良い患者医師関係を作る 2002.6.21.佐賀医大行動科学講義の内容の提示


患者との信頼関係に 関与する因子(1)(学生の意見)


時間を守る、約束守る
患者さんへの話し方がうまいか
(専門用語だけではだめ。方言は親しみ)
患者さんの話をよくきく
医学の知識が豊富
身だしなみ、笑顔
患者が意見をいいやすい雰囲気を作る
正しい診断(知識、患者の話)
相手の人間性を尊重する(子供扱いしない)
挨拶
変な癖に気をつける
患者の名前や顔を覚える努力
常識的な幅ひろい知識を持つ
患者の秘密を守る
十分な説明をする
治療効果をあげる
しっかりとした技術


患者の不満「患者さんの気持ち、看護婦さんの気持ち、お医者さんの気持ち」宮崎医科大学学生「心の声配達人」鉱脈社刊より


突然の事故。救急車で運ばれ、病院到着。ドクター、ナースの顔を見てホッとする私に「最悪だよな」「先生と当直すると最悪な患者ばかりですね」と一言ずつ。そんな中、「もう大丈夫ですから頑張ってくださいね」看護学生のその一言に、思わず涙がひと粒こぼれた。

他の医者にかかりたいので紹介状を書いてほしいとお願いしたら、どこの病院にかかっても同じだと言われ、書いてもらえなかった。

「貴方はうるさい患者だ!」とあからさまに言い放つ医者『患者の気持ちになって・・・・』と院誌には記せり

生検に オッパイ切られて手術台
医者の話は高校野球 どちらが勝つか 昼飯賭ける

看護婦さん ストレスたまるよ 良い患者

常識は 医師集団には 通らない

御自分を コントロールできないで 人に当たらないで



患者の不満「言いたくても言えなかった一言医療編」ライフ社より


朝8時に受付に並び、診察を受けたのは11時。会計を済ませ薬をもらい病院を出たのは午後2時。元気じゃないといけない大学病院。

入院前は「3時間待ち3分診療」だった。入院後は毎日「30秒診療」になった。



患者家族の不満「言いたくても言えなかった一言医療編」ライフ社より


余命を力なくみつめる父。私を愛してくれた父。3ヵ月ごとの病院移動。もう最後の居場所を求めることすら許されないの?

父のがんを家族に告知した時の医師の態度。涙ぐんでいる家族に「これだからイヤだ」と吐きすてるように言った。許せない。

おじいちゃんの病院に行った時、手足をベッドにくくられていた。何も悪いことしてないのに、苦労を背負って生きてきたのに。



患者の願い「患者さんの気持ち、看護婦さんの気持ち、お医者さんの気持ち」宮崎医科大学学生「心の声配達人」鉱脈社刊より


忙しくても 先生だけが たった一本の命の綱  どうか毎日 会いにきて

One of them の患者ですが  Only one の主治医です

“ねえ先生 あと一分 話につきあって”    言える間もなく「お大事に」



患者のお願い「言いたくても言えなかった一言医療編」ライフ社より

お医者さまへ・・・大学6年間の間に各科ごとの重症患者の体験をしてみて下さい。実際に病気にならなくても24時間ベッド上の生活です。1週間も体験すれば食事、排泄のありがたさがよくわかります。



看護婦の言葉「患者さんの気持ち、看護婦さんの気持ち、お医者さんの気持ち」宮崎医科大学学生「心の声配達人」鉱脈社刊より


注射苦手のナースだった頃、「あなたがするの?」といやな顔をされたことがある。しかし退職した今、その気持ちがよくわかる。天使の笑顔より痛くない注射がよいと。

危篤状態の彼女に私は「頑張って」と言った。彼女は苦しそうに「まだ頑張れというの?」と言った。

「楽にしてほしい」という患者(あなた)の叫びに私は患者(あなた)の死を考えました。ごめんね。患者(あなた)は「死にたい」なんて一言も言ってはいないのに。

病院に勤めて患者さんのために働くのだと思っていた。でも、今私は病院のために働いている気がする。



医師の弁明「患者さんの気持ち、看護婦さんの気持ち、お医者さんの気持ち」宮崎医科大学学生「心の声配達人」鉱脈社刊より


病気になると多くの患者さんが自分のことで頭がいっぱいになり“わがまま”になられる方もおられます。その“わがまま”を十分理解しつつ冷静な判断を迫られる。医師としてつらい瞬間です。

せいいっぱいやっています。だけど治らない病気もあるのです。
            
患者さんは「これしか」してもらっていないと思うかもしれませんが
私たち医療者は「これほど」がんばっていると思っているのです
でもやっぱり「これしか」できていないのが現状でしょうね



