インフォームドコンセント書式のひな形について


1、 どういう時にインフォームドコンセントをとるのか
 (検査、治療、病状の説明、治験)など、きちんと方針を患者さんや家族にきちんと告げて納得していただくことが必要と判断される場合。日常的な検査(たとえば採血など)まで書式で残すようにすることは、日常診療の現場で現実的ではないとも思われますが、少なくともどんな処置をするにあたっても、「念のため採血しておきましょう」とあいまいに専門用語で伝えるよりは、(実際は入院時ルーチン検査で決められているのかも知れないが)、「最初に大まかに貧血や肝臓など全身の異常がないか血液をとって調べてみましょう」、というような説明をしておくと、その後のその結果をきちんと説明するようになる。全部の項目をすべて網羅することはなくても。日常診療で一応ようなポイントで話すことは必要であると思います。そしてある程度のリスクのある処置や治療については(どこからという線引きは難しいように思いますが、今回の調査で半分以上の方がとった方がよいと判断された項目くらいがめやすでしょうか)、患者医療者双方の理解のその確認の意味で書式を残すことが必要なように思います。
2、インフォームドコンセントの前提
1)医療者と患者や患者の関係者双方が、良いコミュニケーションの上に、相互に尊敬を払いながら、一緒に決断していくことがまず大前提となる。
2) 患者は説明を見たり聞いたりすることができるか。
視力、聴力の低下があれば、視覚、聴力が悪くても理解できるようにする。
3)患者は説明を理解できるか。
理解力については、それまでの診療、診察の時の会話でわかると思う。
4) 説明を理解できなければ、誰が代りに判断するのか
(代理決定の原則には以下のようなものがある)
(1)代理決定に関する患者の事前指示があればその人が判断する
(2)代行判断(例えば患者は、こういうふうに意識がなくなったときは、点滴などの治療しないでくれと言っていたなど)
(3)最善利益(上記のような本人の意見が残されてない場合、残された家蔵や医療従事者で今後どのような対応をすることが患者にとって最善かについて決定するやり方)
5) 質問する機会の保障
患者が理解できないことは、いつでも質問できることを保障する
6)判断の自由性の確保
同意するかどうかの決断は、自由な意志で決めてほしいこと、もし同意されなくても、医療者は次善の方法で対応することを伝えておく。また患者の決断を尊重すべきで、安易に家族などの判断を鵜呑みにしてはならあい。
7) 同意の撤回の保障
一度決断されても、実際の処置をする直前まで、いつでもこの同意を取り消すことができることを保障する。
8) インフォームドコンセントの例外
(1)緊急性のある場合
(救急の場面で、患者の意識がなく、代理決定する人もわからず、時間的余裕がない場合は、患者にとって最善の方向で治療開始することは許される)
(2)伝えることで患者の不安を増し、治療に悪影響をおよぼすと医師が判断した場合
(癌告知をしない理由として家族の患者は神経質だからという一言で伝えないことがあったが、それまでの経過などから、本当に悪影響を及ぼす可能性が高いと言うことの根拠をさぐる必要がある)
(3)患者が伝えることを希望しない場合(患者が希望する代理人に話す)


インフォームドコセントのひな形


○○の(検査、治療)を納得して受けていただくために(正、コピー)

患者さんにとってよりよい医療を提供するために、これから行う検査や治療などについて説明させていただきます。
できるだけわかりやすく説明しますが、わかりにくい時は、途中でも構いませんので質問下さい。

1) 何をするのか

2) 何のためにするのか、そのことをすることの利点(どのようなことがわかるのか)

3) 具体的な処置(いつ、だれが行うのか)

4) 特に患者に協力していただきたい注意点(安全に行うための注意点)

5) 副作用

6) 費用(通常の保険診療内で特別患者に負担がかからなければ省略可)

7) それ以外の検査との有用性、リスクの比較(主治医の選択の根拠)

8) その他

以上のとおりですが、わからないことがありましたら何でもご質問ください。
理解でき、○○の検査、治療をすることに同意いただければ、以下の同意書に署名してください。
なお、同意を拒否されても、また、直前に同意を撤回されても、診療上の不利益を受けることはありません。                     



1)医師からの説明を理解できましたか?(理解した、理解できなかった)

2)理解できなかった部分、もう一度くわしく説明してほしかったことがあれば書いて下さい。再度御説明します。
 

3)(                              )をすることについて十分な説明を受け、
納得できましたので同意し署名します。
 
                                              年    月    日

患者氏名(                      )連絡先(       )

(患者代理人氏名        患者との続柄(    )連絡先(       )

同席者氏名(       )  患者との続柄(    )連絡先(       )

