神野小、附属中、致遠館高校、佐賀大学医学部出身、研修医2年目。
研修医1年間では消化器・肝臓・糖尿病、救急、心血管外科、総合診療を3ヶ月ずつ回った。
研修医2年目で精神科2ヶ月後の三瀬診療所の研修となった。
全てのジャンルに興味がある。研修は楽しい。3年目は何となく大学病院での入局を考えているが、何科になっても良いと考えており絞れていない。
<外来>
研修の大部分がこの外来。白浜先生がいる時は、電子カルテの使い方を見て盗むことから始まり、患者さんの血圧を測り、聞き覚えのない薬があれば調べ、時間があればミニトークに小花を咲かせ、時々心臓の音を聞かせて貰い、先生からの質問に詰まる。新患さんの風邪や膀胱炎の処方に悩み、先生に相談する。先生のいない時は、ビッグな症例が来ないことを祈りつつ、常連さんの軽い診察と処方を出し、風邪と膀胱炎でない新患さんは先生に電話する。結局いつでも白浜先生に頼っているところは研修医2年目だとしても寂しいところだが大目に見て貰い、それでも、初めての一人で留守番ならぬ始めての一人で診療に人知れずうきうきしていたのも事実。こんな機会はない。街医者を夢見ていたこともあったから。採血、点滴、レントゲン設定、沈査と顕微鏡設定、事務…ここの看護師さんは何でもやさん。医大との違いを実感。悩む症例は白浜先生に相談するかでまた悩む。そんな時は看護師さんに背中を押されて電話する。研修医制度のなかった時代の先輩方は、1年目から一人診療をしていたのだから、偉大でもあり恐くもある。
外来の力は確かについたと思う。風邪や膀胱炎を繰り返し診た。繰り返すことで自信や経験につながった。一般的な処方にたくさん触れることが出来た。後は、これに情報知識を足しながら、自分流にアレンジしていけばいいのだと考える。風邪も人により風邪により幅広く表現型がある。風邪の奥深さを知った。
外来の醍醐味を味わった。大学では忙しくて、仕事に追い回されることが多く、精神科以外は、患者さんと向き合う時間を取れるのは、生気が何とか残った週の週末の顔出しの時が多かった。外来はまず、患者さんと向き合うことから始まる。患者さんの笑顔や、ありがとうは、私の大切なエネルギー源。1月に何回も来る患者さんも多く、治ったと言われればますます嬉しい。経過を短間隔で診るから、フィードバック出来るのも良かった。患者さんのニーズに答えてバスの時間も気にするし、急ぎ具合や待っている人数によって診療は長くなったり短くなったりする。短くなっても次がある。次があるで繰り返されるのは良くないだろうが、短い診療が患者さんのニーズになった時、そういうことも必要と思った。
なかなか治らない蜂窩織炎、元担当患者さんとの再会、溶連菌か風邪か、不定愁訴、膀胱内腫瘍疑いの対応、患者さんの作る花(トルコ桔梗)の話になり、HPで写真を見ながら、花のプロの苦労話(お金は必要だが、最後はお客さんや花屋さんの喜ぶ姿)を聞くことなど、記憶に残った外来があった。
<往診>
毎週水曜は1-3人の往診がある。スピードの上がらないミニワゴンで、三瀬の坂道をのんびり走る。この時期、三瀬の田んぼや山の緑が映え、紫陽花の青が映え、山の涼しい風がすーっと入り、気持ちよかった。重い往診バックにはいろいろ入っているのだろうが、使うのは血圧計と聴診器。その下に点滴がちらっと見える。体が動かなくなったり、頭が回らなくなったりする喪失感の中で、一生懸命生活している高齢者がいる。患者さんというより住民といった感じだった。開放的な自宅が多く、一人で寝ていることもあったが、ほとんどの場合、家族が傍でうろうろしており、どんなに社会がサポートしても、やはり高齢者の自宅での生活には家族が最も欠かせないものであると思った。