医師への感謝「言いたくても言えなかった一言医療編」ライフ社より


術後管理「先生、少し休んで下さい」と家族からその患者が亡くなった日、彼は7日ぶりにベッドで眠ったのです。

滅私・・・早朝。院内の半開きの室内に白衣の医師が器具と棚との隙間に倒れるように眠りこんでおられた。その奥は救急室に通じていた。

「どう?」と毎日ベッドサイドに来てくれる先生。薬を飲むより元気になる。「先生、白衣の裾汚れちゃうよ」
(先生はベッドに寝ている私と目線を合わせるためにいつもしゃがんでくれます)

「夜中でも診るから安心して」の言葉に、新米ママの私の不安は吹きとんだ。

「今までつらかったね」。ありがとう、先生。その一言がずっと聞きたかったの。

入院中の聾唖者の母と医師が手話で話すのを見て驚く。母の診療には手話が必要と気づき勉強した、と言われ頭が下がる。

肺炎の父に「冷たくてごめんね」と聴診器を息で暖めてくれた婦長さんのやさしさは、十三回忌を過ぎた今でも忘れません。



医師が身につけておくべきこと(学生の意見)


わかりやすい言葉で説明できる知識
診断能力を身につける
コミュニケーション能力
治療のための技術を身につける
謙虚な態度、基本的マナー
患者家族の気持ちの理解
どんな時もあきらめない
許容量をふやす
時間を上手に使う
医療チームで対応する
患者家族の立場の理解
落ち着いた行動
患者の性格を知る
患者が安心できる話し方
疾患だけでなく患者全体を把握
診断治療以外にも配慮
自己管理能力
保険など医療以外のことを知っている
ストレスマネージメント


良い患者医師関係を作るための医療制度システム(学生の意見)


短時間で受診できるように
専門馬鹿にならない学習システム
家庭医の養成
チーム医療
患者体験
一人の診察時間を十分に(それを支える医療費は?)
医師数の適正化
医師、患者の不満解消の第三者機関
学士入学
受験戦争だけで、医師になれというのが難しいのでは?


理想の医師像


主にcommonでchronicな病気の患者を扱うが、症状はconcealedされたり、complexでcomplicationのあることも多い。
Complaintは多いが、complianceは悪く、compromisedな、いわゆる厄介な患者とも上手にcommunicateし、conversationを重んじる。   
coach、counselorとして患者の誤った生活習慣をcorrectする行動科学的医療にも精通した医師で、患者の一生をcontinuously、carefullyに診ており、確実なclinical competenceで突然のcrisisにも適確に対応できる。
Communityの中で、culture、circumstanceをも考慮し、漢方などconventionalな治療も適宜用い、他の医師や看護婦、薬剤師他各種のcoworkerのcoordinator、collabolatorとしてチーム医療を目指し、行政ともしっかりとしたconnectionを持っている。
医療の倫理社会的側面をconsiderし、患者の気持ちをconcernし、十分患者にわかるように説明した上でconsentを取り、医療costにも気を配るcommon senseとcourtesyを備えたconscientiousでcompassionateでcredibleな医師である。
Computerも使って、自らのcontinuing educationを続け、単に医学だけではなく他の分野でも診療の役に立つような新しい分野、自分の苦手とする分野にもcuriosityを持ち、challengeしている。自分の守備範囲をわきまえ、必要な時はすぐに専門医にconsultするが、conflictは感じない。
病気のcureができない時でも、患者をcomfortableにすることを目指し、常にcareし、consoleする。
この医師は自分からconvictionを持ってこの様な医療をchoiceしconsistentに守っている真にcomprehensiveな医師で、その医師の行う医療こそcore of medicineであり、その仕事はcareer、callingと呼ぶにふさわしい。


保健機関(WHO)が発表した2000年度版「世界保健報告」
によると、加盟191カ国の保険システムを比較した結果、日本は総合で第1位。保険シス世界テムが最も効果的に機能している国であると評価されました。総合評価は、上記の5項目の指標を数値化してランクづけされています。日本は、健康寿命が男性71.9歳、女性が77.2歳でともに1位を獲得したほか、すべての指標で8位以上にランクし、総合1位を獲得しました。


QOL
人生(生きがい)/生活/生命
Quality of Working Life
「疲れていては良い仕事を心から続けてすることはできない」
Quality of Care
Quality of Death


