佐賀県神埼郡三瀬村国民保険診療所、大分県姫島村国保診療所実習レポート
筑波大学医学専門学群6年 荒尾 敏弘
実習期間:平成10年6月1日〜6月12日
<はじめに>
本学の6年の実習では、『エレクティブ』という期間があり、それは、2週間の実習を自分の希望する場所で行って良いという制度です。その選択の際、偶然に「地域医療に対して興味のある学生がいるなら、筑波大学総合医コースのレジデントの木澤先生が実習先を紹介してくださる」という話を聞き、是非ということで木澤先生に話を伺いに行ったところ、昨年、木村先輩が三瀬村国保診療所に行ったということを教えて頂き、自分も行ってみたいと思い紹介して頂きました。理由は「地域医療の現場を実際に見てみたい」ということからでした。
何故、地域医療に対して興味を持ったのかいえば、親しい先輩の影響が大きかったと思います。その先輩は「将来は島で医者をやる」という話をしていて、それがそういう道もあるということを知ったきっかけでした。そして、僕も6年生になり、自分の進路を考える上でも非常に楽しみにしていた実習でした。
<診療所での実習:6/1、3、5、11>
【外来見学】先生の傍らに立ち、血圧の測定と、診療の見学。
何よりも診療所の雰囲気が今まで実習してきた病院とは違っていました。これは、病院の規模、患者さんの数、といった違いは当然ありますが、他にも、患者さんも経過が長い方が多いことや、村という地域の特性から、医師をはじめとする診療所のスタッフの皆さんと患者がお互い顔見知りであること、白浜先生が雰囲気作りには気を遣っておられるといったこともその理由だろうなと思いました。よく、「大きな病院に行くと、行っただけで病気になったような気がする」といわれますが(僕も、実習先の病院の外来では、慌ただしいというか重いというか、何とも言いがたい雰囲気を感じていました)、医療においても他のサービス業同様に、雰囲気に対する気配りは重要なんだなと思います。あと僕が個人的にいいなと思ったのは、診察室に大きな窓があって開放的だったことです。窓からの景色は、大きく見えるのは歯科診療所の建物と、あまりいいものではない(すみません)ですが、外からの光が入るか入らないかで、気分は随分違うのではないかと思います。ただ、建物の間にある庭(?)に花か何かがあるなりして、もう少しきれいならもっといいのになと思いました(勝手なことを言ってすみません)。
血圧の測定は、最初、久しぶりだったこともあってあまり自信が無かった(最初の患者さんの血圧を上が210と測定してしまったのは恥ずかしかったです)のですが回数をこなすうちに自信がつきました。「血圧が高いとみんな気にするから、高かったときは低めの数字を言って、後で教えて」という先生の言葉には、そういう気配りも必要なのかと感心させられました。
【往診見学】
1BOXの車に乗って村内をめぐりながらの往診、こんな狭い道をよく入っていけるなあと思いながら車に乗っていました。「こんにちはー」と言いながらそのまま家の中に入っていくのには少々驚きましたが、家の方も慣れたものといった感じで、双方自然な日常の一こまといった流れが印象的でした。いつが診察日で、いつがデイケアの日といったことが記入してあるカードを渡すなど、「この日は何々だから来てください」と伝えるだけになりがちなところを、そういった配慮までしているのはすばらしいなと思います。
【住民検診】6/5 問診と血圧測定のブースに参加。
住民検診という言葉は知っていても、今まで実際に見たことはなく今回初めて参加する機会を頂きました。朝の会場の設営でもう少しお手伝いできることがあれば良かったのですが皆さんばたばたとしていて、手を出したらかえって邪魔になりそうな雰囲気で、お役に立てず申し訳ないといった感じでした。血圧の測定に関しては、診療所の方で大分慣れてましたから臆することも無かったです、何か、仕事してるな、という感じで良かったです。
【保育所検診】6/5 検診の見学
幼児というのは1年違えば、立ち振る舞いも随分変わるというのが、印象的でした。
【送迎バスの乗車】6/11
診療所より、村内の循環バスに乗せて頂きましたが、この日乗ってこられた方は二人だけでした。乗る人が少ないとやはり寂しい気がします。しかし、公共交通機関はほとんどない村で、自分で車等を運転できない人にとっては、時間の制限はあるけれど便利なサービスだと思います。
【中学校検診】6/11
剣道部の生徒の体格がぜんぜん違うことが印象的でした。三瀬村では剣道が盛んだそうで、僕も剣道を一応やって、3段も持ってるんですけどいるんですけど、ここでは恐れ多くて「剣道をやっている」とは口が裂けても言えないかなと思いました。「剣道は習ったことがある」ならいいかもしれませんが・・・。
