<事例2>
 学外実習をしていた私は、ある日院長に連れられて往診先へ向かいました。
 患者さんは前日の採血結果からBUN92、Cre6.2 、Alb 2.3と腎不全や栄養不良、貧血などを合併し非常に悪い全身状態でした。家族から三時半に来るように言われており、お宅に到着した時間もちょうどそれくらいだったと思います。家には患者のほか誰もおらず(時間を指定してきたのに!)外は雪が降り積もっているというのに、暖房も電気もついていない状態でした。
 患者さんは薄い布団一枚にくるまって震えていました。処置としては点滴ぐらいしかできず、すぐに入院の了承を取りつけたかったのですが、
 ご本人は家族に迷惑がかかるからと拒否され、ご家族は不在の状態。病院に戻ってから診察の合間に数回の電話をかけ、ようやく夕方につながりましたが、家族の返答は「もう10年も面倒を見たのだから」というものでした。


グループ1
<医学適応> 
腎不全、栄養不良、貧血で全身状態が悪い 
入院の必要性認めたが、家族不在で点滴のみ
<患者の選好> 
家族に迷惑をかけたくないと入院拒否
<QOL> 
栄養不良 
室内環境不良 
家族は不在気味
<周囲の状況> 
家族は介護にうんざり「もう10年も面倒見たのだから」 
同居者は?患者さんとの関係は? 
病院との距離は?介護保険は?ヘルパーさんは?


グループ2
<医学適応> 
腎不全、栄養不良、貧血 
入院
<患者の選好> 
家族に迷惑をかけたくない 
本人は心から入院をのぞんでいないのか
<QOL> 
在宅だが、独居老人で冬も暖房や電気がついていない。 
本人はこの環境をどう考えているのか?
<周囲の状況> 
経済状況 
家族構成 
介護保険等のシステムの理解
対応:
本人、家族の状況を聞く(経済状況やお互いどう思っているか等)
医療だけに無理に引っ張っていかないこと


グループ3
<医学適応> 
入院加療と予後 
在宅での全身状態の改善 
在宅での予後 
治療の目標 
虐待の除外診断、福祉の担当者へ
<患者の選好> 
「家族に迷惑をかけたくない」ために治療拒否 
患者本人の希望 
患者の判断能力 
(本心を出してもらうには心理面のケアの必要?) 
 
<QOL> 
在宅でのQOLの高さ 
在宅を望む理由 
どれくらい自立できているのか
<周囲の状況> 
家族の理解と協力 
治療に関しての希望が不明 
経済状況、保険 
家庭環境 
患者・家族との話し合い 
これまでの受診歴? 
病院との距離 
透析ができる病院との距離 
緊急入院のできる施設があるか
対応:
患者本人がどうしてほしいのかを詳しく聞く(希望とその理由)
患者、家族に治療の余地があることを説明する話し合いの場を設ける


グループ4
<医学適応> 
腎不全、栄養不良、貧血に対する点滴 
医者は入院が必要と判断
<患者の選好> 
入院したくない 
家族に迷惑をかけたくない 
本心はわからない 
患者の判断能力あり
<QOL> 
10年間自宅で療養 
食事をとれているのか? 
暖房も電気もついていない 
家族関係は?
<周囲の状況> 
診察時に家族は不在 
家族は患者の健康状態に無関心 
経済的な状況は?
 対応:
家族との話し合い
介護保険?


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