<事例3>
58歳女性。吐血により入院。上部消化管内視鏡検査で十二指腸潰瘍が認められたが、その後のCT、MRI検査で末期膵臓癌を合併していたことが明らかになった。肝臓への転移もあり、手術はせずに化学療法と疼痛緩和のモルヒネの投与が始まった。患者本人にはガンであることは告げられず、十二指腸潰瘍と告げられていた。
この患者さんは、子どもさんが病棟実習をしている学生の同級生であり、家族説明等にはその方も参加されていたようで、学生の間で噂となっていた。電子カルテは担当患者以外のカルテも見ることが出来るので、担当していなくてもカルテを見ていた学生や、担当していた学生から話を聞いた学生もいたようである。
ある日担当の学生は、患者さんから「先生も子どもも、何も言わないが、私はもう末期癌で長くないのでしょう。」「あなたたちはみんな知っていてひそひそ話しているのでしょう」と怒ったように言われた。


グループ 1
<医学適応> 
末期膵癌、肝転移 
手術不能、化学療法とモルヒネで除痛 

十二指腸潰瘍で入院

<患者の選好> 
判断能力あるも告知されず 
(うわさによりガンと気付く)
<QOL> 
告知されていないが、ガンだと気付き不安 
まわりでうわさになっていることでの精神的苦痛 
告知をうけづに満足する最期を迎えられるか?
<周囲の状況> 
家族は告知を拒否? 
医学生の間でうわさに=守秘義務違反?
対応:
学生への情報管理の指導
精神的ケア


グループ 2
<医学適応> 
十二指腸潰瘍、末期膵臓癌 
化学療法、疼痛管理のメリットデメリット 
予後は? 
告知はまだ
<患者の選好> 
判断能力あり 
告知をのぞむかどうか 
どうしても自分は長くないと感じるのか 
末期癌とわかったらどうしたいか?
<QOL> 
予後を知りたいか? 
告知すべきか? 
学生の噂は苦痛にならないか? 
化学療法の副作用
<周囲の状況> 
家族の思い 
学生の噂
対応:
噂に対する不安、怒りの対処
癌告知をするか
医療者への不信の緩和
学生に守秘義務の指導


グループ3
<医学適応> 
末期膵臓癌、肝転移あり→化学療法、疼痛緩和 
根治は不可能だったのか? 
化学療法は効果があるのか?
<患者の選好> 
事前に癌の告知について患者は希望していたのか?
<QOL> 
告知されていないから、自分の治療方針を選べない 
告知されないことによる不安、不信 
プライバシーが侵害されていて、家族が嫌な思いをしている。(家族のQOL)
<周囲の状況> 
主治医:告知をすべきかの判断が適切に行えたか? 
病院:電子カルテの管理は適切か? 
学生:担当患者以外のカルテを見るのは倫理的に問題ではないのか? 
家族:告知されていた。なぜ患者への告知に反対したのか?
 対応:
その場で学生が告知してはならない。
学生は担当医にすぐ本人の告知希望を知らせること。
担当医、患者の家族で話し合って、どのように告知するか決定する。
電子カルテの管理について見直す。
学生にも医療スタッフの一人として守秘義務の徹底。


グループ 4
<医学適応> 
末期膵臓癌、肝臓への転移 
化学療法と疼痛緩和のモルヒネ投与
<患者の選好> 
判断能力はあるが、告知はされていない 
治療は希望するか?(それは告知後しかできない?)
<QOL> 
病気による苦痛 
治療による苦痛 
噂による精神的苦痛 
 
<周囲の状況> 
末期癌と言うことが担当医師からでなく漏れている 
子どもは病気の事を聞いても答えないが、子どもと同級の学生の間で噂となっている
 対応:
告知をして不安を取り除く
あやまる


臨床倫理の討論にもどる