チーム医療に携わる専門家へ HIV感染者大石敏寛さんの言葉
自分の仕事を理解してほしい。    どのような影響を患者に与えるかを理解してほしい。
相手の仕事を理解してほしい。         互いの連携のために。    
自分の仕事に傲慢にならないでほしい。 自分の仕事が一番だと思わないでほしい。
自分の仕事に誇りをもってほしい。
是非患者と一緒に希望を持ってほしい。


二ーバー牧師の祈り
主よ、
変えられないものを
  受け入れる心の静けさと、
変えられるものを
  変える勇気と、
その両者を見分ける
  英知を与えたまえ。           アーメン


患者教育は難しい
患者を教育することは思ったより難しい。医師から患者への情報伝達には、それを妨害する多くの因子が存在する。
患者が十分な情報を提供された場合でも、患者が従うのは医師の指示のうち22%から72%でしかない。
急性疾患であるほど、あるいは致死的疾患であるほど、変化の必要の少ないほど、患者は医師に従うようになる。


医師が患者教育で感じるストレス
自己破壊的な行動を続ける                            (喫煙、アルコール多飲など)
治療計画を実行しない
   (抗生物質を最後まで飲みきれない)
健康になるための行動を避ける
   (運動をしない、不健康な睡眠パターンを続ける)


健康教育の実態
伝達に重きが置かれ、繰り返し繰り返し「助言」が行われるが、いくら教えても医師のいうことを守れない上記のような患者に対して病気の合併症の恐さをことさら強調して脅し始める。その結果、患者は嫌気がさして別の病院へと移っていく。


病気に関する教育 (Cohen-Cole)
患者の考えを明らかにする
診断についての基本的な説明
感情への対応
患者の基礎知識の確認
診断についての詳細な説明
理解を確認し、質問を引き出す


Learnのアプローチ(Berlin&Fowkes)
Listen:傾聴:病気に対する考え方や希望(解釈モデル)を明らかにする。
Explain:説明:医学的見解を、専門語使わず
Acknowledge:解釈モデルと医学見解の相違の明確化、患者と同じ土俵に立ったか確認
Recommend:推奨:患者にあったプランを
Negotiate:ケンカせずに患者を支援する


患者の感情への対応
「それはつらかったでしょうね。」
「とても心配されていたんでしょうね。」
患者の考えだけでなく、感情も理解してはじめて、よりよい関係が構築され、本物の患者教育が始まる。
まったく見知らぬ、信頼のおけない相手にとやかく言われるのはみな、御免である。


ステージに合わせた対応 無関心期
健康上の問題として意識していない患者に対して説得しても無駄。
あくまでも情報を提供して、待つ姿勢を保つ(押し付けずに、良い患者医師関係を続ける)
たねをまいて、水をかけて待ちなさい。そのうち芽が出るかなという感覚でつきあっていく。


ステージに合わせた対応 関心期
わかっちゃいるけど止められない人
今の行動を続けることの利益不利益と行動変容していった場合の利益不利益について話し合う
別の手段で対応する
重要度ー自信度モデル:重要度(重要と思えるか?)と自信度(できると思うか?)


ステージに合わせた対応 行動期、維持期
決断を指示する
短期と長期のゴールを患者と話し合って設定してもらう
起こりうる問題点について話し合って、対応法を考える。
継続できていることを評価、賞賛する


ステージに合わせた対応 再発期
失敗は成功のもと
行動変容に失敗はつきものであるという認識
「前回は1ヶ月だったのが、今回は5ヶ月も出来た」と評価する


事例検討(1)
42才男性。コンピュータープログラマー。生活は不規則で、タバコを1日に2箱位吸う。納期が迫ってくるとタバコの本数も増える。3年前から空腹時の心窩部痛があり、十二指腸潰瘍を指摘され薬をもらっているが、最近症状悪化。担当医薬を飲んでも、タバコをやめな「と、潰瘍は良くならないこと、このまま再発をくり返していると潰瘍穿孔の危険もあり、何とかこの方の喫煙や、生活が不規則な行動を少しでも改善してほしいと考えている。


事例検討(2)
42才男性。建設会社のやり手営業部長。165cm90kgの肥満。3年前職場検診で空腹時血糖値180mg/dlで糖尿病と診断され、病院の外来へ通って食事指導などを受けたが、忙しくて中断。もともと酒好きで、仕事の付き合いもあってほとんど毎日5合くらい飲んでいる。最近のどの渇きが強く、身体もだるいため、久しぶりで病院に受診したところ血糖値が360mg/dlと上昇していた。担当医はできれば入院してほしいと考えたが、患者は仕事が忙しくて入院はできないという。それで少なくとも、アルコールを止めること、食事療法と運動療法で体重をまず85kgまで下げてほしいと考えている。