ケース2)肺結核症(感染症患者への対応)

 新規コメント集(1998.9.26追加)

中村 千賀子さん(東京医科歯科大学教養部 人間科学教育担当)のコメント

 1)主治医は3年前にどのように対応すれば良かったのでしょうか?
 3年前に、職場の上司の他に家族の力(理解と説得)も必要だったのではないで
しょうか。疾病の事実と危険度について教え、知らせていくことと、職場の、患者
への特別な優遇措置も必要でしょう。しかし、実際、小さな職場であれば、生産性
のほうが社員の命より優先されてしまうでしょう。食うために何でもしなければな
らない社会であればことさらですね。
 せめて職場での健康診断がその際に緊急で実施され、保健婦による健康教育がさ
れていたらと考えてしまいます。
 プライバシーの問題もあり、本人の病気のことを周りに言いふらすわけには行か
ないし、本人が大切にしているキー・パーソンをつかめたらなにかできそうな気も
しますが。いやー!難しい、、しかし、考えていく例としては、とても意味ある症
例だと思いました。

3)その人から感染を受ける被感染者の人権はどのように守られるのでしょう。
 自己責任でしょうね。自分の体は自分が守るが原則でしょう。そのための保健教
育であるべきですし。とはいっても、うまく行かないのはわかっていますが。

 4)職場検診で結核検診はやっていますが、要精密と書いてあっても放置して再検
査に行かなければ、感染は予防できないのではないでしょうか?
 検診後は、最低半年はほっておかれる職場の検診の怖さを感じます、小学校であ
れば、みてもらった?という問いかけがあるのですよね。やはり大人は大人として
自分の体を守れること、また、守る姿勢をもてて初めて社会人ですね、税金を払う
のと同様、健康教育で大人をつくることが重要なのだと思いますね。


吉田素文さん(九州大学医学部付属統合教育研究実習センター)のコメント

本来、3年前の診療継続忌避と今回の新たな患者さんとの間に絶対的な因果関係がある
と断定することはできないと思いますが、仮に私が主治医であったとしても、3年前に
くだんの方の診療継続忌避行動をなんとかくい止められなかったであろうかと考えると
思います。以下、自分が主治医であったと仮定して、現実にはいろんな理由で理想的な
行動がとれないことをあえて無視して、自分が主治医だったとして「とれたらいいな」
という行動を書いてみます。

本文には明確に書かれていませんが、このお話しには以下の条件があったのではないか
と思っています。
(A)本人がそれ以上の受診をしたくない理由・気分があった。
(B)ご家族にも職場にも積極的に受診を勧められない事情があった。

(B)が(A)に大きく影響していたかも知れませんが、(A)が別の要因を含むかな
り独立したものであった可能性もあります。最終的には(A)が「受診しない」という
診療継続忌避行動を作ったものと思います。
 

さて、3年前の主治医の状況ですが、介入するチャンスは以下の時点です。
(1)専門病院あての紹介状を渡した時点
(2)3ヶ月後に本人に再度受診を勧めた時点
(3)職場の上司に連絡した時点
(4)その他の随時

とりあえず、(1)〜(3)に限って言えば、まず、(1)のときにその患者さんは、
そのときに程なく受診するに違いないと思わせるそぶりだったのであれば、紹介状をお
渡しする時点で「この方は紹介先に行かないのではないか」と気づくことは不可能に近
いと思います。そうではなくて、少しでも行かないようなそぶり、あるいは職場状況を
聞いてみて、休みづらそうな雰囲気がありそうなら、「このままほおっておいた場合の
危険性」についてお話しすると思います。
それでも(2)の時点のように診療継続忌避行動を続けられるのであれば、まず患者さ
んの許可を得て、ご家族や職場の方とお話しすることになると思います。そこでこのと
きに一つ気になるのは、職場の対応です。もともとの発見が職場の健康診断だったので
あり、その目的は職場の衛生環境保持なのですから、先生が疑問として挙げておられる
ように、いかに本人が「受診しない」と主張しているからといって患者さんの人権を保
全したとしても、職場の関係者全員の健康問題が残ります。このあたりは、職場の上司
を説得する材料になったのではないだろうかと考えますが、万が一、このとき職場が抜
き差しならない状態であり、そのことを全員が充分に理解して、家族までも巻き込むよ
うな危険を覚悟のうえで、くだんの方と同じ職場で働くことに納得しておられたのであ
れば、3年後の感染も納得ずくのことであり、医師としての本来の仕事はミニマムにな
ると思います。こういう状況が少しうかがえるので上記の(B)を挙げました。

