診療所実習レポート 
佐賀医科大学6年 高尾由香里さん


・ 診療所実習
 診療所での実習は、診療所での医療の雰囲気を直に感じることができました。大学病院とは全く違い、まず、一人の患者さんにかかる時間が短く、大学病院のように長時間待合室で待たせることがないことです。「変わりないですか?」「変わりないです。調子はよかです。」ということと、診察時間も短時間で済み、農作業などの仕事の合間を縫って来ている患者さんにとっては、とても助かることだと思いました。唯、それができるのは、慢性疾患で先生が患者さんの状態を把握しているからで、当然、初診や状態が悪そうな場合にはできないことだと思いました。また、診療所という可能な検査が少ない場所での診察は、緊急性を見極める感というものが必要だと思いました。感と言っても、学生の私の感とは違う経験の基づいた感です。救急実習で臨床研修病院を回った時に、先生が「これだけ同じ疾患の患者さんを診ていると、この患者さんは危なそうだとか、この患者さんは大丈夫そうだとかいう直感が働くようになるよ。」と言っておられたのを思い出して、どこの病院に行っても必要なことですが、診療所や地域の病院では搬送するか否かを早く判断するのには、大事な要素だと思いました。勿論、感だけではなく診察や検査によるきちんとした根拠が揃えばそれに越したことはありませんが、データ―が揃わないことは多々あるでしょう。また、診療所などで、CTなどがない場合、エコーは侵襲がなく、簡便で、腹部しか診られないですが、やはり便利な検査だと改めて思いました。
 今回ビデオを何本か観ましたが、どれも、在宅医療、家で看取ることの良さを改めて思わせる内容でした。特に印象に残っているのが、患者さんが亡くなった時に皆で撮った写真です。それほど患者さんの死を自然に受け入れられる状態というのは、すごいことだと思いました。誰かが亡くなった時というのは、号泣して「死んでしまったのが信じられない。」と言うのが普通です。あの患者さんは、そうではなく皆が、よく頑張ったね、お休みなさいと思えるようななくなり方だったんだな、と思いました。そんな死に方は、こんな言い方をすると変もしれませんが、ある意味羨ましくもありました。そうできたのも、家族や近所の人々、ヘルパーや訪問看護の方々など周りの協力体制が良かったからだと思いました。また、ビデオを観ていて思ったのは、近所の人の協力をお願いするといことも考えられるということです。在宅医療というと、家族・医者・看護婦・訪問サービス・通所サービスしか思いつかなかったので驚きました。独居老人や日中家族が仕事で1人きりという場合には、近所の人が食事を作ってくれたり、定期的に様子を見に来てくれたりということは、在宅医療においてとても嬉しい協力です。唯、それは近所付き合いのある田舎でできることで、マンションの隣人の名前もわからないという都会では中々できることではありません。しかし、本人や家族も希望して近所の人に協力して貰えるならば、お願いするという方法もあるといことは覚えておこうと思いました。ビデオで、もう一つ思ったことは、ビデオを観ると確かに在宅医療はいいと思いましたが、実際はビデオほど良い状態に持っていくのは難しいだろうということです。ビデオでは、家族の協力がかなり良く、階段の電動昇降機や車いすの昇降機、家の増改築など在宅で過ごす患者さんがとても快適なように撮影されていましたが、それほど設備を整えるのにはかなりの金額がかかり、年金で生活する高齢者には困難なことです。電動の車椅子昇降機などは100万もするそうです。実際に三ツ瀬で訪問した家では、玄関に手すりと足台・車椅子のためのコンクリートのスロープがありました。保険内に収めるには、これともう一つ手すりをつけるのが限界ということでした。また、家族も仕事をして家にいることができない家庭が多く、様々なサービスを本人が利用したくなかったり、金銭的に利用できなかったりするというのが現実だと思います。その中で、最大限のサービスを利用し、本人や家族の在宅での支援を行えるかを考え、それぞれの分野の人々と協力していくことが大切だと思いました。
 来年、三ツ瀬村にできる新しい診療所は、医科・歯科診療所・保健事業・デイサービスなどで利用できるレクレーション施設など、医療と保健・福祉が同じ施設内あり、高齢化社会で介護保険も導入され、今後ますます三者の連携が必要とされる中、画期的な施設だと思いました。近森リハのビデオで、これからの診療所はこうあるべきだと言っていた、総合ケアの理想的な統合型施設に近いもので、すごいことだと思いました。しかし、何故、介護支援事業所も一緒に入っていないでしょうか?医療と保健、福祉の統合が目的であれば、介護保険制度が導入されている今日、介護支援事業所は必要不可欠なのではないでしょうか?介護支援センターの方に聞いたら、「いろいろあるんですよー。」といって、はぐらかされてしまいました。
 診療所実習で見られなくて残念だったのは、白濱先生と地域の方々との連携の場を実際に観ることができなかったことです。電話連絡などで連絡は取り合っておられるのでしょうが、話し合いの場でどんなことを話し合っているのかなどを見たかったです。民生委員や在宅支援センターの方々との話し合いが来週だと聞いて残念でした。

