三瀬国保診療所レポート(2008年1月)

                     佐賀大学 研修医  樋口 徹

2年間の研修期間がほとんど終了しましたが、三瀬診療所での1ヶ月間は今まで勉強してきた事がどれだけ通用するかを試された気がします。

 地域医療では自分と白浜先生と二人だけで診療に携わらなければならず、来院される患者は内科、小外科、マイナー領域と多岐にわたっており幅広い知識が必要である事を実感しました。自分は研修期間の中で神経系の科をローテートしていなかったので、外来で簡便にできる神経学的診察を教えていただきとてもいい経験になりました。

 地域医療を研修させてもらい一番考える事は大学病院との違いです。自分は今まで大学病院でしか研修した事がありませんでした。大学では患者様一人一人の入院費は包括医療となっており、採血やCTのオーダーを何の気もなしにしており個々の検査のコストや薬価にも気を配った事がありませんでした。三瀬で保険診療をするにあたって採血を1回するだけでも3割負担の保険で相当な診療代になる事を初めて知る事ができたので、患者様一人一人に最低限必要な検査を取捨選択する事を学べました。

 また、自分は入院診療しかしてきた事がなかったので外来診療は慣れてませんでした。外来診療は限られた時間の中で問診を行っていくつかの鑑別診断を挙げ必要な検査を行い自分で確定診断を行うもので幅広い知識がなければできない診療だと感じました。自分は2年間、画像診断の勉強ばかりしてきて患者の身体診察にあまり重点を置いていなかった気がします。ここで初心に立ち返って正確な身体診察の勉強を復習できたのもいい経験となりました。また、最も大事な事は精密検査や高度な治療を受けるべき患者をしっかり見極める事だと思います。普段と様子が違うという事を感じ、いくつかの鑑別疾患を挙げて除外を含めた採血、Xp、心電図が必要であると少ない時間の中で決断する能力がなければ本当の意味でのプライマリケアではない気がします。また、主訴は風邪であっても血圧を測って高血圧があるのならば注意を喚起するという事もプライマリケアにおいて非常に大事な事と感じました。最初、何の自覚症状もない患者さんに定期受診を勧めるべきなのか疑問でしたが、やはり高血圧があるのにノーケアで過ごしていて重大な合併症を発症した患者を目の当たりにしたこともあったので、地域の中でそういう患者を減らそうという試みは必要な事だと思えました。

三瀬村の患者様達は自分が診察をする時よりも白浜先生に診て頂くときに心を開いているなと感じました。それは医者としての経験年数もさる事ながら、10年以上も一人で診療をされてこられたからこそ寄せれる信頼が根底にあるのだとも思います。地域医療を行うにあたって大事な事は診察ができて診断をする以前に患者さんの職業、患者さん個人個人の考え方、経済状況、家族関係などをどれだけ把握できているかという事ではないかと感じます。最近、往診という言葉も聞かなくなり開業医の先生もほとんどやっていないみたいですが週に一度診療の合間をぬって診察にいく姿勢に温かさを感じました。

また白浜先生の大学での倫理学の講義に参加させていただいたのも貴重な経験となりました。白浜先生の講演会のDVDもみせていただいて、死に直面した人間の気持ちは本人にしかわからないがそれを少しでもわかろうとする姿勢に感銘を受けました。医療者や家族の支えによって患者の気持ちが安らぎ、自分の人生に意味を見いだす事ができるのならば最大限の努力をしようとも思えました。

 また、地域医療研修の一環としてシルバーケア三瀬でデイサービス、ホームヘルプ、在宅介護支援の業務を研修させていただきましたが普段診療をやっていると見る事ができないものなので医療だけでなく患者を取り巻く医療サービスがどのような仕組みになっているのかがわかり、医療保険や介護保険制度について勉強する事ができました。これから高齢化社会になっていくので、これらの事業と上手に連携を取ることが重要であると再認識しました。

1ヶ月間たくさんの事を教えていただいた白浜先生、診療所の職員の皆様、シルバーケア三瀬の職員の皆様ありがとうございました。