説明担当医(     科) 氏名(          )連絡先(       )

指導医  (     科) 氏名(          )連絡先(       )

同席看護婦(     科) 氏名(          )連絡先(       )

同席者  (      ) 氏名(          )連絡先(       )



<この書式を用いる医師への解説>
まず、先にあげた説明の前提について、チェックをしたうえで説明にのぞむ。
このシートは複写形式にして患者家族、医療者双方が手許に残しておく。
1)何をするのか
 できれば難しい専門用語だけでなくやさしい解説をつけた名称を書き入れる。
 (例)経皮的経管冠動脈形成術(PTCA)の後に、(動脈から管を入れて狭くなった心臓の血管をひろげる処置)などというわかりやすい解説があるとだれでも理解しやすいと思う。
2) 何のためにするのか、そのことをすることの利点(どのようなことがわかるのか)
 (例)胃内視鏡をする場合、あなたの胃のあたりの痛みの原因として、食道、胃、十二指腸の病気が考えられます(できれば食道、胃の図を見せる)。口から内視鏡(これも図で示す)を入れて、詳細にその病気の疑われる部分を見ることで、正確な診断がついたり、病気の疑われるの部分をとってきて顕微鏡で詳しく見ることによって、さらに正確な病気の診断ができます。
3) 具体的な処置
 具体的にどのようなことを行うか手順やだいたいどれくらいの時間がかかるのかを図などを使ってわかりやすく示す。だれが行うかということについては、例えば研修病院で、あだ経験の浅い若い研修医が担当すると場合、患者が不安に思うので、あえてだれがするかは説明しないという風潮があるが、そのようなことを患者は一番知りたいのである。そのような患者が不安に思うような状況こそ、どの指導医の立ち会いのもとに行うか、きちんと伝えておくことが必要であると思う。
4)特に患者に協力していただきたい注意点(安全に行うための注意点)
 (例)前記の内視鏡であれば、飲み込む時、すこしげっぷが出たりして辛いが、のどに麻酔をつけておくので、ゆっくり飲み込んでほしい。また胃の中を詳しく見るため、また嘔吐したりして、気管に異物が入り込まないように、前日の夜8時以降は飲んだり、食べたりしないで、明日の朝9時に受診してほしいなど。
5)副作用
 (例)○○内視鏡の副作用は、輸血が必要な出血が1%----などと具体的な副作用の内容を学会などの大規模な調査で出すと同時に、その施設での成績、例えば一年間の実際の検査数、その中でどのような副作用が起きたかを説明する。また、特にほおっておくと重篤になる副作用については、その初期症状を知らせておく、たとえばスタチン系の高脂血症改善剤の横紋筋融解の筋肉痛などがあったらすぐ連絡してほしいと伝えておく(緊急連絡のため担当者各人の電話連絡先の記入は大切)。
6)費用
 保険診療内の一般の治療に於ては、一時的な負担はあっても、高額医療は戻ってくることになるが、保険外診療については、会計担当者、メディカルソーシャルワーカーに説明に同席してもらうか、事前にどれくらいの患者負担になるのかを調べて提示できるように準備しておく。
7) それ以外の検査との有用性、リスクの比較
 別の選択肢がある場合は、自分が勧めるやり方との比較を有益性、リスクを含めてできるかぎりわかりやすく比較し、その中で自分が一番勧める方法の根拠を述べる。
もし自分に経験のない方法を患者が希望する場合、そのことができる専門家に紹介することは、決して無責任な行動ではなく、倫理的も望まれる選択である。
8)その他、患者さんの質問を促すこと
 質問を受けてはじめて患者に理解されたと言える。患者や同席者の顔の表情を見ながら、「わかりましたか?」と確認し、最後に「何かもう一度聞いておきたいことや、不安なことはありませんか?またあとで今日参加できなかった家族の人と一緒にこの資料を読みなおして、わからないことがあったら御連絡下さい。その上で理解して納得されるようでしたら、本人と同席者の方で、サインをして提出して下さい」と伝える。
9)署名
 説明担当医だけでなく、説明に同席した指導医や、看護婦だけでなく、薬剤師などが同席した場合はサインをして患者にわたす。連絡先もそれぞれ書いておいた方が確実であろう。もちろん説明の途中で担当医の説明の補足をしてもらう。看護婦の説明の方が理解しやすい患者もいる。
 患者本人の判断能力がまったくない場合だけでけでなく、判断能力が低下していると思われる場合にも、代理人と一緒にサインしてもらうことが望ましい。 
 患者家族や、代理人の連絡先はカルテの別の場所にも記入されているはずだが、携帯電話の番号など緊急でも連絡がつく電話番号を記入してもらう。