1999年度臨床倫理討論

症例1)
4才の女児のALLについての両親の治療拒否について

発熱、食欲低下、顔色不良で近医受診。血液検査で著明な貧血を
認め総合病院小児科に紹介入院。ALLと診断され、輸血と抗生物
質投与で症状改善した。主治医が両親に病名告知と抗癌剤を主と
した治療方針の説明をしたところ、宗教上の理由から両親が治療
を拒否し、感染が少し落ち着いたところで退院した。
 ちなみにALLは子どもに多い白血病ですが、非常に抗癌剤がき
き、70-80%が寛解(完全によくなること)に至るといわれてい
ます。
 この治療についてはあの抗癌剤に厳しい近藤誠先生も効果があ
ると述べられていました。
(問い)この事例の主治医であったらどのようなことをするか。
両親が拒否しているのでこれ以上仕方どうしようないという考え
もあるでしょうが、この子どもの生きる権利を守る意味で何かで
きないでしょうか。アメリカでは病院長名で裁判に訴えるとかす
るのかもしれせんが。



この症例へのコメント集


仁平雅子さん (神戸市立看護大学・看護教官)
 
(症例)4才の女児のALLについての両親の治療拒否について

宗教上問題になる事柄はなんなのでしょうか。輸血はすでにされてい
るようですからそれではないようですね。
医療者がかかわること自体が問題だという場合には困ってしまいます
が、それ以外の場合には、まだお役御免というわけにはいかないよう
に思います。ALLについてはまったく知らないので申し訳ないのです
が、考えられる治療(対症療法も含めて)のうち受け入れられる可能
性のあるものを探してみなければならないでしょう。

できることが見つかっても、知りうる最良の治療ではない、というと
ころで医師が悩むことは考えられることです。その時には、この病気
に抗がん剤はよく効くんだけどなー、ということだけでなく、この子
供のQOLを焦点に捉えなおしていくことが大切と思われます。
とくに重要なことは、子供にとって両親は法的な親権者という以上に
生きた環境として絶対的な意味があるということでしょう。子供のQOL
を考慮するとき、両親のQOLを検討してみることは意味のありそうなこ
とです。
両親はどんな思いで治療を拒否したのでしょうか。信仰のためとはいえ、
元気のない子供のために医療制度のサポートを利用できないことは、
現在の社会では大きなハンディになるはずです。そのような状況にな
ってしまったことをどのように捉えて、どうしていこうとしているの
か気になります。

医師の立場に戻ります。
医師は、抗がん剤の治療を拒否するということが子供の生命を縮める
可能性が強いことを両親に正しく伝わるように努め、両親が自分の決
定に責任を持つことになることを確認して、あとは任せるしかないと
思います。その時、意思決定には本来的にリスクが伴うことを忘れず
に、この両親が将来するかもしれない後悔まで含めて大きく支えてい
くような姿勢が最終的に倫理的な姿勢と言えるのではないかと思いま
す。

以上です。



吉田 素文さん 
(九州大学医学部附属統合教育研究実習センター、外科医)

 これまで私は、診療方針と宗教上の行動規定に食い違いが起こったケースを、輸血
、終末期の薬剤投与をめぐって、主治医として2件経験しました。
 この症例については、私は小児も血液も法律も専門ではないので、直線的なお答え
はできませんが、先生ご指摘の「患者本人の生きる権利」について、私自身、倫理上
の問題を感じますので、自分が主治医であるとしたら、何らかの行動をとろうとする
と思います。その行動計画について少し考えてみました。

<目的>抗癌剤治療により、患児のALLを原因とする短期予後を回避する
<背景>
4歳のALLの患児である。生物学的にはALLの標準的な治療の適応がある。標準的な治
療による寛解率(白浜先生のご説明は少しあいまいなのでは?)は70-80%である。
両親が宗教上の理由で治療を拒否している。
<行動指針と考え方>
『子どもの「生」は両親が信じている宗教の教義(両親にとっての「生」の基盤?)
と矛盾する』ので、子どもが助かるには、「何らかの形で両親の宗教上の行動基準が
失効すること」という前提条件が必要であると考えます。私は、この前提条件の成立
には、「両親の行動基準の変容」と「親権の失効」のふた通りの方略があると考えます。
それぞれについて、もう少し考えてみます。
1)「両親の行動基準の変容」
 両親あるいは周囲の方々へのカウンセリングなど、一定のコミュニケーションに基
づく「懐柔」を行っていく方針です。もちろん、この際、主治医だけとの一対一の対
応だけでなく、医療チーム(この場合は法律家も含めて拡大チームを作る必要もある
か?)内で最終目的を明確にして、あらゆる人的資源を駆使して「懐柔計画」を立て
ることになると思います。
 しかし、この場合、仮に抗癌剤治療を受けて、完全緩解が長く続く場合、子どもは
両親が信じている宗教と自分の存在の矛盾を抱えたまま成長していくという事態も起
こり得ますので、事後のフォローアップも必要になると思います。私の事後フォロー
アップの経験は、せいぜい亡くなった患者さんのお参りに行くくらいですが、小児科
の先生方には、より現実的なことが実際に起こっているのではないでしょうか?
 また、病院に相談に来ないなど、懐柔策に対する拒否行動が起こっては、このやり
方はそこでストップしますので、慎重な対応が必要かと思います。

