三瀬診療所感想文
平井徹良


研修医2年目の8月、日差しが照りつける中、地域医療の研修のため一ヶ月間三瀬診療所で研修させていただきました。
1年目を大規模病院で研修し、2年目を大学病院で研修し始めた折に診療所という現場は新鮮で貴重な経験でした。

・ 今回の研修でしたかったこと
1) 医師一人で対応する外来診療の実際を経験する。
→ これは裏を返せば、自分が経験したことがなく不安を感じやすいシチュエーションを白浜先生の対応を学ばせていただくことで慣れておきたい、ということでもあります。外来での急変というのはあまりないようですが実際に経験した症例として、診療時間の終わりごろに“自宅で高齢者が熱中症になったらしい”という家族からの連絡が突然入り、半ば救急車のような雰囲気で往診に行く、という一幕がありました。結局その症例では家族から聴取した病歴から脱水状態が疑われ診療所から一番近い総合病院へ救急搬送することになりました。患者さんの自宅での末梢静脈路確保、同時に救急車の手配、搬送先の病院との連携と大病院ではそうそうない経験でした。他、小外科領域の処置が必要な外傷の方など(草刈中に飛んだ針金が足に突き刺さった、旅行中に車に手をはさんだ)も急に来られます。診療所という施設上のこともあり、検査器具、処置器具、それに専門領域のスタッフがいない、といった制約は多いのですが、白浜先生と(あるいは患者さん本人と)“ここでできる最善の対応は何か”を話し合って決める姿勢はとても参考になるものでした。

2) 地域との連携、かかりつけ医としての取り組み方を知る。
→ 地域医療の研修なのですから当然なのかもしれませんが、地域におけるプライマリケアの実際を勉強する良い機会でした。まず、住民に信頼してもらい、まずは受診してもらうこと、必要な方を大病院と協力して診療していくこと、それから地域の医療、そして保健・福祉について良い係わり合いができること、三瀬診療所の役割を乱暴ながらおおまかにいうとこういうことではないかと思います。そして、どの部分にも必要だと感じるのは白浜先生の存在感ではないかと思います。それは決して白浜先生が個性的であるとか笑顔が素敵だとかそういう理由ではなく(失礼!)白浜先生がまずそこに村民として住んでいること、子育てをする一人の父親として父兄会にも参加する一人格として認められていることだと思います。もちろん、人手のこともあるわけで皆が皆そうはいかないと思いますが、かかりつけ医としてどうあるべきかという一つの答えが、そこに骨を埋める覚悟、とうものではないかと感じました。

・ その他、三瀬診療所研修でできたこと。
1) 研修プログラムとしてシルバーケアの見学というものがありました。折しも三瀬村は佐賀市との市町村合併後の時期、図らずも市町村合併による地域へのサービスの変化といったことまで職員の方々からお話を聞くことが出来ました。また、普段は診察室や往診先でみていた患者さんがシルバーケアでは違う顔を見せていたり(同じ年代の方と同席したり、若い職員さんたちがいたりして)医者として必須な人間観察の良い機会でもありました。
2) 白浜先生について行って参加する講演会がありました。一つは中学校での喫煙防止のための講演会。地域保健への協力の一環でもあるのですが、例えば教職員の禁煙や学校施設内の全面禁煙化など取り組みについて話し合う機会もありました。もう一つは大病院に招かれての講演会で、内容は終末期医療への取り組みについてのレクチャー・実際に問題を感じた症例を通してのディスカッションがありました。いかに患者さんの抱える苦しみに取り組むか、その方法論について論議する他院のスタッフの方々の熱意が印象的でした。
3) 保険診療上のことについても、ここでは医療事務に任せっきりというわけにはいかないため、周りのスタッフに聞くことが多かったです。小規模であるからこそ余計に理解して診療しなければ患者さんの不利益にもなりかねない、という特徴があり、そういったことに疎い研修医にとってはとても勉強になりました。
4) 診療所で一緒に過ごしたスタッフの方々が印象的でした。診療所で自分が何かする場合、物の置いてある場所から何から看護師さんに頼ります。(非常に助かりました!)毎月、大学から2年目の研修医がくるわけで看護師さん達も私たちが何ができて何ができないというのを心得て下さっているご様子で、何をするにも実に親切なサポートがあります。一人で応対するときも看護師さんがいればとりあえず安心、という部分が確かにありました。診療所の切り盛りということでいえば彼女らの存在が一番重要といって間違いないでしょう。また、私の場合はちょうど沖縄の方から3年目の先生がいらっしゃっている時期でもあり、その先生と治療方針を話し合ったりすることで非常に勉強になりました。他の現場の経験談を聞いたり、その先生の考え方を聞くことで少なくとも私の方は良い刺激をたくさん受けました。

最後に。診療所のみなさん、とてもお世話になりました。おかげで有意義な研修ができました。