・ シルバーケア三ツ瀬

 デイサービスでは、患者さんの出迎えから始まり、バイタルをチェックして、午前中はボールゲーム、午後はレクレーション大会の準備や出し物の踊りを一緒に踊ったりして時間が過ぎ、送迎バスに一緒に乗せて貰って皆さんを送り届けて終わりました。三瀬村のデイサービスを利用されている方々は、前に行った他の施設のデイサービスと違って、雰囲気が明るく、皆さん生き生きとしてありました。スタッフの方が、頑張っておられるのは勿論、介護度が低い方や、要介護認定を受けていない方が入っていたからかもしれません。介護保険から考えると、生きがいの方と要介護の方を一緒にするのは、提供するサービスの違いや費用のこと、また、介護保険の目的が在宅での介護の支援なのに介護を必要としない方に同じサービスが必要なのか?という考え方があるかもしれませんが、私は、生きがいの方々への補助金を出してもらえるのであれば、一緒にデイサービスを受けてもいいと思います。生きがいの方々が一緒に居ることで、要介護の方々の張り合いができ、いろんなことにチャレンジして生き生きとしていると思います。また、そんな明るい雰囲気だからこそ、サービスを利用しようと思うのではないでしょうか。そんな感情論は問題だとか、生きがいの補助金を無くすと言われてしまったら、それまでですが、できたらこのままがいいと思います。
   
 在宅支援センターでは、利用者の方々の様子を見るためや、オムツの支給のために家を回り、利用者の方の現状についてのカンファレンスに参加しました。特に用件もないのに利用者を尋ねて回るということに驚いたのですが、考えてみると重要なことだと気付きました。利用者の状態は、ずっと同じというわけではないので、状態が悪くなればサービスを増やしたり、逆に必要がなくなったサービスは減らしたり、ということを考えて利用者に勧める必要があるからです。ヘルパーさんやデイサービスの方などから情報が入ってくるかもしれませんが、実際にお宅に伺ってみてから考えるということが大切で、そこまでのサービスをしているという配慮が利用者にとっては嬉しいことだろうと思いました。スタッフの方に、「介護保険が始まって問題になったことは何ですか?」と質問したら、利用料のことと、地方での弊害についての答えが返ってきました。介護保険が始まる前までは、自治体別に利用者が決まっていたけれども、始まってからは利用者が決めるので事業間の利用者の取り合いになってしまい、利用者に「貴方は元々この地区の人だからこちらのサービスを利用すべきでしょう。」ということを押し付けてしまう事業もあるとか。サービスを自由に選択できるのが介護保険の利点でもあるのに、選択の幅を狭めてしまって、こういう弊害もあるんだなと思いました。
 在宅支援センターの方から聞かれて考えさせられることがありました。それは、在宅医療では、患者さんだけでなく家族への支援が必要なのは当然のことですが、「介護される側に痴呆ある場合、どちらの意見を優先させる方が良いのでしょうかねー?」という質問でした。介護される側は「人前に出たくないから、デイサービスやショートステイは利用したくない。」と言い、家族は、痴呆があって夜間の徘徊があるため、睡眠不足などで介護疲れが見られ、「デイサービスやショートステイを利用したい。」と言っている。この場合、どちらの意見を優先したら良いのでしょう。もちろん、case by caseですし、両者が納得してサービスを利用できればそれが一番です。しかし、サービス利用を勧めても中々納得してくれず、強引にサービスを利用してもらっても、利用者が苦痛に思ってしまったのでは、不満が溜まって家族との溝を深めたり、徘徊や閉じこもりに拍車がかかったりする可能性もあります。逆に、介護される側の意見を尊重して、サービスを利用しなかった場合、特に高齢者では介護疲れで介護者の方が倒れてしまい、介護する人がいなくなってしまったり、心理的負担から事件に発展したりする可能性があります。私は、介護者が倒れてしまったら、結局ショートステイや他のサービスを利用せざるを得なくなるので、そうなる前に本人に強くサービス利用を勧めて利用してもらうようにした方が良いと思います。その場合、どの程度痴呆が進めば、家族の意見を優先するかという問題があります。老年痴呆と脳血管性痴呆でも異なるでしょうが、老年性であれば人格崩壊があり、徘徊が頻回になったらなのか、脳血管性であれば身体機能の障害の程度がより重要視されるのか、結局考えても結果は出ませんでした。他の人にも、この質問を聞いてみようと思います。

