選択コース
三瀬診療所実習
 6月 4日(月)〜 6月 15日(金)
96066 野田 智子

【スケジュール】
午前 午後
6月4日(月)                        三瀬診療所実習(外来)
6月5日(火)                  シルバーケア三瀬デイサービス体験
6月6日(水) バス送迎、三瀬診療所実習(外来) 訪問診療実習
6月7日(木) バス送迎、三瀬診療所実習(外来)
6月8日(金) お休み
6月11日(月)                      三瀬村村民健康診断実習
6月12日(火) シルバーケア三瀬在宅ヘルパー実習 介護支援センター実習
6月13日(水)                         小石原診療所実習
6月14日(木) お休み
6月15日(金) 介護保険の認定調査同行 佐賀医大 行動科学の講義に参加



1、三瀬診療所外来実習
 三瀬診療所の外来では主に血圧の測定や心電図検査などを行いながら、白浜先生の地域密着のプライマリケアを間近で見ることができた。
来院する患者さんは中高年の方がほとんどで、高血圧などの生活習慣病の方が多かった。患者さんが来られると、血圧の測定に始まり、これまでと変わりがないかを確認し、聴診器を当て、薬を出す。特別な診察も検査もほとんどなし、こういうものなのだな、というのが初めの驚きだった。確かに必要最低限で済ませると、患者さんの負担も、医者側の負担も、医療経済的にもよい。だったら、どうして大学病院ではあんなに検査をするのだろう?もちろん大学などの3次医療を担当する医療機関では、急性期の疾患が多く、重篤な患者も多いことから、それがあたりまえなのかもしれないが、患者の生活を知り、ニーズを理解することが大きな違いを生み出しているのだろうと思った。そういった医療は私にとって大変魅力的であった。また医者を目指す人に限らず、多くの一般の人が描く医者像がそこにあるのではないだろうか。
 外来実習の中で一番印象に残った症例は透析導入を拒否した慢性腎不全の患者さんで、通常の外来でなにげなく、どう死にたいか、という話がなされていることに衝撃を受けた。私はこれまで病気による死は何か特別なものという気がしていたが、死というのは生活の延長であって、個人が選択していけるものなのだということがあらためて実感できた。(白浜注:この患者については、後日御家族にも一緒に来ていただいて、今後の治療をどうするかもう一度腎臓の専門家に紹介することにしました。幸いなことに来年の7月には後方支援病院に透析の施設ができるらしく、そうすればこれまでのような家族の送迎の負担は半分になります。)
 バスでの送迎にも同行したが、車で来ることができず、歩いてくるにも遠い方たちが利用されていた。診療所にいくんじゃないんだけどね、といって乗ってこられた2人の女性が印象的で、それだけ村民の皆さんになじんだ乗り物なのだということがわかった。

2、訪問診療実習
 訪問診療では主に脳血管障害で片麻痺のある患者さんの訪問に同行した。来院の難しい患者さんの体調のチェックのみならず、家族の介護上の問題点や悩みなども聞くことができ、医師・看護婦としてのアドバイスやねぎらいの言葉を伝えられる面でも訪問診療は本当に必要なものであると感じられた。具体的には仙骨部に褥瘡のできた片麻痺の患者さんの坐位をどう保持するかということについて話し合い、どのようないすを使ったらいいかということについてもアドバイスをしていた。話し合いの内容はすぐに支援センターの方にも伝えられ、うまく連携がとられていた。
また、長期間来院がなかった患者さんへの往診もあった。実際は他院にかかった後、シルバーケア三瀬に入所してあったのだが、たとえ連絡の途切れた患者であっても、村の主治医として積極的にその方の健康状態を把握していこうとする姿に責任感が感じられ、印象的だった。

3、健康診断実習
 村の健康診断では身長・体重、血液検査、尿検査、胸写などの一般的な検査に加えて、その人の年齢・性別や問診結果にのっとって、心電図検査、乳癌検診、子宮癌検診なども行われていた。その結果は公民館で配布されるそうで、その際に保健婦さんからの健康指導も受けられるということだった。
やはり高齢の方の参加が多く、いそがしい中年の方の参加は少ないようだった。