2)「親権の失効」
 法的強制力の執行、つまり、オウム真理教の出家信者の子ども達を強制救出(信者
から見れば「拉致」?)したときのような、国家強制力を発動する法律が適用できる
のかどうかを検討することになります。

以上、具体的ではありませんが、とりあえず私見を述べました。



谷田憲俊さん (兵庫医科大学第4内科、内科医師)

私の意見を記します。
 同様の事例は、英米での解決法があり、私もそれを支持するものです。第一に考慮
すべきは、家族がどこまで理解して決断を下したかです。宗教上の理由ということで
すが、医学的・科学的に理解したうえで宗教を理由にしたか、迷信的信条から治療を
拒否したかです。もし、後者であるなら、疑いもなく幼児虐待です。医療従事者は、
幼児虐待を阻止しなければなりません。日本では法的義務はありませんが、倫理的・
道徳的義務があります。
 次に、前者の理由ならば、状況はやや複雑化します。エホバの証人の輸血拒否を思
い浮かべるでしょう。しかし、それとは状況が異なります。エホバの輸血拒否の状況
は多くの場合、医師の勧めの方がEBMに基づいておりません。例えば、医科研事件で
は肝臓がんの手術に輸血をしていますが、その場合に輸血が適切かどうか医科学的に
議論のあるところです。私は、患者にとって何の利益もないと思います。「大ちゃん
事件」も、輸血なしに骨折の手術ができました(転院先も決まっていました)。それ
を聖マリアンナ医大の医師や看護婦がいたずらに輸血の説得を試みて、結果的には治
療の邪魔をしたのです(この件は、また聞ぎです)。したがって、今回の話題と輸血
拒否と問題は異なることを理解する必要があります。白血病への化学療法はEBMに基
づいています。この場合は、(治療法の選択の問題ではなく)幼児に自己決定ができ
るかどうかの問題です。日本では、4歳の幼児に自己決定権を認めていません。親権
者にその権利があります。しかし、親の決定が社会一般の認めるところでないなら、
英米のように社会からの強制があってしかるべきと思います。(具体的に日本でどう
できるかは知りません。幼児虐待に準じるのも一法と思いますが。)



瀬田 剛史さん(京都大学医学部附属病院総合診療部、研修医)

今現在、血液内科で研修中で、日々化学療法三昧です。
よって、皆さん、病名、予後など御存じの方ばかりですので、ある意味同じ癌治療で
も、他の癌とくらべると白血病は治療がしやすいです。逆に効かないととても治療が
しにくい事も事実です。ですから、大人でも難しいですので子供になると、なおさら
ではないでしょうか。宗教的な背景が有ることは別にして、親にしてみれば、大変辛
い治療を幼い、可愛い子供に受けさせるなんて、なんて残酷なことかと思うものでは
ないでしょうか。IVH管理なども加わるでしょうし、痛々しい毎日に耐えられないの
ではないでしょうか。小児病棟に入院している親の姿を見ると、ある意味ゴールが見
えにくい現実、毎日をくり返すので、現実逃避も仕方ないのではないかと思います。
 しかし、子供にも健康に生きて成長する権利は有ると思います。その機会を親の思
想一つで失うなんてと思います。成人ではない患者の決定権は誰に有るかと考えたら
親です。いくら現実を正確に見つめられない子供に難しい病気の事を話しても理解で
きないでしょうが、「ともだちとこれからいっぱい遊んで元気でいたいか」と、子供
に尋ねたら、きっと遊びたいと言うでしょう。その一言を子供の意志と捕らえてもい
いのではないでしょうか(少し乱暴な意見ですが)。
 医療サイドとしては、客観的にALLの説明を行い、最終決定は親にしてもらうこと
になるでしょうが、子供の人生であると言うことを親に理解してもらうことが、説明
以上の説明になると思います。その説明がfirst stepになるのではないでしょうか。