<シルバーケア三瀬でのデイケアに参加:6/4>
―― シルバーケア三瀬は社会福祉法人 敬愛会を経営母体とし平成5年4月より事業を開始しホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイ、在宅介護支援センター、特別養護老人ホームのサービスを提供している。入所定員は長期50名、短期20名。――
朝の送迎に帯同するところから始まり、皆さんが揃ったところで検温と血圧測定。午前中はレクレーションのゲーム、それから昼食の配膳。午後は工作とおやつの配膳という内容でした。とにかく忙しかったというのが感想です。次から次とやることがあるという感じで、その上雰囲気作りもしなくてはいけない、例えばゲーム1つにしても利用者の皆さんが結構勝ち負けにこだわったりして、下手をすると雰囲気が悪くなりそうな感じでした、そこをそうならない様な気配りが必要、と多くの人を相手にする苦労を感じることができました。これを毎日のようにやっているスタッフの皆さんはさぞ大変だろうなと思います。こういったスタッフの努力のお陰でしょう、利用者の方は皆さんお元気で、各々がとてもリラックスして過ごしているように思えました。
僕自身にとっても充実した一日だったと思います、工作の終わりのときにスタッフの方から「1人多いと違うね、今日は全員に作品が行き渡ったからね。昨日はそこまで行きこなさなかった。」と言われたときは、少しはお役に立てたかなと嬉しく思いました。
建物はきれいで、広々としており、浴室もここで入浴できれば気持ちいいだろうなと思わせるすばらしいものでした。僕はデイケア部門にしか参加していませんが、スタッフの方々も熱心で、ハード面と、ソフト面の整った素敵な施設でした。
<佐賀医科大学総合診療部の実習に参加:6/2>
自分の大学のカリキュラムと、他大学のカリキュラムを比べることができたのは、実習の内容は大学によって色々あると知ることができ、いい経験になりました。佐賀医科大の総合診療部は、科全体として学生を教育しようという雰囲気が感じられました。筑波大学も学生教育には配慮している方だとは思うのですが、科全体として学生用のカリキュラムをしっかり組んでやっていたところはほとんど無かった様に思います。
1日の内容は、午前中は外来実習、午後からカンファレンス、インタビュートレ−ニング、スクリーニングとしての身体所見の取り方のレクチャー。
僕が個人的に有り難かったのは身体所見の取り方のレクチャーでした。筑波大学では4年生のときに「診察法演習」という講義(各科の先生が、それぞれの分野での所見の取り方を教えてくださる)が、計10回行われ、最後に試問というカリキュラムがあるのですが、それ以降はレクチャーとして所見の取り方を教わる機会はありませんでした。4年のころは、まだベッドサイドに行ったこともなく、学生としては今一つぴんと来なくて、テストがあるからやっているといったところもなきにしもあらずで、そして5年になり、ベッドサイドに行くようになってその重要さが分かり、先生方からも「きちんと所見をとるように」と言われ(しかし、きちんと教えてくださる先生は少ない)、各自本を読むなりして、「こんな感じでいいのかな」と思いつつ自分なりの所見の取り方を行なっているというふうでした。そういった状態のところに、まとめとしてのレクチャーを聞けてとても勉強になりました。
インタビュートレーニングは自分も4年生のときに経験しましたが、これもまた6年生のときに行なうというのは、また違った感想を持てるのではないかと思います。4年のときの自分と6年のときの自分を比べるのも面白いのではないでしょうか。
佐賀医科大学までの道のり、他大学の実習に参加するなどと言う経験は今まで無く、できない学生の自分としては、正直いってかなり緊張していました。しかし終わってみればとても楽しい一日となりました。こういう機会を与えてくださった、白浜先生はもちろん小泉先生に感謝します。
<姫島村国保診療所での実習:6/8、9、10>
―――姫島村は瀬戸内海の西端、大分県国東半島の北6キロメートルの海上に位置する周囲17キロメートル、面積6.7平方キロメートル、人口約3000人、高齢化率23.8%の大分県唯一の一島一村の離島で、沿岸漁業と車海老養殖を二大産業とする典型的な漁村である。姫島村国民保険診療所は村内唯一の医療機関で、標榜診療科は内科、外科、小児科、整形外科、歯科。19床のベッドを有し、2階部分には在宅介護支援センター、隣接してデイサービス部門、居住部門、短期居住部門を備えた「高齢者生活福祉センター姫寿苑」が設けられている。医師は所長の松本先生をはじめ伊達先生、嶋崎先生の3名、歯科医師1名、保健婦1名、看護婦11名、栄養士1名、歯科技工士1名、歯科衛生士3名、介護福祉士1名、ホームヘルパー8名の体制となっている。救急医療に対しては、島の対岸より35km離れた東国東地域広域国保総合病院を母病院として24時間体制で対応している。フェリーの運航しているときは良いが、夜間は漁船を借り上げて対岸まで移送し、対岸の港に待機している救急車に医師または看護婦が同乗して母病院へ移送する体制を取っている―――
