「日本昔話」になってしまったのである。一人、わ が讃岐の英傑、宮武外骨先生のみが、戦前の特高と、そして戦後のGHQの両方から目をつけられ、発禁処分を受けている。

マ スメディアのビジネスモデルは非常に単純明快だ。品の善し悪しがわからない客に、手間を省いて作ったイカサマを売りつける。この場合、売る品がトイレット ペーパーや新聞記事のような、使い捨て商品だとイカサマとばれにくい。そうやって客はイカサマを掴まされたとも知らずに、繰り返し買ってくれる。この収益 モデルでは、客の質が収益に大きく影響する。会社としてはリテラシーが欠如した客が多ければ多いほど収益は上がる。市民のリテラシーを育成するどころか、 逆にデマを流して破壊する。そうしてリテラシーの欠けた国民の皆様にまたデマを売りつける。日本のマスメディアは、この愚民報道サイクルを、大東亜戦争よ り以前から、長年にわたってビジネスモデルとしてきた。(関連記事

この愚民報道ビジネスモデルに対して、サイレントクレーマーの立ち去り行動という形で、ユーザーが実力行使に出ていることはすでに説明した。 それに対してマスメディア各社や個々のジャーナリスト達がどれほどの危機感と対応策を以て日々の仕事に臨んでいるか、なかなか見えてこない。青木 理さん が、「メディアの罠」で指摘しているように、刑事事件報道が日本のメディアのコンテンツ占める比率は世界で飛び抜けて高いんですよね。愚民報道が最悪なの もこの分野である。つまり、「ずーっと嘘八百ばかり売りつけてきやがって」という、ジャーナリズムユーザーからの逆襲が一番激しいのもこの分野になる。

この逆襲にどう対応するか?は各社レ ベルでも、個々のジャーナリストレベルでも、非常に深刻な問題だと思うのだが、みんな被害的になってユーザーと対話を拒絶し続けている。「読者との対話が欠けている」、「信念を持った発言をしない」と、 ジャーナリスト自身が声を上げたのが2006年で、そこから9年以上経った今日でも(2015年7月)、状況は改善するどころか悪化する一方である。そん なこと、どうでもいい。恐竜はどうやっても死に絶えていく運命なのだから、私自身の力ではどうにもならない。それはわかっているのだが、一方で、裁判をバラエティ番組にしてしまう暇があるのなら、もう少し面白い方向で北陵クリニック事件を扱ってくれれば、私も手間が省けるというものなのだがと思っている。

と思っていたら、刑事事件報道とは全く別の分野で、ユーザーレビューを意識した動きが出てきた。日経のFT買収である。私が見ても日経のコ ンテンツは落ちるとこまで落ちてしまって、2年ほど前にネット上の無料会員も止めたが、全然不自由していない。日経も結局は他の全国紙と一緒の泥舟に乗ったま ま沈んでいくのかなあと思っていたところである。

か といって経 済問題については、ブルームバーグもロイターもガセネタ、はずればっかりだし、WSJはアメリカに特化していて他の国、地域のことは書くとしてもあくまで 米国との関係 性においてだから、私にとってはあさっての方向の話題だけだし、経済・外交・国際関係でまともなコンテンツを提供しているのは結局FTだけだった。だから 私はFTはいい買い物だったと思う。必要なところに投資するのは金がある時でないとできない。経営危機になってから「改革」なんてできるわけがないことは シャープの以前にもいくらでも前例がある。

こ れを機に、日本語の日経本体も、他の全国紙のような幕の内弁当方式のパッケージ紙面を止めて、平日は政治・外交・経済に特化、休日だけ文芸欄を加えるよう な構成にして差別化すれば、他の全国紙のシェアを食えるようになると思う。買収で金がなくなったからという理由で、どうでもいい刑事事件報道部門の人員リストラもやりや すくなるだろうし。

一般市民としての医師と法に戻る