・佐賀リハビリテーション病院

 ここでは、午前中は訪問看護、午後は回診とリハビリ室での見学でした。
 訪問看護では、一人目は訪問看護婦に同行してオムツ交換や髭剃りなどの清潔面を行いました。脳血管性の痴呆のある方ですが、訪問看護婦の方が尋ねるとにっこりされていて、本当に信頼されているんだなと思いました。介護保険が始まって、時間単位で利用料が異なるので、1時間弱という短時間でできることは限られていて、なかなか散歩などへは出られなくなってしまったと言われていました。介護保険の導入で、それまで、一緒に料理をして糖尿病の方の栄養指導を行っていたのが、時間的にできなくなり、コントロールできず、入退院を繰り返すようになった方もおられるそうです。結果的に、介護保険導入の目的である在宅医療の推進と反することになっていて、ここにも介護保険導入による問題が出てきているんだなと思いました。二人目は、OTさんに付いて機能回復を目的に押し車を使って散歩へ行きました。訪問のOTさんは、病院のリハ室での機能訓練とは違い、在宅でのトイレへの移乗や歩行など、本人の生活と家族の負担軽減を考えた指導をするということで、OTさんの訪問と室内との違いを教えて頂きました。私は、そういうことは、訪問看護婦の方がするものと思っていたので、勉強になりました。
 午後のリハ室では、PTさんとOTさんと患者さんにつかせて貰いました。午前中の訪問のOTさんと比較して、リハ室では本当に、拘縮防止や機能回復のみをしていて、リハ室では機能は回復してくるかもしれないけど、実際に1人で家にいたら、歩くことはできても、実は食事ができないとか何もできないということになりかねない、という可能性もあると思いました。また、リハ室ではPTとOTの両方の方に付かせてもらったことで、指導内容の違いを実際に見ることができたので、勉強になりました。言語療法も見学したかったのですが、時間がなくて患者さんのリハビリを見られなかったのが残念でした。
 佐賀リハビリテーション病院は、医師が3名なのに対して療法士が16人と多く、患者さんも100人弱と医師の人数の割には多かったことに驚きました。病院の構造や患者さんが病衣を着ていないことも、今まで実習してきた病院とは異なっていて、急性期の病院と慢性期の病院の違いを見ることができ、勉強になりました。

・まとめ
 今回、三ツ瀬村診療所の実習で、いろんな施設を見学でき、たくさんのスタッフの方に付いて実際にどのようなことをしているのかを経験できて良かったと思います。以前学外ケアで実習した施設とは、また違う面がみれて、今後の医師として、高齢化社会に対応するために、どんな局面で誰に相談したり、協力して貰えばよいのか、ということが学べて
本当に良かったです。2週間お世話になりました。



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