【訪問看護】6/8
フェリー乗り場まで松本先生と看護婦の江原(字が違ってたらすみません)さんが、わざわざ出迎えに来てくださっていて、そのまま車に乗って訪問看護へと向かいましたが島だけあって、道の狭さと複雑さは三瀬村以上でした。村の方は自分から血圧を測ってもらいに来たりととても和やかな雰囲気でした。これは松本先生の持つ雰囲気によるところも大きいように思います。あまり関係ありませんが、先生が自分のことを先方に紹介して下さるとき、中津の出身と言ってすぐ通じるところはさすがに大分県の村だなと実感しました。
【外来見学】6/8
姫島村の診療所は僕が思っていたよりずっと大きく、少々驚きました。入院患者さんも6名おられ、外来も外科と内科で別れて行われていました。人口と離島という立地条件から、このような体制を整えておかないとニーズに応えきれないのだろうなと思いました。松本先生のお話では、最近では「小児科の専門の先生がほしい」という風に要求も高いものになってきているそうで、地域医療とはそのあたりのバランスをどうとっていくのかが難しいということが少し分かりました。
【姫寿苑でのデイケア】6/9
―――高齢者生活福祉センター姫寿苑は平成3年5月に診療所に隣接して建設された。この施設はデイサービス部門、居住部門、短期居住部門を備え、多目的サービスが提供できる複合施設となっている。診療所と渡り廊下で連結しているところから、医師が常時利用者や施設職員と接して、デイサービスにおける健康チェックでの異常者の診察や入浴可否の診断、居住部門入所者の診察や寮母達に対して、介護、投薬指示指導を行なうなど、医療サイドが全ての利用者の健康状態を常に把握している。居住部門については、食事の提供を行なうとともに生活全般にわたる指導、援助と介護支援を24時間体制で行なうなど特別擁護老人ホームを持たない姫島村において「ミニ特養」的な運営を行なっている。――
入浴サービス利用者の送迎は、雨が降っていたり、道が狭くて車が近づけないお宅ではストレッチャーを持って運んだりとなかなかの重労働でした。デイケアの仕事とは実に大変だなとつくづくおもいました。利用してご覧なさいというのは簡単ですけど、実はそれを支える人たちの大変な尽力があってこそだということを体験できたのはいい経験になったと思います。
寝たきり状態の利用者だったのですが、到着時点での健康チェックで発熱が認められ、その際すぐに診療所で診察を受けることができました、これは診療所と連携している強みだなと思いました。すばらしい体制だと思います。診療所も福祉センターもどちらも村営であるということで連携がしやすいのかなと思いますが、逆に、村営であるが故に職員の移動があるというのはこういう施設に関してはデメリットだろうなとも思いました。
【住民検診】 6/10
松本先生に会場を一通り案内して頂いた、姫島村の検診では区切りの年齢の方に対してはエコーの検査も行なっているそうだ。地域によって検診項目に少し差があるということは知らなかった。その後、問診と血圧測定を行なった。
<佐賀医科大での「行動科学」の講義に参加:6/12>
医療倫理に関する講義が学年全体に対して行われているのは、筑波大学とは違うなと思いました。自分より下の学年ではどうなのか知りませんが、僕の場合、そのような講義は選択のものしかありませんでした。「行動科学」の講義にはお手伝いの形で参加させて頂いたので教室の中を回る機会があったのですが、僕は面白いと思っていた講義も、後ろの方ではぜんぜん聞かずに雑誌を読んでる学生もいたりして、同じ医師を目指す人の中でもこういう話を面白いと思う人もいればそうでない人もいて色々なんだなと感じました。
<おわりに>
僕にとってこの2週間という期間は、今までの学生生活を振り返ってみても、最も印象深い期間になりました。白浜先生や松本先生をはじめとする多くの方々とふれあう機会を持つことができ自分の将来像に対するイメージができたように思います。本当に皆さんお世話になりました。心の底よりお礼を申し上げます。これからは、皆さんの御恩に報いるべく頑張っていきたいと思います。本当にありがとうございました。
レポートと言うよりは単なる感想文になってしまいました。どうもすみません。