三瀬村での3日間を終えて(2008年12月8-11日)

                        中津市民病院研修医  中山 智恵


が三瀬村に行こうと思ったきっかけは、家庭医としての地域医療の実践や倫理教育を白浜先生の元で見せていただき、その中で医師として勉強する姿勢や倫理感、後輩への教育について考えたい、と思ったからでした。

研修医2年間に多くの科のローテーションを経験しましたが、その中でも地域医療の現場もつ雰囲気は私には魅力的にうつりました。たとえば家庭医として総合を診る医師の方々の持つ専門家と違った外来での広く深い目線、謙虚な姿勢、患者さんの生活とかかわる距離の近さは他の分野にないことでした。

三瀬診療所は私が地域医療の研修期間に研修させていただいた中津近郊の診療所とは大きく2つの点で異なっていました。1つ目は1~2年ごとの交代制をしいている自治医大系列の病院と違い、白浜先生が地域に溶け込んで診療を行っていらっしゃること、もう一つは大学病院と教育を通じてつながりのあること、でした。3日間での診療の合間に、白浜先生の医療の姿勢から教えられることは多かったです。先生の教えの中から印象的だったことを以下に挙げてみます。

*総合診療外来をする者は、相当気合を入れなければならない。大切なのは診断に至る過程において優先順位をつけて考えるプロセスで、そのためには症候学はもちろん多くの病気についての正確な知識が必要であるし、身体所見とその意味がわからなければならず、絶対的な勉強量が必要。また患者背景を理解し、その患者の生活にもとづいた病態生理の考察と対応、地域の公衆衛生も見越した予防医学的指導も必要。

この話を聞いて外来診療の風景を見せていただくと、どの方一人をとってもその方の生活背景の広がりも考慮した診療であることがわかりました。

*新しいものは正しいとは限らない、すぐに臨床に応用していくのではなく、一般雑誌に載るくらいに一般的になってから使用すること。

これは薬剤使用についての賛否両論の考え方を聞き臨床的な価値判断に迷っていた自分にとっては、大変納得のいく姿勢でした。

 楽しみながら教育していているから、お互い苦にならない。

教育についての白浜先生に考え方は、今回一番印象的だったことでした。佐賀大学での総合診療部での毎週火曜日午前8時から午後1時近くまででの教育を、少人数制でしっかり時間と心かけ使って行いながら、白浜先生は毎回新鮮でちっとも疲れていない、むしろ楽しみながらエネルギーをもらって帰っているようにすら見えました。学生さんは学生さんで、お互いの評価をするという、ともすれば意見の食い違いからぶつかり合いのおこりそうな形式でありながら、本当にユーモラスな雰囲気で気兼ねなく率直な意見を戦わせていました。驚いたのはこの双方の楽しみになり得ている、しかも実りの多い独創的なスタイルでした。

 講義だけではつたえきれないものをそれぞれの学生の持っている傾向、持ち味に即して長所を伸ばし、特徴的なところは指摘していくことで、楽しい興奮とともに一生残る記憶になることは間違いないのではと思われました。

“熱いうちに打ちつ打たれあっている鉄”

“出来上がっているけれどもいつでも暖めて打たれることが出来るように準備している、打たれることを望むところとしている鉄”

学生さん、先生の姿は私の目にはそのようにうつりました。今後の医学教育における自分のとるべき態度に迷ったとき、この日の光景を思い浮かべたいと思います。

自分がこれまで本当に尊敬できると思った医師の先生方の共通項は、教育が好きであり、勉強家で信念を持って医療を行いながらも、弟子達と対等に討論をする度量があり、今はしょうがないところがあったとしても若者の将来に無限の可能性を見出す温かい親心をもっていたところだと改めて気づきました。自分の本分にやりがいを持って生き生き楽しみながら取り組んでいるので飽きがこず、勉強量は多い。そして若者たちはその先生が本物であると感じた場合、その背中を見て、自分に足りないところに自然と気づかされ、また自分に期待して責任ある仕事も与えてくれることを知ると、それに答えたいがために必死になって自分を期待されている次元の人間にまで高めたいのだと思うのでということがわかりました。またただ認めて期待する、背中を見せるだけでなく、具体的な課題をあたえ指導も行い、相手の集中力・勉強への意欲を引き出しながら、自分の実力の範囲で望ましい方向へ引っ張ってあげることも不可欠であるのを感じました。それはたとえばこの分野の発表をしなさいとテーマを与えその内容についてともに勉強していくこと(まず本人に考えさせて、それから軌道修正をしていくというやり方)、また先生のように宿題をあたえ、考え方を理解しその疑問点の解決法についてアドバイスを与えていくこと、討論の中で考え方を引き出しつつ正しいプロセスへの近道に導くこと(これには経験と才能がいる気がしますが・・・)などで、導かれる後輩の立場から、安心感を持って勉強できることを実感しました。

* 総合診療、家庭医学を目指すものは、どれも中途半端になってしまいがちであるから気をつけないといけない。どの科に行っても専門医をやれるという人が総合診療、家庭医にならないといけない。だから内科専門医レベルは絶対に持っていないといけない。

この教えも、とても印象的でした。自分は自覚がありませんでしたが、やはり自分は興味が幅広くどの科に行ってもその科の魅力にはまる一方、深い勉強ができていない傾向にありました。Common diseaseを自分の知識の範囲内でなんとなくこなすことを覚え、向上心の乏しい甘い姿勢の医師になりそうだった私の素質(?)を白浜先生に見事に見出された気がします。診療所に勤め本当の意味での地域医療・家庭医療を行いながら語られたこの言葉を心して受けたいと思います。

これから残された研修医生活を、凡庸な才能ながら時間をかけていくことを目標に、がむしゃらに勉強できればと思います。そして先生が私に見せてくれた家庭医としての姿勢、教育者としての厳しくも芯は温かい姿勢を忘れることなく、自分もそのような医師を目指して生きたいです。

医師としての駆け出しのこの時期に三瀬村に行けたこと、安達先生との縁から始まった白浜先生ご一家の皆さん、三瀬診療所での皆さんとの出会いに、心より感謝しています。

 どうもありがとうございました。