生命科学倫理概論 感染症や精神疾患と患者の人権について


■中国から帰国、診察断られる 広島の男性 (中国新聞より)
 新型肺炎SARSが、疑いのある患者の初期診療を担う医療現場に不安をもたらしている。広島県内では中国から帰国後、発熱した男性が、診察を断られるケースが発生。一方で、民間開業医の間には「隔離診療するのは設備、経済面で不可能だ」との訴えが広がる。患者が発生した場合、県は隔離入院する病院を指定したが、それまでに至る初期対応を、いかに迅速に進めるか。新たな課題が浮上した。
▼「疑いはない」
 十九日夕、広島市中区の会社社長(56)は、会社でうなだれていた。出張で訪れた中国・上海から帰国し、熱やせきなどの症状が続いた。新型肺炎の感染を心配し、県が新型肺炎の外来協力医療機関に指定した総合病院に電話相談した。 診察はしてもらえず、電話で「疑いはない」と告げられ、かかりつけ医での受診を指示された。が、かかりつけ医に電話すると、「二次感染予防の設備がない」と診察を拒まれる。代わりの病院の紹介もなかった。 最終的には、市を通じて総合病院での検査で、新型肺炎ではないと判明した会社社長。受け入れ態勢への不信感は今も消えない。「かかりつけ医は恐れおののいている感じだった。今のままでは、たらい回しになりかねない」。初期対応の不備への不安と憤りを交錯させる。
▼開業医の不安
 広島県内で新型肺炎患者が発生した場合、隔離設備を整えた広島大医学部付属病院など三病院が入院を受け入れる。さらに待合室分離など感染防止への対応が可能な十一病院が、外来協力医療機関となっている。が、新型肺炎の疑いがある患者が、まず民間開業医の門をたたく可能性がある。多くの開業医では、疑いのある患者を隔離するスペースを新たに設けるのは困難だ。新型肺炎と確認されれば、病院の消毒、医師や看護師への感染有無の確認など、一時的な閉院も予想される。開業医らでつくる県保険医協会(約千七百人)が「初期診療は不可能」と主張するのは、このためだ。 二十一日夜。広島県医師会が主催した医師と行政機関の連絡会議でも、「一般の医療機関で、果たして新型肺炎患者の診察ができるのか」との声が出た。一方で、「指定医療機関に、初期段階の診察や相談が集中すれば、パンクしてしまう」との指摘もあった。
▼張り紙を掲示
 「感染の可能性が低い患者は、一般の医療機関で対応を」「感染の判断の基準は何か」。初期対応に当たる医療機関の役割分担について、出席者の意見は交錯した。
 「いきなり受診に来られたら、二次感染を防ぎようがない」。
広島市中区の開業医は今月初めから、病院の入り口に、「症状のある方は、入室前に電話でご相談ください」との張り紙を掲示した。設備が整った総合病院も入り口、受け付けなどに同様の張り紙をして、二次感染防止に神経をとがらせる。
 関西・四国地方を旅行した台湾の医師が新型肺炎患者だった問題が、見えない「病魔」上陸の可能性と不安を助長させる結果となった。広島県はホームページで県内の保健所など十二の相談機関を明示している。「現段階では、疑いのある患者の事前相談・連絡を徹底させるしかない。それをより周知すべきだ」。迅速な初期対応に向けた医療関係者の共通した声だ。


<患者の人権制限について(感染症予防、精神病の問題)>一緒に考えたいこと
1)らい予防法の歴史(そのメリットデメリット、感染症の差別、偏見の歴史)
2)エイズ予防法(検査も本人の同意が必要など、その問題点など)
3)感染症予防法
(1)「感染症を感染力、罹患した場合の重篤度など総合的な観点から見た危険度」の程度により感染症を1から4類に分類し適切な措置をとること。現在医学的に未知な感染症で、重篤性や危険度の高い感染症を「新感染症」と定義し、不足の事態が発生した場合の対応を定める。
(2)感染症情報の収集と国民への公表。インターネットによる国際的地域的な情報提供。
(3)患者・感染者の人権の尊重
〇感染症類型に応じた就業制限、入院
(新感染症と1類感染症は原則入院。2類感染症は、必要に応じて入院)
〇患者の意思に基づく入院を促す入院勧告制度の導入
〇都道府県知事(保健所長)による72時間を限度とする入院
〇72時間を超えて入院を必要とする場合は、保健所に設置する「感染症審査協議会」の意見を聴いた上で、10日以内の入院期間の延長(再延長する必要がある場合は、再度協議会の意見を)
〇30日を超える長期入院患者からの行政不服審査請求に関し、5日以内に採決を行う手続規定