ただし、ご家族にしても職場の上司にしても、このとき私とのラポールがとれなければ
、適切な判断を下すだけの情報を得ることができなかったと思います。
で、このような状況下で、私が患者さん、ご家族、職場の方とのラポールをとることが
不可能であると判断した場合・・・私は外来の看護婦さんのなかで、こういったネゴシ
エーションに長けている人に頼んでいました。これでもダメな場合は普通はあきらめる
のですが、先生がお書きになっている「結核担当の保健婦」の存在を知ってしまったの
で、もしわかっていれば、この方の力を借りて再トライすると思います。

1)〜4)のご疑問へのコメント
さて、本人も家族も職場も納得ずくという状況でも、職員の関係者を介した結核の拡大
についての倫理的課題が残りますが、通常そこまで医師が社会的責任を問われるか?・

・・最近多剤耐性結核菌のことが話題になってきてますから、世論が動いて法改正にな
れば、問われる時代が来るかも知れませんね。
このように法改正で「感染性が強いと判断される結核の患者さん=強制入院」が国民の
義務にならない限り、かかる状況を回避できたかも知れない方策は医療関係者の「腕」
だと思います。患者さん、その関係者とのラポールを形成する技能、最終目標のために
他のスタッフや関係者全員を含めたチームを形成する能力が主治医にも看護婦、地域の
保険スタッフにも要求されると思います。もちろん限界はありますが、能力向上の努力
は必要であると考えます。


宮坂道夫さん(新潟大学法医学教室、生命倫理学専攻)のコメント

 お許しいただいたので、法医学(4年生)の授業の一コマで学生に紹介し、「この
主治医にアドバイスをしてあげてください」という簡単なレポートを書いてもらいま
した。大人数の講義で、詳しいディスカッションはできませんでした。また他に話さ
なければならない内容もあり、あまり時間がとれず、感染症に関連した法律の話など
もほとんどできませんでした。したがって、かなり素朴な感想が多く見受けられまし
た。人数が多いので、とりあえずここでは結果をごく簡単に要約してしまいます。
 かれらの意見の概要は、

1)主治医の説得不足だった(あるいはこの点が不明である)との批判的意見(これ
が最も多かった)。
2)ただし、それは「重大な」義務違反ではない(このような、「同情的」な態度が
非常に目立ちました)。

というものでした。患者の義務違反を指摘する意見もありましたが、かなり少数でし
た(ご興味があれば、もっと詳しくご紹介します)。

 私のコメントとしては、実際の法的問題を離れて、応用倫理学的な分析をさせてい
ただきたいと思います。

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1. 倫理学的状況

 感染力が強く、重篤な症状を伴う肺結核であるが、現時点で患者には自覚症状がな
く、入院をしなければという「切迫感」がない(医療行動科学のHealth Belief Mode
lでは、こういう場合には健康改善に結びつく行動はとられないのが一般的だとされ
ている)。このため、患者の自律性に任せておけば、第三者が患者から結核菌を感染
させられるという、他者危害が生じる可能性がある。
 倫理的側面についての状況は、このように要約することができる。
 

