三瀬診療所研修の感想(2005年12月の研修医〉佐賀大学付属病院研修医  原田 慶美


 今までの研修は佐賀大学付属病院だったので、三瀬診療所での実習はどんなものか緊張しながら初日を迎えた。診療所という言葉のイメージから、かってに昔ながらの少し古いこじんまりとした建物を想像していた。が、来てみるととても新しくキレイで開放的なところだった。待合室も広く床暖房で、もちろんバリアフリーだった。習慣でトイレもすぐにチェックしたが、こちらも広く使いやすいものだった。さらに、スタッフの方々は優しく、親切で、明るい声と笑顔で緊張はすぐにほぐれた。さらにさらに、診療所には歯科もあり、バスの送迎まであった。自分の実家は山間の町で、人口も三瀬村と変わらないものだと思う。なので、ついつい自分の実家と比べてしまい、三瀬村はすごい!羨ましい!!と思ってしまった。
 まずは白濱先生の診療を見学させて頂きつつ、血圧を測定したり、新患さんの診察を担当させてもらった。病院では急性期の患者さんや、手術目的の患者さんの治療ばかりであったのに対し、診療所では慢性期のフォローが主である。高血圧や糖尿病、高脂血症と長年付き合っていかなくてはならない病気ばかりだ。そして、その治療は主に運動療法や食事療法、生活習慣の改善と薬物療法である。薬は飲み忘れることもあるし、おいしいものはついつい食べ過ぎてしまうし、寒い日は外で運動したくはなくなる・・・。そんな気持ちも十分わかるのだが、医療者としては、薬はきちんと飲んで頂きたいし、食事にも気をつけて頂きたい。どのように患者さんに説明し、納得してもらい、実行していただけるのか?食事療法は知っていても、いざ説明するとなると具体的な話ができない・・・。ということに気がつく。病院では高血圧食、糖尿病食を電子カルテのオーダー画面で選択するだけでよかったのだが・・・。生活習慣病のフォローをしていくというのは、こういうことなのだ、と思った。一人一人にあった、実際の生活でできることをアドバイスしていくことが大切なのだと感じた。
 今回の実習で一番印象的だったことは、やはり雪だった。下では雨でも峠を上ってみると、“そこは雪国だった”。ノーマルの車でソロソロ登って行った。一度は進めなくなり車を路駐し迎えに来て頂いた事もあった。ある吹雪の日は診療所に泊まったし、雪かきも体験できたし、車が凍結した道で本当に滑るという怖い体験もした。そんな初めての体験がいっぱいだった。この雪で思ったことは、診療所があり、そこに常に白濱先生がいらっしゃることの素晴らしさだった。もし通ってくる医者であったら、雪の日だから行けないので診療所はお休みということになるだろう。雪の日でも病気は休みにはならないし、患者さんも来られる。白濱先生が三瀬に住んでいらっしゃることはそれだけで安心につながると思う。また、雪が原因で雪かきによる腰痛、筋肉痛、ケガなどの病気も増えた。そういう病気を診られるのも地域医療と大学病院との違いだと思う。
 往診にも行った。往診ではその方が実際にどのよう生活しているか分かる。いつもどの部屋で過ごされ、ベッドなのか、それともコタツにいることが多いのか、一人なのか家族の方がおられるのかなど。また診療所でお会いするのとは違ってくる。今回、一番気になったのは(自分が好きなのもあり、ついつい目がいってしまったのだが)ネコを飼われているお宅が多いことだった。ネコはかわいくて癒されるし大切な家族の一員だろう。でも、ネコが原因の病気も・・・。そこで、白濱先生からの宿題(興味のあることについてレポートするというもの)のテーマを「ネコから伝染する病気」とし、調べてみた。すると、思っていた以上にいろいろな病気があり、また免疫力が低下している場合は命に関わるものも多かった。それは、適度な距離をとってネコと生活していれば問題のないことだが、密接すぎる(自分のお箸でネコに食べさせたり・・)と感染する可能性が高い。往診で実際に家におじゃましたことで、そういったことに気づかせてもらい、もう一度人畜感染症について勉強する機会となった。
 診療所で1ヶ月過ごすと、感染症の流行も肌で感じることができた。多かったのは嘔吐下痢症、カゼだった。一人感染すると、家族内に広がり、また学校で友達にうつりと拡がっていく。嘔吐下痢の感染力は強く、また潜伏期も2日程度であり、お孫さんが来られた翌日に、おじいさんが来られるということもあった。嘔吐下痢症などはcommon diseaseなのだが、大学病院では入院が主なのであまり診る機会はなく、これも大学病院と診療所との違いであり、今回の研修で学べたことだった。
 シルバーケア・三瀬にも見学に行く機会を頂いた。診療所もキレイだが、シルバーケアも窓は大きく明るいキレイな建物だった(暗いところにいると気分も暗くなるので、建物は明るくキレイであるにこしたことはない!と病院見学行くたび思う)。ケアマネージャーさんのお話も伺えたし、半日ではあるがデイケアも見学させていただけた。スタッフの方々は優しく親切で、デイに来られている方の中には診療所にお会いした方の顔もあった。一緒にお正月用の箸置きを作ったのだが、気付くと自分が楽しんでせっせと作ってしまっていた・・・。
 また、「高齢者サービス調整会議」にも出席させて頂いた。診療所、シルバーケア、自宅での様子など多方面からの情報より、現在の状態、状況について話し合い、その方にとって今必用なこと、今後の予想される問題などを相談していく。診療所ではいつもと変わらないようであってもデイケア、自宅では今までとは少し違う・・・などの情報を得ることができるし、病気の状態から自宅で注意してもらいたいことも伝えられ、お互いの情報交換が出来る。高齢の方々を地域全体でサポートしていくという体制つくりがなされており、とても勉強になった。
 診療所に来られた98歳の方に「長生きの秘訣を教えてください」とお願いしたら、「クヨクヨ悩まず、人を恨んだり疑ったりしないこと」と話して下された。また、別の方は「今日生きていることに感謝感謝」とおっしゃられていた。お二人とも素敵な笑顔でそう教えて下さった(今回の研修で長生きの秘訣も知ることが出来た!!)。
 三瀬診療所での12月は、1ヶ月と短い期間ではあったが、大学病院では分からないこと、気付かないことを発見することができ、またとても楽しい1ヶ月となった。

上記のようなつららがずっと残るような雪の中、なんどか車が動かせなくなるようなこともありましたが、頑張って研修されました。感心しました。(白浜コメント)