<はじめに>
今回、必修の実習に引き続き選択コースということで3週間という他の人よりも少し長い間三瀬診療所にお世話になりました。もともと、プライマリーケアとか、地域医療とか、ホームドクターなんていうものに興味があり、たくさんの現場を見ていろいろなものを得てやろうとかなり期待して実習に臨みました。三瀬村診療所で7日間、シルバーケア三瀬で2日間、富士共立病院、佐賀市内の福田内科、福岡県の小石原村診療所、鎮西町の馬渡島でそれぞれ1日間、ほんとうにいろいろな地域医療の現場を見ることができました。大変有意義な実習でありましたし、また、いろいろな地域を訪れ、たくさんの人と話ができ、楽しい日々でもありました。このような実習の機会を与えてくださった白浜先生をはじめ、諸先生方、スタッフの皆様にはほんとうに感謝しています。レポートとしてこの3週間で私がいろいろと考えたことを書こうかと思います。
<「老い」について考える>
ずっと生きて行くとぜったいに避けられないもの・・・老い。当然のことながら今20代の私には全く考えられない。自分がおばあちゃんになるなんて想像もつかない。今まで、なぜか私は高齢者のことについて考えることを避けてきた。考えるのが怖かったのかもしれない。3週間「診療所」にどっぷり漬かって、たくさんの高齢者と接して、というか、接する患者さんのほとんどが高齢者で、さすがに考えざるをえなかった。半身不随だけどひとりでしっかり生活しているおじいちゃん。91歳だけど、「もう年やけん、こいくらい調子が悪くても当たり前」という言葉は禁句のおばあちゃん。他にもたくさん印象的な高齢者がたくさんいて、とにかく面白かった。「このひとは今までどんな人生を歩んできたのだろう?」なんてことを考えたりしながら接していると、ひとが長く生きていることってすごいな、と思った。からだが不自由でも、たくさんの慢性疾患を抱えていても、いや、それだからこそ生き生きとしているのかもしれない。生きているありがたさを実感するのは、なにかなにかハンディを持ったときなのかもれない。とにかく、たくさんの高齢者に接しているのは楽しかった。私もこんな風に素敵に年をとっていけたら最高だな、「老い」が少し怖くなくなった。
けれど楽しいのはきっと、彼らが血のつながらない他人であり、直接面倒を見る義務はないからだ。家族にとっては、高齢者を抱えることは大きな問題であるということは私も身を持って体験している。介護保険、介護施設、介護支援サービス、訪問看護、診療など。たくさんの制度、施設は調っているように見えるが、実際にはまだたくさんの問題点がある。これから少しずつ改善されていくことを望むが、なかなかみんながみんな「楽しい老後」というわけにはいかないだろう。私が高齢者になるころはどうなっているのだろう?そのころは間違いなく日本の人口の4分の1以上が高齢者ということになるだろうが。今の日本の延長で考えると、かなり不安である。
<「死」について考える>
年をとっていき、そしていつか必ず訪れるもの、「死」。きっと元気に生きているときは誰もがみな、「家で家族に見取られながら死にたい」って考えるのではないだろうか?でも、実際にその思いがかなえられる人はどれくらいいるのだろう?今回、在宅で最期を迎えるということについての本を読ませていただき、ビデオを見せていただき、そして実際に「おいは家で死にたか、治療はせんでよかばい」という患者さんに出会い、「死」について考えた。死ぬ瞬間までその人の人生であり、その瞬間を演出する権利はその人にあると思う。自分だったら最期は自分の思うようにびしっと決めて、たくさんの家族や友人たちに囲まれて素敵に自分の人生を閉じたい、そう願う。そして、皆にもそうであって欲しいと思う。高度医療施設の中で、たくさんの機械をつかって何とか延命しようとするのも間違ってはいないと思う。けれど、なにか悲しくないか?一分一秒の寿命を延ばすことに果たしてそういう意味があるのか?けれど、こちらの方がスタンダードな現実である。「Living
will」日本でも、もう少しこの考え方が定着すればみんなもっともっと幸せな死を迎えることができ、「死ぬこと」は自然なことで、それを決める権利は自分にあると皆が思うようになるのではないだろうか?
<「医療」について考える>
今まで実習で接してきた「医療」というものは、とにかく検査、手術、治療。大学病院だから当たり前といえば、当たり前。でも、医療はこれがすべてじゃない、医師の仕事は毎日治療のプロトコールやCT画像、検査所見とにらめっこしてるだけじゃない。それが実感として持つことができたこの3週間。患者さんの顔を見ること、世間話をすること、これも医療。患者さんの家のことも家族のこともちゃんと知っていて、家での生活、そして今後のことに関しても親身になって考えてあげる。これも医療。私の考えは間違ってなかった・・・正直ほっとした。私の中での医者のイメージはずっと、大学病院のような高度医療施設の中で働くスペシャリストではなくて、地域の人々の中に溶けこんでいて、みんなの良き相談役であり良き理解者である人、というものだったから。なんとなく叫びたくなった。「日本の高度な医療を支えているのは、たくさんの専門家や施設の調った大学病院ではなくて、実は、地域で細々と外来や往診をしているドクターだぞー!!」と。私も将来的にはそういう医療に携わるつもりでいる。
<さいごに>
今回実習で接した先生方もみなさん個性的な方で、それぞれに診療所で働くということを楽しんでおられ、すごくよかったです。自分もいつかそういう風に働けたらなぁと、いい見本になりました。先生方も診療だけでも大変なところ、いろいろ気を使っていただきほんとうにありがとうございました。
三瀬診療所を選択コースとしてまわった先輩から「いい実習だよ」といわれ、6年になったら絶対に選択しようと考えてました。今回、三瀬診療所だけではなく、他にもたくさんの診療所を見てまわることができてよかったです。本当は診療所実習は必修であるべきだと思います。医療を底辺で支える診療所の姿を見ることなしに医療は語れないと思うからです。
これからも公立の診療所、そして開業医の先生のネットワークを広げて、もっともっと学生がいろいろなところでいい実習ができるようにがんばってください。