臨床倫理の4分割法
 
Medical Indication  
医学的適応  
(Beneficience,Non-malficience:恩恵・無害) 
チェックポイント 
1.診断と予後 
2.治療目標の確認 
3.医学の効用とリスク 
4.無益性(futility) 
Patient Preferences                      
患者の意向  
(Autonomy:自己決定の原則) 
チェックポイント 
1.患者さんの判断能力 
2.インフォームドコンセント 
(コミュニケーションと信頼関係) 
3.治療の拒否 
4.事前の意思表示(Living Will) 
5.代理決定 (代行判断、最善利益)
QOL                       
(Well-Being:幸福追求) 
チェックポイント                   
1.QOLの定義と評価            
(身体、心理、社会、スピリチュアル)      
2.誰がどのような基準で決めるか      
・偏見の危険               
・何が患者にとって最善か         
3.QOLに影響を及ぼす因子 
Contextual Features  
周囲の状況  
(Justice-Utility:公平と効用) 
チェックポイント 
1.家族や利害関係者 
2.守秘義務 
3.経済的側面、公共の利益 
4.施設の方針、診療形態、研究教育 
5.法律、慣習 、宗教 
6.その他 (診療情報開示、医療事故)


この表は
Jonsen AR, Siegler M, Winslade WJ. Clinical Ethics--A practical Approach to Ethical Decisions in Clinical Medicine (3rd ed.).
McGraw-Hill, New York, 1992  (邦訳:大井玄、赤林朗監訳「臨床倫理学:臨床医学における倫理的決定のための
実践的なアプローチ」新興医学出版社1997 )で展開している倫理的な症例検討の考え方をまとめたものです。

Jonsenが主催するワシントン州立大学での倫理セミナーに参加して、そこで用いられていたワークシートを参考
に作成したものです。  この教科書を読んだだけでは今一つつかめなかったものが、このようなワークシート
に記入することによって具体的に症例の問題が広い視野から眺められ、また多職種間の討論などでも討論の枠組
みを作る準備として有用であるという感触を得ています。内容については同じくシントン州立大学での倫理セミ
ナーに参加し、Clinical Ethicsの 翻訳の責任をとられた東京大学の赤林朗先生とも相談しながら作りましたが、
日本の症例を考えながら少しずつ白浜が改定しているところであり、ぜひ皆さん方のこの表に対するご意見
(こういう項目をいれたらどうか)などをお聞かせ下さい。



日本語訳に上記のような表を加えていたところ、本家のClinical Ethicsの4版にも4分割のチェックリストがでてきた。
著者のJonsenに聞いたところ、日本の訳本を参考に原著に反映させたとのこと。こういう形でお役にたって嬉しかった。

Jonsen AR, Siegler M, Winslade WJ. Clinical Ethics--A practical Approach to Ethical Decisions in Clinical Medicine (4th ed.)
McGraw-Hill, New York, 1998.p12より


臨床倫理の4分割表(上記の4分割の日本語訳)
<医学的適応>              
1、患者の医学的な問題点、病歴、診断、予後はどうか?
2、急性の問題か慢性の問題か?重篤か?救急か?回復可能か?
3、治療の目標は?
4、成功の可能性は?
5、治療に失敗した時の対応は?
6、総じて、医学治療と看護ケアでこの患者は恩恵を受け、害を避けられるか?
<患者の意向>
1、患者がどのような治療をしたいと述べたか?
2、患者は利益とリスクについて情報を与えられ、理解し、同意したか?
3、患者の精禅的対応能力、法的判断能力は?判断能力がないという根拠は?
4、事前の意思表示があったか?
5、判断能力がないとしたら、代理決定は誰が?適切な基準を用いているか?
6、患者は治療に協力しようとしないのかできないのか?もしそうならなぜ?
7、総じて、倫理的法的に許される限り患者の選ぶ権利が尊重されているか?
<QOL>
1、治療した場合としなかった場合の患者がもとの生活にもどる可能性は?
2、備見を持った評価者が患者のQOLにバイアスをかけてみることはないか?
3、治療が続けば、患者がどのような身体的、精禅的、社会的不利益を被るか?
4、患者の現在や将来の状態は、患者が耐えがたいと判断するようなものか?
5、治療を中止する考えやその理由づけはあるのか?
6、患者を楽にする緩和的ケアの予定は?
<周囲の状況>
1、治療の決定に影響を与える家族の問題があるか?
2、治療の決定に影響を与える医療提供者(医師看譲婦)側の問題があるか?
3、財政的、経済的な問題があるか?
4、宗教的、文化的な問題があるか?
5、守秘義務を破る正当性があるか?
6、資涯の不足の問題があるか?
7、治療決定の法的な意味あいは?
8、臨床研究や教育の問題があるか?
9、医療提供者や施設間の利益上の葛藤があるか?


白浜雅司
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三瀬村国民健康保険診療所
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