2. 患者の義務違反

a)治療義務
 治療を受けずにいることは「愚行権」の行使として、あるいは信念やライフスタイ
ルを選択する自由として、本人のみに危害が及ぶ場合に限って正当化される(エホバ
の証人の輸血拒否など。あるいはもっと一般的な例として、「医者嫌い」で癌の治療
を受けずに死ぬことを厭わぬ人々)。しかしこの場合、感染力が比較的強い感染症な
ので、自覚症状がないことや仕事が忙しいなどを理由に治療を途絶することは、「愚
行権」の範囲外である。

b)他者への感染の回避義務
 自律性に任せて感染症治療を進めてゆく場合には、他者への感染の回避義務の主体
者は患者であり、医療者は患者の義務遂行に必要な情報や助言をする立場に置かれる
。この場合、医師がどの程度の説明、説得をしたかが不明確だが、医師が他人への感
染を広げるおそれがあることも説明していたなら、患者の義務違反ということになる
と思う。また結果からすれば、患者が説得に応じず、入院しないことによって他の従
業員が感染したのだから、患者の勤め先の事業主は患者から損害を被ったと見ること
もできる。このことについて患者が事業主に負うべき責任もあるだろう。

 問題はこれら義務不履行が、入院を強制執行されるほどのものか、法的に罰せられ
るほどのものか、さらには、職場を解雇されるなどの社内的な懲罰を受けるほどのも
のか、という点にある(この点については保健所の方からのコメントによれば、現行
法でもカバーされておらず、また審議中の法案でもあまり論点になっていないように
読みとれる)。私の個人的意見としては、患者の権利と義務を、法律の中で対比的に
定義すべき(患者は強制入院から免れる権利があるが、それに応じて他者危害を回避
する義務があるという論理構造)だという気がする。その上で、終始「任意性」を確
保しながらも、入院をしなければ順次犯罪性を増して、最終的には強制執行されうる
という段階的な処置が望ましいのではないかと思う。

3. 主治医の義務違反

a)患者への情報提供と入院説得の義務
 病状の説明はなされた。ただし、文面からは、自覚されない症状の深刻さ、そして
何より、他人に感染を及ぼす危険性が説明されたかが不明である。
(学生の意見で圧倒的に多かったのは、この点の指摘だった)
 ただし、Health Belief Modelがあくまで「モデル」であるように、「他人に感染
を及ぼす危険性が説明された」ことが、「患者が入院する可能性」を高めることはあ
っても、「必ず入院した」という結果を保証はしない。したがって、この義務違反が
あったとしても、ある程度酌量の余地がある。
(入院の勧めもなされた上、他の医療機関に対する、より正確な診断と、専門的治療
の照会もなされた等、医師は一般慣行からいって、ある程度積極的に行動していた。
この点を学生も評価していた)

b)政府機関(保健所)に対する患者情報の届け出の義務
 他者危害の可能性の強い、感染力が強い感染症の場合には、政府機関(すなわち保
健所)が患者情報を管理することが正当化される(個々の届け出という行為に対する
患者の承諾は不要:患者には届け出そのものに対する不服を申し立てる権利はない)
。結核患者の場合も、医師が患者の行動の管理を政府当局に委ねるという意味の行為
として、医師は保健所に患者情報を届け出る義務があるが、これは果たされた。保健
所も、法律の範囲内で行動しているようで、この点に関する義務違反はないように思
われる。

c)、患者の社会的利益を損なわない義務
 この事例では、この点が一番不明なところ。主治医は患者に入院をさせるための「
効果的な手段」として、上司に感染している事実を告げたように読みとれるが、患者
情報を職場の上司に提供する際には(解雇、差別等、本人の不利益につながる可能性
があるため)、患者本人の承諾が必要。職場は政府機関のような権限を持たされては
ならない。この場合、「職場に対して患者の利益を保護する」というスタンスで見る
のが妥当と思う。

4. 結論

(ミクロ:事例について)
 第三者に感染をもたらしたことに関しては、基本的には患者の義務違反だったが、
医師の説得内容(これがとにかく不明確なので判定できない)によっては、医師の側
の説明義務違反の可能性もある。ただし、患者にせよ医師にせよ、可罰性は低い。
 また、職場上司に感染している事実を告げたことに関しては、医師は患者の社会的
利益を損なわない義務を無自覚に侵した可能性がある。患者の公衆衛生学的な管理は
一個の医師でも上司でもなく、保健所がするべきである。ただしこれについても、患
者がこれによって(解雇など)被害を被っていないのであれば、可罰性は低い。