おじいちゃん、おばあちゃんと呼ぶのは失礼かもしれないが、物覚えの良いおばあちゃん、半身不随でゴミ燃やしのおじいちゃん、寝たきりでありがとうと泣くおばあちゃんなど、記憶に残る往診があった。長く生きるとキャラクターも出てくる。彼らのような存在を大切にしたいとも思うし、是非とも彼らのように愛される年寄りになりたいとも思った。
<シルバーケア>
火曜の午前中は近くのケアセンターに仕事を見せてもらいに行く。高齢者をサポートしようという地域の方のやる気を見せてもらった。立場の弱い高齢者に対しても、施設運営のための朝礼や申し送り、指針の設定がきちんとされていた。高齢者の日常に介護保険が組み込まれており、実動している実感を得た。1人の高齢者に対し、それぞれの立場からの関わり、それぞれの立場で悩み、時代の変化に合わせての工夫があった。
ヘルパーさん、ケースワーカーさん、デイケア職員さんの小話を少しずつ聞き、職種と実務を知る良い経験となった。
<検診、BCG>
保育園の検診や、BCG接種の見学も新鮮だった。手技や検診の様子も勉強になったが、「ゆりかごから墓場まで」を思った。保育園や保健所も、住民を支える有志の一人と感じ、住民を地域で見ているという印象がここでもあった。
<連絡会議>
月に1回、医師、歯科医師、看護師、シルバーケア職員など、医療福祉に携わるメンバーが集まって、患者さんについて報告と問題点を話し合う。立場は違うが、目指すものはよりよい医療や福祉。医療者側から言えば、患者さんの普段の生活や治療後の生活を知ることが出来、また診療中の患者さんの状況を報告する。大きい社会になると、そこにある医療機関や福祉施設が増えて、こんなに情報を共有することは出来ないだろうと思う。小さい社会ならでは出来ることだと思う。しかし、自分がこれから働く場所がどんな大きさの社会にあっても、情報を集め、発信しようとすることは大切だと思った。
<課題レポート>
研修前に数枚、毎日1枚、週に1枚、研修後に数枚のレポートがある。正直、これさえなければ楽しいだけの毎日なのにと思うこともあったが、ゆったりした時間を有効に使う、教育熱心ならではだと思う。毎日を振り返り、フィードバックする繰り返しが、研修をより充実したものにした。小さい疑問に対するフットワークの軽さも、勉強になった。情報機器の発達したこの時代、三瀬の山の中でも、インターネットがあり、検索サイト、論文、メーリングリストなど、上手く活用すれば、やる気さえあれば情報は手に入る。勉強も出来る。研修期間が終わった時も、日々の勉強を大切にしたいと思った。
<全体を通して>
ハワイの学生さん訪問、中学生の職場見学もあり、それもまた教育への姿勢を感じ、日常への良い刺激となった。昼ご飯は、看護師さんと弁当を食べたり、白浜先生とお勧めの店に行ったり、一人で三瀬を堪能したりした。空いた時間には、「頑張れ女子学生、女性医師」「かぜを読む!」以外にもちょこちょこつまみ読みをした。診療所には読み物系の本が沢山あり、もっと時間は欲しくても退屈はしなかった。初めての学会発表用のスライド作成やその他準備もちょこちょこさせてもらった。市内から診療所まで約30分かかるが、道中では音楽を聴いたり、英会話を聞いたりと、普段しない形でゆとりの時間となった。大学の傍に住んでいるので、普段通勤時間はないも同然だが、通勤時間があるのも良いと思った。
1ヶ月の診療所勤務は早かった。診療所の看護師さんや先生には日常だろうが、私にはたくさんの刺激となった。研修制度が導入されて良かったと思うし、地域診療のある佐賀大学のプログラムを選べたのも良かったし、三瀬の診療所に来れて良かったと思う。これからの研修や、研修後の診療に生かしていきたいと考える。