ケース7)学生としてどう対応したらいいか困った指導教官の例
 精神科の外来にて。
主治医は、患者さんが退出されるや否や「ねぇ、変な人でしょう。」と切り出し、先程の患者さんが如何に奇妙であるかをその方の私生活を交えながら嬉々として(←嬉々としてというのは私の主観ですが。)語り始めた。

 ある内科病棟にて。
 ある御高齢の女性患者さんの病棟処置を終え、病室を出るや否や「あ〜!今の患者さん、コンプライアンスが悪いでしょう。イライラする。」と同意を求められた。



<白浜先生の感想>
 これも、医師自体のQOLの問題かも知れない。自分のイライラを誰かに聞いてもらいたいという誘惑はあると思う。ただそれを学生にしてはいけない。ではどうこの気持ちを処理するか。結構難しい問題だ。



<メールで寄せられたコメント1>
 本当です。学生に対してだけでなく、同じ医師同士で、同僚や後輩、先輩に話してくることが少なくありません。私自身は、言いたくなる気持ちもすごくわかるのですが…やはり、その患者さんの今後に活かせる、または次回似たケースの患者さんのときに活かせるような発展性のある愚痴?にして欲しいと思っています。医者の場合、公私のけじめがつきにくいせいか、職業意識に欠ける言動が目立ちますね。(S先生)
 医師はタフでなければなりませんね、何でも知っていなければなりませんね。そして、色々な人生経験もこなして、枯れていなければ名医になれませんね。未熟で自分自身、発展途上であると、他の人の弱さを許せないのですものね。
 患者が出て行ってすぐに批評をする医師、軽蔑的に患者にてついて学生に説明する医師、皆未熟なのですね。倫理というのは、人間としての生き方を考えるものですから、学生は自分自身の生き方をこうした事例をもとに考え抜く機会をいただくのでしょうね。白浜先生は本当に地道なお仕事を続けておられると心から思います。
 孔子の「30にしてたつ、40にして惑わず、50にして天命を知る、60にして耳したがう、70にして矩をこえず」。医師たちはその年齢よりも若くしてこうしたあり方を実践しなければならない、そんな気がします。(N先生)



<6/8の討議で出された意見>
●学生=医療スタッフの一員…としてとらえると、こういうのも宿命かもしれない。
●自分の気持ちに同意を求めるのではなく、「どうしたらわかってくれるかな?」と今後の発展につながるような問いかけにしていくと良い。
●自分に余裕がないと、まっとうな対応が出来ないこともある。
 →その際に、イライラを抑える力となるのは『職業意識』。
・発散させないとどうにもならない時もあるが、『愚痴』を言う場所と人は選ぶべき。
●医療者が患者に対していてイライラするのは、何らかのサインである。何か鍵が隠されている筈。
⇔また、医師がイライラを感じるときは、患者さんもイライラしている。
●リエゾンの必要性…医師のケアとしてのリエゾン
 →医師のキャパシティも拡がる。
●医師が達観しすぎていては、患者さんは自分の悩みを訴えられない。
 医師が同情しすぎては、問題は解決できない。

my key word … リエゾン医療、『医師は枯れていなければならない』



<メールで寄せられたコメント2>
 医師の方にも余裕はないのかもしれませんが、せめてそれを学生に求めないでほしいです。そうすることで学生も「困った患者さん」としか見ることができないような、狭い視野に囚われてしまう危険性があると思います。(医学生Mさんのコメントより抜粋)


 枯れないほうがいいと言う直感があります。理想は相手の気持ちに近い、自分の昔の気持ちに瞬時になれて、しかもそれにとらわれない状態。
 愚痴を建設的なコメントに変える。「その奇妙に見える行動が、実は患者を支えているんだよね。」とか、「あんな奇妙な行動って我々もやってて、それに支えられてる部分ってありますよね」など。
 コンプライアンスが悪いのにも、いろいろ理由があるだろう。コンプライアンスが悪い→それによって患者の得ているものを考えると言う視点。患者の、こちらから見て都合の悪い行動でも、患者にとっては生きるために必要な行動であると言う視点。(心療内科医Mさん)



 医療者の主観がとりわけ表現されている典型例でしょう。学生さんも先生に対して「先生!そんな考えでよいのですか」と問いただしてみてほしいものです。指導教官の考えがすべて正しいとは限らないでしょう。点数を稼ぐ必要はありません。意見をぶつけ合うことを恐れないでほしい。立場などをあまり考えると、将来立派な医師にはなれませんよ。自分が正直に感じたことをこころの奥にしまわないで、思ったことを正直に表現されたらいかがでしょうか。そうでないと、いつまでたっても、みかけだおしの対応しかできなくなりますよ。 (精神科医S先生のコメント)



<6/15の討議時の意見>
●Mさんの意見にいたく同感。大学病院で実習をするということの一つの限界なのかもしれない。
●S先生のコメントを受けて
瞬時に問い正すのはなかなか難しいが、「困った人でしょう」「コンプライアンスが悪いでしょう」と指導医にぶつけられたら、逆に学生も「何か良い方法はないんでしょうかね?」と尋ね返してみると良いのでは?
前回の討議にもあったが、問いかけることで、患者さんの為にも指導医や学生の為にも前むきな方向へつなげていくことが出来るかもしれない。
学生自身のジレンマも、疑問形というかたちを借りて言語化することで半分は解決される気がする。



