三瀬診療所実習を終えて(2008226日〜28日)佐賀大学医学部医学科4 年 江戸都
1日目
午前:シルバーケア三瀬でのデイケアに参加
午後:研修医の先生の診察の見学
2日目
午前:白浜先生、研修医の先生の診察の見学、さがんバス2号で山側をのんびり一周、診療所・白浜先生のご紹介のビデオ閲覧
午後:往診に同行
3日目
午前:白浜先生の診察の見学、さがんバス1号でダム側をのんびりもう一周
午後:隣のスマイルセンターでの小児健診の見学

今回、4年生で病棟実習前にも関わらず三瀬診療所見学をさせていただいたのは、昨夏、日本家庭医療学会主催の「医学生.研修医のための夏期セミナー」に参加した際、私の在籍するすぐ近くの三瀬村で、地域医療の最前線で活躍されている先生がおられるという話を聞いたのがきっかけでした。
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一日目:佐賀市のデイケアの風景と同様の、明るい職員の方の利用者さんへの優しさ・心遣いを感じた時間でした。施設は増設工事中で、施設全体は見られませんでした。朝8:30過ぎより自宅への迎えのマイクロバスに乗せて頂きました。
旧佐賀市内のデイと比べて、利用される利用者さんは少数に感じましたが、これは施設の規模にもよるものだろうと考えました。利用者さん宅は立派な家が多かったのですが、ここからご本人はどのような気持ちで来られているのでしょうか。男性も数名来られていましたが、利用者同士のつながりはどう形成されているのでしょうか。
利用する曜日が各々ある程度決まっているので、長く通っておられればお互いの名前もどこに住んでいるかも知っているかと思っていました。しかし、お話を聞いてみるとそうではないという事でした。それはそれで、利用者さん各人が楽しんでその場にいるという事ができていればいいのですが、家族の状況もあって、本当は来たくないのだけれども送り出されている。来た先で気兼ねなく会話する相手を見つけられない(職員も含めて)。そんな状態がずっと続くと、その方の心の負担は増していきます。
自宅から趣味のものを持ってきていただくとか、スペースに適度に敷居を設けてみるとか(座っている多くの人間からの視線を感じすぎないように)、お金をかけずに一人一人のデイでの一日を、あと少し楽しいものにする工夫をすることも可能なのではと思いました。
 
午後は、研修医の先生の診察室に入れてもらいました。ここに研修2年目で来られる先生は、やはり皆地域医療に関心をもたれている方が多いのでしょうか。学生実習.初期研修を終え、自分の進む方向性を具体的に考えておられるようでした。身近な先輩に色々とお話を伺えて良い刺激を受けました。
白浜先生ご不在の診療中、大学病院へコンサルトをとる必要のあった患者さんが来られ、研修医の先生はお一人で大学病院のほうへ電話されてその場で患者さんの要望に応えていた。また、処方箋だけで来られた別の患者さんの持参された外用薬が、ここの処方薬局では置いておらず、薬局へ問い合わせて患者さんとも相談し、取り寄せてもらうことになりました。研修医になると、こうしたことも一人でこなしていかなければならないのだという事を見せていただきました。
 
二日目:白浜先生は、往診先の患者さんご本人の話だけでなく、ご家族のこと、親戚、近所の人たちのことまで事細かに尋ねていた。その姿は「他所様」「お医者様」ではなくて、近所のセンセイでした。その家に入り込んでいるようでした。全く敬語なしの関係。患者さんやご家族は、何でも素直に話してくれるわけではないかもしれませんが、確かにそこに信頼関係が築かれていました。
白浜先生は私達(OSCE終了後すぐの、病棟実習前の学生)に血圧の測り方を真剣に教えてくださり、OSCEマニュアルどおりでは駄目だということを体験させていただけました。マンシェットを加圧した状態でマニュアルどおりにゆっくり水銀柱を下げていったのでは、検者は音を聞き取りやすいかもしれないが、ずっと締め付けられる患者さんにとっては苦痛で、数値も実際より上がってしまうという事。何よりいつもと違うので不安感を与えてしまうという事。なるべく型どおりの硬い挨拶は抜きにして、白浜先生との会話(問診?)に集中してもらえるように測ろうとしていましたが、こういう所で患者さんに不快な思いをさせてしまっていたのかと、反省する出来事でした。
また、発熱(37℃台)・咽頭通で来られた壮年の男性に対し、溶レン菌とインフルエンザの検査をするかについて、白浜先生は
「インフルエンザはこの村では現在流行していない。この患者さんの所見からはインフルエンザの可能性が低い。インフルエンザの検査代は400円かかる」等、この地域の状況や薬価・医療経済などを複合的に考えての検査、処方を指導されていました。大学の講義で、「医療費の問題が膨らむこれからは、薬価なども考えての診療が求められる」と聞いたことはあったのですが、実際にそれを実践している現場を初めて見せていただけた貴重な経験でした。
医師それぞれに自分のスタンダード、判断基準はあるけれど、それをどのように確立していくのか。また外から何(情報)をどう取り入れて消化していき、自分なりの手引きを作っていくのか。これから病棟実習、卒後研修、その先の毎日の中で、先輩方や同輩達にアドバイスをもらいながら組み立てていきたいと思います。
 
三日目:前日の膀胱炎の患者さんの鏡検について、白浜先生は私の質問にその場で真剣に応じてくださいました。ありがたかったです。勉強する姿勢を身につけなければと思いました。
午後見学させていただいた乳幼児健診では、保健師さんが大活躍していました。なぜ保健師さんというのは皆いかにも頼りになりそうな人たちが多いのでしょうか。
いろいろなタイプのお母さん達が来ていました。私より明らかに年下のお母さんもいて、子育てには本当に多くの人のバックアップが必要だと感じました。その多くの人の中に、身近な存在として家庭医の存在を入れていて欲しいと思いました。
 
三日間を通して:診療所では、看護師さんや他のスタッフの方と共に作る職場環境の大切さに気付くことがありました。頻繁な人事異動の有無や、患者さん当の出入りの激しさ、一日のスピード感・リズム他、様々な場所でこれから働くことになるかと思いますが、自分(医師)の立ち位置と他に与える影響、皆で作っていく良い仕事環境とは、すべて患者さんのためにあるということ。三瀬診療所は建物自体が新しいという以前に、トイレがきれいで、どこも掃除が行き届いていて、それは朝の時間や診療の合間に看護師さん達が掃除してくれているのでした。汚く雑然とした大学の医局とは大違いでした。一人一人のこうした心配りが大事なのだと思いました。

 往診の時、糸山さんが診療かばんを持ってらしたのですが、あれはなかなか重いものです。男性が持って下さると有難いのでは…と勝手に思ったりしました。

三日間の短い期間でしたが、診療所の白浜先生他皆様、シルバーケア三瀬の皆さん、三瀬のさがんバスドライバーさんや村の皆さんには本当に親切に色々とお話を頂き、感謝しております。ありがとうございました。6年生でまた選択実習でお邪魔する時まで、しっかり勉強しなおしてきたいと思います。その時はまた、よろしくお願いいたします。江戸
 

 追伸:小中学生への講習の機会などありましたら、是非佐賀大学「蘇生の会」をお呼びください。若者目線の楽しい寸劇で、佐賀大学他学部や地域の企業で講習会をしております。