すぐさま書いた文のため、もし文的に変な表現が有りましたら、御訂正願います。



藤林武史(佐賀県精神保健福祉センター、精神科医)

> (問い)この事例の主治医であったらどのようなことをするか。
> 両親が拒否しているのでこれ以上仕方どうしようないという考え
> もあるでしょうが、この子どもの生きる権利を守る意味で何かで
> きないでしょうか。アメリカでは病院長名で裁判に訴えるとかす
> るのかもしれせんが。

 難しい事例です。当面、精神科医の出る幕はなさそうです。子どもの人権と親の親
権がぶつかっている事例です。
 もしも、子どもが食事を与えらえれず栄養不良の状態でなおかつ肺炎を発症し、そ
れでも親が治療を拒否する場合、そして子どもが瀕死の状態にある場合はどうするで
しょうか?そのような親の対応は、たとえ宗教上の理由があろうとも、広く児童虐待
事例(「保護者に監護させることが不適当である」)に含まれるでしょう。実際、カ
ルト教団に属させられている子どもを児童相談所が保護した例の事件はまだ記憶に新
しいです。死に至る前に、子どもの人権を第一義に考え、児童相談所が保護し公費で
治療を行う。そして、場合によれば、児童相談所長が児童福祉法28条等を根拠に家
庭裁判所に申し立てを行い、親子の分離を法的にはかるという方法が、日本でも可能
です。その場合、まず、親からの十分な監護が行われていない児童を発見した者であ
る病院長や医師が、児童相談所に通告するのが第一歩になります。
 しかし、本事例は白血病です。上記のような強制的な方法を採用するかどうかは、
コンセンサスがえにくいような気もします。ここから先は、私の手には負えません。
どなたか子どもの人権に詳しい弁護士か児童福祉関係者の意見を求めたいところです
。多分国内にもこのような判例はあるでしょう。
 医師・医学生にとって、子どもの人権が親権の名の下に侵害される事例が少なから
ず存在すること、その場合法的に守る方法があることは知っておきたいものです。児
童福祉法第25条「保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると
認める児童を発見した者は、これを福祉事務所又は児童相談所に通告しなければなら
ない」



  小原一朗さん(八鹿病院  内科医)

いつも貴重な症例提示をありがとうございます。
4歳のALLの症例ですが、やはり両親に治る可能性が高く、治療を強く進め
るべきだと思います。
それでも、拒否されるなら、ソーシャルワーカーなどとも連絡の上、十分話し
合いをもって対処する、児童福祉のしかるべき機関に対処をお願いする、相談
するという方法があると思います。
 また宗教上の問題なら、その方面に詳しい方に連絡をして対処を頼むという
方法があると思います。
また他の方法があればご教示下さい。



中尾 久子さん(山口県立大学看護学部、看護教官)
 
**医師ではないけれど、主治医のお手伝いはできると思うので、
考えたことをお返事します。

どうにか、やはり説得したいので、親の話をよく聞き、かつ説明する
ことが一番だと思います。退院後も定期的に通院するように説明し
病気の進展にあわせて治療の有効性を理解してもらうしかできない
かもしれません。本当は良い状態の時に治療をすることが望ましい
けれど、その時に症状が強くなくて治療を拒否していても、いろいろな
症状がでてきたり、生活上で何か出来事が起こると、考え直す可能性
がないとはいえないと思います。
甘い考えかも知れませんが、どのような宗教も人を幸福にする科学
だと考えると、お子さんを苦しめることが本当に良いことなのか・・・一緒
に考えるという姿勢で話し合っていくことが必要ではないかと思います。
また倫理委員会があれば、そこでの検討課題となると思いますが。
この問題は医師だけでなく、カウンセラーや看護婦、MSWなど多くの人
の中で、その家族と適切な相談ができる機会を設定できれば良いと思
います。 

それでも宗教上の理由でかたくなに治療を拒否をされる場合は、強制
的・法的に措置できるのでしょうか? エホバの証人のように医療従事
者が患者の命を救うために輸血をしたことで訴訟を起こされ敗訴する
(でしたよね)ということからして、その医療機関の中だけの解決では難し
そうです。国立小児病院や小児医療センターのような関連施設と連絡をと
って先行例を調べてみるというところからも解決の糸口が見つかるかも
知れません。 



松尾智子さん(九州大学法学部大学院、元看護婦)