(感染症と人権についての様々な問い「患者の人権」と「第3者の人権」「医療者の人権」)
1、SARS疑いの強い患者が、入院拒否された場合どう対応するか。
2、SARS疑いの患者の受診をかかりつけ医が拒否したことは許されるか。
3、SARS疑い患者の治療を拒否して辞任した台湾の病院医師看護師の行動は許されるか。
4、日本ですでにSARS受け入れ病院の医師や看護師の子ども達への差別を心配する声がある。どう対応するか。(O-157事件の事件の時も患者・家族と医療者・家族への差別があった)
5、台湾のSARS患者の行動経路をすべて公表したことは妥当だったと思うか。
6、O-157の事件で、かいわれ大根の風評被害で国は責任を問われた。ただそれそれの時点で早めに情報を流すことは非常に大切なことであるが、そうすると情報の正確性は落ちる。絶対の確認を優先するか。疑いでも情報を流すべきか。
7、HIV陽性が強く疑われる患者が検査を拒否された場合の対応。またHIV陽性患者がそのパートナーに感染の事実を告げなかったときにどうするか、医師から告げることが許されるか。
8、医療従事者の採用時、感染源とならないようにHIV、B型、C型肝炎、結核診断のためのツベルクリン反応、胸部レントゲンの検査をすることは適切と思うか。
9、アトピー性皮膚炎をもつB型肝炎患者の関係者から、同じくアトピー性皮膚炎をもつ子ども達にB型肝炎が広がったという事例がおきた。それだけですべての保母へのB型肝炎のチェックを義務付けたり、そのような関係者の手袋使用を義務づけたりすべきか。
10、精神疾患の患者の退院をどうするのが適当か。池田小、バスジャック事件などの問題。精神保健法で患者の同意による任意入院、自傷他害の危険がある場合、指定医の判断に知事権限の措置入院、保護者の同意による医療保護入院などがあるが、患者は常に退院申請はできる。


考察のための参考HP紹介

感染症
(1)SARS関係
1) 感染症情報センターのSARS関連ページ
http://idsc.nih.go.jp/others/urgent/update.html
2) 東京都感染症情報センターのSARS関連ページ
http://www.tokyo-eiken.go.jp/IDSC/SARS/sars-topics.html
3) 厚生省のSARSのちらし
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/dl/tp0318-1m2.pdf
4) 佐賀県の感染症情報センターのHP
http://www.kansen.pref.saga.jp/
(SARSの県の対策もこのSARSの項からリンクされて全文が読める)
(2週間前までの感染症の流行がわかる。これは全国的にも優れている。)
5) SARSに関連した感染症予防法の不備の指摘(谷田先生の論文)
http://www.npojip.org/sokuho/030516.html

(2)HIV関係
1)HIV相談マップ
http://www.hivkensa.com/
(HIV検査のできるところ、カウンセリング先などがわかる)
2)HIV九州ブロックのHP(国立九州医療センターにある)
http://www3.coara.or.jp/%7Ekmc/aids/index.html
3) LAP(LIFE AIDS PROJECT)(AIDSをサポートするNPO法人)
http://www.campus.ne.jp/%7Elap/lap1/index01.html
4) 警視庁HIV裁判関連のページ(草田央さんのHPより)
http://www.t3.rim.or.jp/~aids/iryo_koyo_fukusi.html

(3)らい予防法関係
1)らい予防法(抄)
http://www.room.ne.jp/~lawtext/1953L214.html
2)らい予防法廃止の答申
http://www.campus.ne.jp/~lap/lap1/lap2/data/ks/kouhanse.html
3)ハンセン病のリンク集
http://www.jttk.zaq.ne.jp/babkz000/main.html
4)高松宮記念ハンセン病資料館
http://www.hansen-dis.or.jp
 

精神疾患関係
1)精神保健法の改正要点(高知県精神保健センターのHPより)
http://www.med.net-kochi.gr.jp/seishin/horitsu4.html
http://www.med.net-kochi.gr.jp/seishin/horitsu6.html
2)心神喪失者医療観察法案(長野英子さんのHPより)
http://www.geocities.jp/jngmdp/
3)「大阪児童殺傷事件」に関する緊急声明(総合病院精神医学会の主張)
http://www.seirokyo.com/archive/folder1/shokuhou/seimei/JSGHP.html



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