(マクロ:法的状況について)
 現在行われている法案の審議が、ハンセン病他の感染者差別の歴史を反省するもの
になることは歴史の必然だろう。しかし、間違っていたのは感染症を「感染者(個人
)」から「社会」を守ろうという構図で見てきたことで、単に感染者の自由権を保証
するだけでは不十分である。今後は科学的事実に即して感染症対策を「感染者個人」
と「非感染者個人」の間のinteractionと捉え、感染者個人には治療を、非感染者に
は予防を、という至極当然の利益保護を与えるという観点に立つべきである。

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以上です。理解の足りないところが多々あるかと思います。電子メール/インターネ
ットでの議論なので、あくまで暫定的なコメントとしてご理解下さい。



原靖士さん(静岡県 賀茂村 安良里診療所、医師)のコメント  
 

(症例2)結核の症例について考えてみました。

・医学的適応
 確定診断(喀痰の塗沫培養など)はついていないが、画像診断でも結核が強
 く疑われる。本人の治療・社会的害の予防から考えて、この時点で結核と診
 断して対応すべきと思われる(3年前の時点)。
 空洞がある場合、入院治療が理想であるが、本人の事情などにより、外来治
 療の選択肢があると思われる。実際、入院治療と外来治療での成績の差が小
 さくなってきている。(治療失敗の大きな原因が不規則な内服や治療中断で
 あることを考えれば、入院が理想ではあるが)

・患者の意向
 判断能力はあると思われる。最終決定も事業者でなく、本人が選択すべき。
 「入院」以外の選択肢のない説明であったため、仕事の都合・症状のないこ
 とを理由に治療を受けなかったと思われる。もし、入院以外の選択肢も含め
 て説明があった場合はどうであっただろうか?

・QOL
 患者にとっては仕事を続けながら治療できることがよいQOLと思われる。

・周囲の状況
 実際に生じたように、周囲への感染源となることが予測され、そのために結
 核予防法が制定されている。はじめの結核の診断の時点(3年前)で治療し
 ていたほうが、公共の利益としても社会的コストでも有意義。
 そのための、「結核の診断」としての保健所への届け出をしていてもよかっ
 たのでは?そこまでは公共の利益と照らしあわせて「守秘義務」には反しな
 いと思われる。
 そこから先の受診勧奨・入院勧奨・従業禁止(この場合はあたらないが)・
 入所命令は、保健所・行政と相談しながら、行政側から働きかけてもらうの
 がよいのではないだろうか?(産業医がいればその立場からだが)
 守秘義務としては、事業者に直接、診療所医師から入院を勧めたのはいかが
 であろうか?いずれ判明するにしても、上記のルートで間接的に事業者に働
 きかけたほうがよいのではないか?

 ということで、4つの疑問に対しては
>1)主治医は3年前にどのように対応すれば良かったのでしょうか?
 まずは「結核と診断」して、保健所へ届け出。本人が入院治療を拒否し、
命令入所も不可能なら、保健所(保健婦)をも通じて外来治療でも治療を勧
め、化学療法に導入すべきであったと思われます。
 それでも拒否した場合は、行政と協力しながら、受診勧奨を継続すべきで
あったと思われます。

>2)そもそも結核予防法では強制入院の措置はとれないとのことでしたが、
>その場合第3者への感染防御はどのようになされるのでしょう。
 上記のように、本人の事情により、外来治療で行われるケースもある。

>3)今国会で、感染症予防・医療法というものが審議中ですが、患者の人権を守るのは
>当然として、その人から感染を受ける被感染者の人権はどのように守られるのでしょう
>か?たとえばエイズの人がどれくらい自分の病気をセックスパートナーに話し、性交渉
>による感染を防いでくれるでしょうか?
 セックスするなら相手がエイズに感染しているかどうかまで考えて、個人の
責任で自分を守るべき。それがいやならしないこと。
 感染者に対しては、自分が感染源になること、パートナーに不利益を生じる
可能性があることを教育し続けるまでしかできないでしょう。それを受けて、
どう行動するかは、感染者自身の責任であり、パートナー自身の責任であると
思います。
 ただ、結核とエイズが違うのは、結核は通常の生活をしていても周囲に感染
するのに対し、エイズは性行為以外での感染が希であるということです。また、
(多剤耐性結核菌の問題もありますが)治療が確立されているかいなかの点も
違います。
 そこを理解して性行為をどのように行動していくかは、各個人の責任による
ものと思われます。無知による感染を防ぐためにも、非感染者に対してもエイ
ズに対しての啓蒙が必要と思われます。(小中学生から?)