 お返事が遅くなってすみません。エホバの証人の問題は、ちょっと最近フォローし
ていなかったので、回答に窮します。判例を見てみたのですが、子供の輸血に関する
判決は見つかりませんでした。本人の場合は、判例によりますと、ほぼ本人の意思を
受け入れることが望ましいという傾向にあるようです。ただ、それが子供の場合には
、親の宗教的な信条で子供の生命が救われないということは、簡単には認められない
という感がします。
 ここでは、子供自身がどのように考えているかをまず考慮する必要があるのではな
いでしょうか。ここには子供の年齢が問題となりますが。模試子供が、親の意思に反
対しているなら、子供自身は、別に生き延びる、治療を受ける権利があると思います。
 その子供自身が、宗教的確信から輸血を拒否する場合も、何歳からそのような意思
が一人前のものとして認められるのかは簡単には言えないのではないかという気がし
ます。それとも、子供なりの考えを尊重すべきなのか。子供を取り巻く者は、親のみ
ならず、祖父母や叔父叔母等もいますし、その人たちの意見も聞く必要があるという
気はします。
また、聞くところによると、信者である限り、自分は本心では違っても建て前として
そのような治療を拒否せざるを得ないという場合もあるようです。自分や、自分の身
近な家族の生命にかかわる問題となると、やはり普段の考え方とは違ってくるという
ことは、誰にでもあることです。信者である当事者や、信者である親の主張をそのま
ま真に受けることは、しない方がよいこともあるようです。
 しかし、エホバの証人の信者たちがいうように、是が非でも治療、延命という医療
のあり方を問い直す意味では、無視できないものもあるかもしれません。ただし、生
きる可能性が明らかに高い場合を除いてはという条件付きでですが。
 子供の生命の問題を親がどこまで決定できるのか、それが宗教的信念からなされた
決定である場合に、どこまでそれを尊重することが望ましいのかは、極めて錯綜した
問題です。治療の可能性にもよるでしょうし。これも、結局は、その場その場で考え
、話し合って行くしかないのではないかという印象を受けました。
 アメリカの議論では、おそらく、明らかに輸血によって治療が可能な場合には、子
供に裁判所の判断で治療をうけさせるということも少なくないような気がします。但
し、これは、確実な資料に基づいているわけではありません。必要ならば、何かさが
してみますが、如何でしょうか。そのときは連絡を頂ければ幸いです。

まとまりがなくすみません。



小泉宏子さん(元保健婦)

大変ご無沙汰致しまして申し訳ありません、何時も熱心な症例を有り難う御座
います、前回の症例も私なりに本を見たりして勉強いたしましたが、何とコメ
ントしたらよいか解らないでおりました、此の度の事例も医者でない今は一人
の市民として患者として思う事ですが、最近の医療の世界で日本でも患者が主
体的に場合によっては選んでいく事と言う記事を読み自分自身の責任の重さと
真剣な判断の必要性を感じているところでしたので、フット思った事を述べさ
せていただきます。
医療は患者の為に在るという事、患者とは、貴方自身であるのですよ!もしく
は貴方が愛する子供(自分で判断が出来ない対象者の場合)の為であることを
真剣に、愛を込めて語りかける、医療者側の心情の大切さ、これまでの医師の
話しかけは、往々にして医者の為なのか医学の為なのか、そこには今目の前に
座って居る患者のハートに食い込まないものがあった様に思うのです、
次ぎは
対象者が理解と判断が出来るようにその人に合わせた説明を充分にする事だと
思います、対象者が自分の判断で決定する為の協力者で在ると思うならばその
真剣さは地球の重さにも匹敵すると思います、単に忙しい外来の中での説明、
治療の合間とか、パンフレット渡しで、出来る事ではないと思います、私は最
近の治療界のことをしっかり知らないので失礼な事を申しあげたのかもしれま
せん、失礼の段お許し下さい、
相手の社会背景、宗教、価値観など、を受け入れながら共に前向きに治療を受
け入れて行けるように、専門家としての材料を提供して行ける心の余裕と時間
がこれからの医療界にはすべてのパートで求められて居ると思います、

相手は弱い人間である事、をどうして良いか、又自分勝手、様々な姿勢の人々
であること、自分(医者、看護婦など)のようで無いこと、を知る事の認識か
らすべては、始まるのだと思います、
一市民、一患者として、思うにはこれからの高齢社会、難病が次々と現れ、ど
うしょうと悩む患者を支え、よりよい生き方をお手伝いする医療であるななば
おのずと、相手の主体性を尊重する此方側の姿勢は決まってくると思います。
今の私は元気ですが、これからは、如何に老齢化とそれに伴う疾病を受け止め
医療を受けながら自分の人生をよりよく終焉に向かって歩き続けるかです。
失礼の段おゆるしくださいませ。
医学教育(人間学をもっと!)  人間に伴う医学を!
白浜先生のご努力感謝いたします。



三浦靖彦さん(航空医学研究センター、内科医)   

