三瀬村診療所実習レポート     佐賀医科大学6年 小杉寿文

白浜先生、大変お世話になりました。
非常に有意義な実習であったと思います。
簡単になってしまいましたがレポートをお送りします。

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三瀬村診療所実習レポート     佐賀医科大学6年 小杉寿文

 平成10年11月9日より2週間にわたって、三瀬村国保診療所において実習する機
会に恵まれた。三瀬村は人口約1750人の山間の村で、佐賀県の北端に位置してい
る。65歳以上の高齢化率は26%と高齢化が進んでいる。

11月9日(月)
 朝8時30分に診療所に集合。佐賀医大よりほぼ30分で到着した。途中の曲がり
くねった山道のわりには以外に近い印象をもった。白浜先生のオリエンテーショ
ンを受け9時から外来である。月曜日という事もあり待合い室は盛況である。10
数人分の椅子の他に3畳ほどの畳張りがある。高齢者には椅子よりも畳の方がよ
いというかたもいるそうだ。診療所には日に1便の無料巡回バスが走っており重
要な足として使われているが、後日バスに同乗させていただいた。
 外来の方はやはり高齢者が多く受診されていた。この日一日の受診者数は約40
数名であるがうち約30名は高血圧症での受診であった。定期的に通院されている
患者さんは血圧のコントロールもうまくいっているのであるが、最近急に寒くな
り血圧も少々高めに出ることが多かった。外来での実習では血圧測定が重要な役
割となっている。寒さも厳しくなり厚着されている方がほとんどで、重ね着した
シャツの上からの測定では正確さを欠くものの、服を脱いでもらうのにも時間が
かかる。服の脱ぎ着ひとつとっても、高齢者にはとても骨の折れる作業になって
しまう。しかしのんびりと服を脱いでもらうのを待てる山の余裕というものがあ
るようだった。非常に驚いたのはこれだけ高血圧の患者さんが来る割には、糖尿
病での受診ははとんどなかったのである。極端に肥満している患者さんはおらず、
高齢になっても畑仕事などを続けている人が多く、車を使わず歩く機会も多いた
めであろうとのことで非常に納得がいく。

11月10日(火)
 昼前より三瀬温泉において三瀬郵便局主催の簡易保険介護教室があった。聴衆
はほとんど各地域の老人クラブの方たちである。まず白浜先生がスライドを使っ
て診療所の役割や診療経過などを報告され、さらに今後予定されている診療所の
新築計画について、他施設への見学報告も交えて説明され理解を求められた。続
いて村役場の福祉課長さんが介護保険についての説明をされた。とても身近で重
要な課題だけに熱心に聞き入っておられ、質問も介護保険のことに集中した。

11月12日(木)
 午前中の外来の合間に、巡回バスに同乗させていただいた。バスは隣の村役場
のバスであり新しく非常に乗り心地のよいものであった。役場前の道路は佐賀か
ら福岡へ続くもので険しさの割に交通量が多い。しかしその道から一歩脇へそれ
るとそこはとても静かなものである。何件かの家が肩を寄せ会って集落を作って
いるが、想像していたよりもかなり山の中に生活があった。途中小さな川に沿っ
て走るのだが川の護岸工事がなされていた。それもコンクリートの護岸から自然
石を組み合わせたより自然に近い川に戻そうとの工事である。下流の自然だけで
なく有明海の自然にも影響を及ぼすことを考えてのことと信じたい。小学校の分
校の脇を通って山を縫うようにドライブである。利用者は一人だけであった。し
かしもしもこのバスが運行していなかったら、高齢で車の運転ができない人たち
は診療所へ通院することは非常に困難であることは容易に想像できる。
 午後、エホバの証人からインフォームド・コンセントについての意見を白浜先
生に求めて来院される。変わる医療への期待。インフォームドコンセントが訴訟
対策のためだけにフォローもなくなされていくことへの不安を感じた。

11月16日(月)
 村役場隣の三瀬小学校にて朝礼の時間に健康教室。「タバコの害について」で
あるが、我々実習生も2人で分担して講師を務めることとなった。40年間タバコ
を吸い続けた肺ガン患者の肺とタバコを吸わない人の肺の写真をカラーでコピー
し全員に配る。効果は絶大であった。また実際に手術用のマスクにタバコの煙を
吹きかけてマスクが黒くなることを実証して見せた。発ガン性や心血管や胎児へ
の影響などとともに副流煙についても触れた。「まわりのひとへにめいわくがか
かる」。どのぐらいの家庭でタバコが吸われているか尋ねたが、ほとんどの家庭
で吸われているらしく、子供達が家庭で健康教室での話を持ち帰ってほしいと期
待する。後日全員の感想文を拝見したが非常にストレートな反応があり、この時
期からの禁煙教育が最も効果的であると認識した。しかし家庭で親が喫煙してい
る事を考えると一度だけでなくたびたびこのような機会が必要ではないだろうか。
 午後から役場で「三瀬村健康づくり推進協議会」なる会議を傍聴。村長さんを
はじめ議会の議長さんや保健所長さん老人クラブや商工会、婦人会などの会長さ
んなど村の主だった方々が出席される。検診の結果や村民の疾病の状況などが報
告される。歯科保健の立場から子供達へのフッ素塗布についての議論もあった。

11月18日(水)
 村の乳幼児検診を見学した。佐賀医大から小児科の先生が年齢ごとのポイント
などを説明しながら診察をされたので勉強になった。診療所に限らず大学病院で
もお年寄りがほとんどである。身体徴候のみならず発達や成長という視点が重要
である。

 総じて診療所実習では外来での基本的な身体診察とコミュニケーションを実習
した。コミュニケーションの内容は診察に関することだけでなくどちらかという
と福祉的な視点からの相談やアドバイスに重点が置かれていると思われる。小学
校での健康教室や老人クラブでの介護教室など教育的役割の多さとというのは都
市部での診療所には見られないものではないだろうか。信頼関係のもとに教育的
な役割と福祉部門との連携、そして医療と非常に幅の広い分野をカバーしなけれ
ばならないが、医師としても非常にやりがいのある内容であると思う。
 実習に関しては2週間という期間で見られたのは慢性の内科疾患以外には風邪
が中心であった。専門科に受診するほどでもないような様々な疾患を期待してい
たがそのような受診はあまり見られなかった。眼科や耳鼻科、皮膚科、泌尿器科
そして小外科手術などにおいてどのような対応がなされるのか興味があった。比
較的都市部に近い事と、近くに入院が可能な総合病院があることから重症症例に
対応する事が可能であることは朗報である。これが離島など交通の便がもっと悪
いところであれば状況は違っているであろう。