>4)職場検診で結核検診はあっていますが、要精密と書いてあっても放置して再検査に
>行かなければ、感染は予防できないのではないでしょうか?
 その通りです。しかし、事業者には「安全配慮義務」がありますから、職場
で結核感染の危険があるのに放置して職場内感染を生じさせるのは、それに反
すると思われます。(努力義務ですが)
 労働安全衛生法では、「事業者は(健康診断の)有所見者の健康診断の結果
について、医師又は歯科医師(注:産業医に限らない)の意見を聴かなければ
ならない」とあります。その上で事業者は「必要がある時は(中略)適切な就
業上の措置を講じなければならない」。それについて「労働大臣は事業者に対
し必要な指導を行うことができる」とあります。これは、産業医でない医師で
も該当することです。(ただし、これで事業者に対する罰則規定はないんです
よねえ、確か・・・)
 法律文面上からすれば、10人以下の小規模事業所でも、健康診断を実施し
た機関と連携して、地域産業保健センターを通じて事業所へ働きかけるのでは
ないかと思いますが・・・
 すくなくとも、結核に対しては、現在も新規発生が希ではない感染症ですか
ら、結核健康診断での有所見者が受診した場合には、そのままに放置しない努
力が全ての医師には求められると思います。少なくとも、健康診断を実施した
以上、どこかの医師の意見を聴かなければならないのですから。
 そこまでもしない(検診しても放置の場合)は確かに感染予防はできないで
しょう。
 
(追加コメント)
  正面きっての検討とは別に、この症例で思い出した症例です。

1)既に結核と診断されていて、治療中断中、職場検診で結核疑いとなった例
 この方は、隣の県(県境の島でした)の病院で結核と診断され、その県の保
健所に届け出され、そこで治療していました。しかし、治療中断し、その後就
職した私の島の職場検診で結核が発見されました。診断したはいいものの、既
に届けですみなので、公費の治療は、そちらの病院(隣の島なのですが)でな
いと出ないそうです。私のほうの県の保健所に相談しても「困った」ばかりで
す。結局本人が上司に相談して、通院で隣の島に通ったと記憶しています。
 県割り・届け出行政の枠組みのために苦労した症例です。でも、最後まで
ちゃんと治療したのかしらん?

2)外国から出稼ぎの人の結核
 その島に、インドネシアから出稼ぎに来ていた人に、空洞のある活動性結
核がみつかりました。Gafky6号でしたか?狭い寮に出稼ぎに来た人がたくさ
ん住んでいるので、感染することが予測されました。日本でなら公費で治療
が受けられることを勧めましたが、事業者が、治療中にそこに住んで他の人
に感染したのでは困るといい、本人も、仕事ができないなら日本にいても仕
方がないので帰国するといいます。困りましたが、簡単な英語の所見を書い
て持たせて、帰国後受診するように勧めましたが、実際に受診したかは分か
りません。仕事させながらでも治療した方がよかったのか。今でも悩むとこ
ろです。

3)日本で治療した日系ブラジル人のブラジル在住の家族
 ブラジルから出稼ぎに来ていた女性に検診で結核が見つかりました。本人
は承諾して、すぐに入院治療し、半年後職場復帰しました。一緒に来ていた
夫は感染しておらず、周囲への感染もありませんでした。日本でだけの事象
をみればうまくいった例なのですが・・・。
 聞けば、彼女の子供たち(小中学生)が、以前からブラジルでゴホゴホ咳
をして、痰も出ているというではありませんか!彼女も来日してすぐの検診
でしたし、ブラジルで家族内感染していたのはほぼ間違いないでしょう。
 こどもも結核である可能性が高いから、ブラジルで診断を受けるように勧
めましたが、その後どうなりましたことやら・・・?

 まだまだ、悩ましい結核です。