今回のケースに関して、以下のように私見を述べさせていただきます。
また、日を改めて、小児の血液疾患を扱っている友人の意見も聞いてみようと思いま
すので、そちらについては、後日連絡いたします。

小児のALLは、非常に寛解率の高い白血病と考えられます。
このような症例に対して、果たして親の意見(宗教的理由)で治療を拒否できるかど
うかが論点だと思います。

1. まず、一般的対応から
 「親に対して十分な説明を行う。(しつこいと思われるほどに)」
疾患の説明、治療法の説明、寛解率についての説明、我が国及び海外での動向につい
てを、親の耳にたこができるほどに、繰り返し説明する必要があります。
 私がまだ医学生であった頃に(つまり15年以上前ですが)書店の医学書コーナーで
「ぼくは白血病です」とか言う題名の海外の患者教育用テキストがあったことに驚い
た記憶があります。当時から海外では、たとえ子供であっても、疾患を知り、治療法
を知り、患者自らが参加して疾患と闘う(共生する)体制ができあがっていたのだと
思います。
特に、親から見ると、「子供に難病であることを知らせるのは可哀想」という意識が
おきがちですが、子供は、意外と素直に現状を受け入れる能力を持っていることを教
えてあげなくてはなりません。

2.それでも拒否する場合
 a.一番簡単なことは、念書をとって、未治療のまま、親の希望通りに子供を退院さ
せることでしょう。日本の場合、ほとんどの医師がこのような対応をとるのであろう
と思います(上記1の説明をどの程度するかは別として)。
 b.しかし、念書をとったからと言って、このような治療可能な疾患患者を、しか
も、本人の意思ではないものを、放置してしまって良いでしょうか? 海外のよう
に、法的な手段を講じてでも、治療してあげたいと思いますが、我が国でも、誰かが
先頭になって、前例を作って行かなくてはならないと思います。また、「宗教上の理
由」というものが、本当にその宗教の教理に反しているのかを確認したいものです
ね。その宗教の識者にも連絡を取り、明らかに教理に反するものであるという確認も
とる必要があると思います。(意外と、親の誤解だったりすることもありますか
ら…。)

今回のケースでなく、患者が成人であっても難しい判断が必要と思いますが、小児と
なれば、なおのこと、慎重に対処すべきと思われます。



横井 徹さん( 倉敷中央病院 内科)

1)宗教上の理由が不明ですので、詳しく親から聞いて把握することが重要か?
2)ALLについての正確な情報を両親に伝え、しかもそれを両親ともが正確
に理解できているかどうかを見極めることも重要?
3)子供の生きる権利、を考えるときに確かに裁判等まで考えれば裁判所から
”治療すべき”という命令?を取りつけたり、児童虐待かどうかについての論争
になってゆくのかもしれませんが、もしもこの場合両親が本当にこの子供を心から
愛しており、その上で宗教上の理由のため治療できないと言っていたとした
ら(どういう状況か僕にはわかりませんが)どうなるでしょう?。
簡単には済まないのではないでしょうか。
治療しなければ必ず命を落とすはずですが、もし本当に子供を愛しているとすれば
だんだん弱ってゆく子供のそばにずっと付き添って気遣いを見せる(治療すること
以外では一生懸命に子供に尽くす?)のでしょうね。
そうすれば、無理やり治療を開始するということは良いことなのかどうか・・。
本人が亡くなったあとで両親がどのように感じるかによって良かったかどうか
が決まると思うのですが結局は”終わって”見ないと誰にもわからないのかも
知れません。
結局本人がこちらが要求するレベルでの価値判断が不可能である場合、
何らかの形で”代理人”が判断せざるを得ないわけでしょうから、基本的には
両親が最終判断するというのが本当のところなのでしょう。
とすれば、両親が医学的な”常識”を十分理解した上で”治療しない”という
選択をした場合、それについて無理に意義を唱えるのは(命がかかっている
とはいえ)難しいかも知れません。ただし、医学的常識を理解していない、と判断さ
れる限り、医師側としては治療を受けるよう説得する方向で話すると思います。

結果的に治療すれば助かる可能性の高い病気であっても、スタッフ側が
親子の関係以上に深く入りこめない(しょせん他人?)以上、医師として
の(治療しないためにみすみす命を失うことに荷担したという自責?の
念)感情は犠牲にしても当事者とその家族の希望を優先させるべきなのかも
知れません(ただし、これには患者本人またはその代理人が今置かれている
状況を正確に把握し、冷静に判断している、という条件が必要だとは思い
ますが)。
何か書いているうちに良くわからなくなってきました。まとまりのない文章で
すみません。



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