<メールで寄せられたコメント3>
 陰性の逆転移を医師が十分にコントロールできない例でしょうが,そのストレスを発散するために学生をダシにしているというところが教育上の問題も含んでいます.
 医師がプロフェッショナルとしてどうすべきかと同時に,臨床教育を含めて教育現場でどう教育のプロフェッショナルとして作用するかも今後厳しく問うていくべきかもしれません.もちろん,その一部(多く?)はしきたり,伝統,文化としてしっかりと医師集団や他の医療者集団をも含めて根付いているので,一朝一夕には変えられない面も多いでしょうが,こういった一つ一つの事例をしっかり検討していくことは非常に重要だと思います.(内科医、医学教育O先生)



<6/22の討議で出された意見>
●気をつけないと自分がこういうことを言ってしまいそう。反面教師となる。
●ただし、医師が見せた一つの綻び・弱さでその医師を裁くことは出来ない。完璧な人間などいないのだから。



<今までの討議を踏まえた上での学生Fの方向性>
Student Doctorとしては、「どうすればよいのでしょうか?」「何か良い方法はないのでしょうか?」と医師に問いかけるのが一番良い方法だと思った。



<選択コース終わっての全体の感想>
 当初は、臨床実習を通じて深まってしまった医療(医師)の世界への不信感を、少しでも解消し希望を抱けるように…と思いこのコースを選択したのでした。
 まず、学習要綱には、このコースの指導教官として、医療者の白浜先生・小泉先生に加え、針貝先生・斎場先生の御名前が記載されていたのがとても魅力でした。全ての回に各先生方が参加していただく事はなかなか難しかったのですが、針貝先生にも参加していただけましたし、加えてエクストラに池田先生・MSWの林さん・浦添総合病院のI先生らにも参加していただくことができ、様々な方面からの意見を交わせたことは大変な喜びでした。また、インターネットを通じて、遠方の各方面の先生方の貴重な意見を拝聴することができ、感動しました。学生二人に対して、こんなに沢山の先生方が意見を仰ってくださるなんて、なんと贅沢なことでしょう。
 実際に討議をしてみると、なるほどこういう考え方もあったのか!と新たな発見がありました。様々な意見を通して、更に自分の考えを深めた部分もありました。そして、それらの作業を通じて、自分が医者の世界へ抱く気持ちに寧ろ解消出来ない部分があってもいいのではないか?と腑に落ちた部分が有りました。これらはとても大きな収穫です。
 意見が異なることは気付きに繋がりますね。異なる視点の人達との対話は、とても素晴らしいものでした。今回討議に参加してくださった方々は、勿論元から『臨床倫理』に興味があるという共通項がある訳ですが…。この対話が、例えばこのコースには全然興味がないような方達とも行えるようになれれば嬉しいことです。
 そして、準備や情報提供に多大な御心遣いを頂き、討議の日には朝早くから熱心に御指導くださった白浜先生、本当に有難うございました。このコースが此れほど充実したものとなったのは、白浜先生のお力以外のなにものでもありません。



<要望>
 今回の討議中にもたびたび挙がっていましたが、是非看護職の方に参加していただけたらと思います。また、修士や看護科学生の意見も聞いてみたかったです。(修士一年目の授業にお邪魔させていただいた時の彼らの意見は、新鮮でした。)



<後日送られて来た事例へのコメント>
実習生と教官の件で試しに感想提出してみました。
 
疑問点:
1、教官と学生さんはどの程度のコミニュ二ケーションが図れてるか?
2、教官は、患者ときちんと向き合ってあるか?対応は悪いのでしょうか?
3、教官のおかれてる、環境は悪いですか?学生さんに見える範囲内でそ、人間関係や仕事のハードさ?
 
学生さんは、教官の言動から(医師としての性質、性格、教官としての資質)医の倫理に外れてるという認識をもたれたと感じれれます。
だとしたら、自分も長く医師を続けるうちにこのような医師にならないようにと勉強させられたと思ってください。
 
指導面:
先生は、学生さんに患者のことを上手く伝える手段を知らない先生なのでしょうか?
学生さんに、患者の可笑しいところを判りやすく、噛み砕き教えたつもりなのでしょうね?
医師の卵として学生さんに心を許されての発言でしょう。
全ての診療の在り方が問題ならば指導者以前の問題です。
患者さんは医師を信頼してるように見えましたか?
先生は、真剣に傾聴され対応がマナー違反を感じる場面がありましたか?
 
3、は余談ですが、先生が多忙で疲労してる環境でも、学生さんに本当に愚痴をこぼすはずがないと思います。先生のキャラクターが物事の良し悪しを深く考えて行動するタイプじゃないとわかりますが、
教育的資質がないと見えます。
 
先生への対応としては、、先生から教えられたり、納得できない指導はそのときに問えないでも、メールや他の手段で話しを伺うようにした方が良い、勉強の段階で指導を受ける弱い立場でもあるが、ことばを選びながらせも、自分がある程度納得していかないといけないと思います。ただ反面教師だけでは済ませれられませんね。学生さんのまとめにあるように、投げかける質問で相手に気付かせるのはいいと思います。



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