4、シルバーケア三瀬デイケア実習
 デイケア実習ではまずお迎えのために三瀬村と背振村をワゴン車でめぐった。お迎えをした後は、バイタル確認をし、それから朝のレクリェーションを行った。レクリェーションは日付の確認、天気の話、時事に始まり、簡単な体操をした後で、大きなお手玉を使ったゲームをした。そのゲームとは高得点を目指してお手玉を後向きに投げるもので、罰ゲームとしては歌もあり、たくさんの笑顔がみられた。村には独居の方や高齢者のみの家庭、また昼間は高齢者だけといった家庭が多く、どうしても刺激の少ない毎日になりやすいので、このような催しは有用であろうと思った。昼食の後は新聞紙でスイカを作ったのだが、どうしてもこのような手作業は女性にしかできず、男性が退屈そうだった。お茶の後は、みんなで終わりの歌のようなものをうたって、家に帰られた。デイケアの間、みなさんとても楽しそうであったが、帰りの時間が近づくと帰りたくてそわそわしておられるのが、印象に残った。

5、ホームヘルパー実習
 ホームヘルパー実習では2軒のお宅に伺った。1軒目は片麻痺のある患者さんで、食事の用意と掃除を行った。2軒目は老夫婦2人のお宅で食事の用意とお洗濯、庭の掃除を行った。ヘルパーさんに同行してみて、訪問看護や訪問診療と比べて長い時間訪問することができること、また医者や看護婦に対してほど遠慮がないことから、利用者の方は本音を漏らしやすいのではないかと感じた。そういった意味でも、医者や看護婦などの医療従事者がヘルパーさんとの情報交換の場を持つことは重要であろうと考えられる。

6、介護支援センター実習
 介護支援センターの方との実習では利用者の方を訪問したり、役場に行ったり、病院に行ったりと、様々な場所を訪問した。これまで支援センターとは介護保険の認定や、それに関わるサービスのお世話をする所だと思っていたが、特定の仕事だけするのでなく、関係のあることなら何でもこなす、なんでも屋さんといった感じだった。
介護保険の調査にも同行させていただいたが、2回目以降の方であったからか、思ったよりも短時間でスムーズに調査が終わり、日頃からいかに訪問し、状況を把握してあるかがわかった。

7、小石原診療所について
 小石原村は人口約1200人、福岡県の山間部にあり、農業と焼き物と観光で成り立つ村である。医療機関は村立の診療所が2つの地域にひとつずつあり、1名の医師がその2つを受け持っている。診療所には心電図計、レントゲン、内視鏡がある。血液検査の機械はない。より大きな医療機関に行くには30分はかかる。そんな中で診療が行われている。
 当日は午前中に外来を見学し、午後にもうひとつの診療所をみて、往診に同行した。診察室はとても和やかな雰囲気で、先生に会いにきているというような人も見られた。見学した日は、重篤な患者さんはなかったが、診療所で対処しきれない場合は、救急車でいっしょに山を降り、大きな病院まで行き、各病院と連携して医療を行っているということだった。
 一番印象的だったのは、前日血液検査をしていた慢性肝炎の患者さんの結果が悪かったのがFAXでわかった時に、その場でその患者さんの家に電話をし、不在がわかると、その方の田畑の場所まで調べて、患者さんを探しにいったことである。先生はあたりまえの事をしているように言われたが、その瞬間、私は『赤ひげ先生』を見たような気がし、こんなに身軽でしかも責任感のある医療に感動を覚えた。
 昼食の際、診療所の2階にある先生のご自宅にお邪魔したが、そのとき、10年前には家族と一緒に食事ができるなんて考えもしなかった、という言葉を聞くことができた。その言葉を聞いたとき、家族のそばで心いくまで自分の理想の医療を追求することができる、そんな幸せが地域医療の中にはあるのだな、と感じられた。また、「僕は休みをとりますよ。でないと、いい医療が提供できないから。」と、きっぱり言い切った白浜先生の顔が浮かんだ。医療はこれまで、犠牲の精神でやっていくことが美徳のように言われてきたが、自分の生活をよりよいものにすることで医療の質を上げていく、そんな医者が増えると医療の体制も変わっていくのだろうか、そういう気がした。

 以上、選択コースでの2週間をまとめましたが、思い返してみても、自分の人生設計に関わるとても貴重な体験をしたように思います。ありがとうございました。
欲を言えば、(2週間のうちでは無理かもしれませんが、)あと1つか2つ他の診療所を見学してみたかったです。



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