「臨床倫理教育で大切にしてほしいこと」
(臨床研修指導マニュアルに書いた臨床研修指導医のための臨床倫理教育の6つの心得)


 卒後臨床研修の中での倫理教育は、知識、原則の伝達ではなく、具体的に臨床で実践できる臨床倫理の教育が求められる。研修指導医に心がけて欲しいことをいくつか提示する。


1) ロールモデル
 研修医は指導医のいうことではなく、指導医のすることを真似るものである。研修医をサポートしながら、自分も倫理的なことを一緒に学んでいこうという態度が何より大事である。


2) 倫理的な問題点に気づけるようなサポート
 研修医が患者さんの対応の中で、何かもやもやしたすっきりしない感情が残るような事例が倫理的問題を含む事例であることが多い。ぜひ、「患者さんの対応で困っていることない?患者さんとしっくりいかないことない?」というような声かけをして、倫理的問題に気づくチャンスを作って欲しい。日常カンファレンスで、患者、家族など関係する者の治療方針への考えを確認することも気づきにつながる。

3) 一緒に考える
 研修医から倫理的な事例の相談があった場合、すぐ指導医の考えを提示する前に、まずじっくり研修医の考え、何が問題で、どのように対応しようと思っているのかを聞いて欲しい。研修医の話を聞かない教育は、患者さんの話を聞けない医師を育てる。「医学的適応」「患者の意向」「QOL」「周囲の状況」の視点から事例を分析する臨床倫理の4分割法*)は、偏りなく問題を分析するのに役立つだろう。

4) チームで考える
 倫理的な問題の解決を、一人の医師ですることは、しばしば偏った判断をしてしまうことにつながる。とにかく難しい問題はチームで考える習慣をつけること。医師のチームだけでなく、看護師やソーシャルワーカーなど様々な職種と知恵を出し合うことで解決する問題は多い。


5) バランス感覚
 自分のQOLが確保されないと患者のQOLも向上しない。介護者のQOLへの配慮、自分の医師としてのプロフェッショナルライフ、個人的なパーソナルライフ、社会的責任の3つを上手にバランスをとって成長させることが、適切な倫理的な判断力を養うことにつながる。


6) また考えてみようと思える教育を 
 倫理的な問題に気づいてもすべてを一度に解決することはできない。小さなひとつの改善を大切にして、また次も考えてみようと思えるような倫理教育を心がけてほしい。


(注)なお臨床倫理の4分割法の詳細については以下の臨床倫理の討論のページを参照ください。http://square.umin.ac.jp/masashi/discussion.html