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2001年症例2(高齢者の慢性腎不全の透析導入について)
臨床倫理の前提となる患者説明のために必要な医学的な情報をどのように集めるかということについて体験した一例の提示です。
この症例は、高齢者の腎不全で、本人が透析導入に消極的だったため、直接またはメールを介して透析にくわしい腎臓の専門医の意見を聞いた上でどのように患者および家族に話すべきか考えました。その時のインターネットなどでの相談内容を、協力していただいた専門医の先生方の了承を得て掲示するものです。
山の中で一人で診療していてもこのような相談が全国の専門医の先生方とできるということは有り難いことです。
またこういうある意味倫理的な問題を含む症例の検討も、まずその基本となる医学的適応をきちんと把握するための情報が基礎になることを理解していただければ感謝です。
いつものように実際の症例をプライバシーを保護するために一部内容を変更して提示します。


外来でみている慢性腎不全の78才の女性Aさん。あえて医学的プロブラムをあげれば以下の4つです。

1)腎硬化症による慢性腎不全
2)高血圧性心臓病
3)腎性貧血
4)高尿酸血症

7年前に、BUN50、Cr2.4くらいの時期に足のむくみがあるとのことで一度総合病院の腎臓内科へ紹介し、腎硬化症による慢性腎不全の診断を受けています。その時の退院時に、徐々に悪化していくでしょうが、しばらくは、食事療法と血圧のコントロールで大丈夫でしょうとのコメントでした。
以後
ノルバスク(2.5)2T
レニベース(5)1T
ザイロリック 1T
を投与していました。

その後腎性貧血もでてきましたが、エリスロポイエチン6000単位、月2回の注射で何とかHb9.0、Ht28くらいで経過していましたし、痩せてはいますが、元気に家事などをされています。しかし今年のはじめ、Crが3.0を超え、6月には5.0と急に悪化してきました。 BUNも50台から80台へと悪化して足のむくみも強くなっていますが、本人の苦痛はあまりないようです。腎機能が悪くなったため、レニベースはやめたのですが、血圧は160/90くらいです。むくみに合わせてラシックスなどの利尿剤を使おうかと思っています。

さて、本人は総合病院入院の時、同室の70才代の方が、シャントがつぶれて何度もくり返して再手術をする姿や、家族の負担なども考えると(肝疾患のある御主人と2人暮しで、40分ほどかかる透析の病院まで連れていくのは難しいらしい)、これ以上悪くなっても透析はしたくないと何度も訴えておられました。家族(御主人と子供さん)もそのことを了承されていました。もう寿命の分は生きたので、死ぬ時は色々な機械のお世話にならずに、安らかに死にたいと。できるだけ最期は自宅で過ごしたいとのこと。

私はかかりつけ医として、この患者の意見を聞いて、できるだけ患者の意思は尊重しようと思いつつも、今後透析をしない場合の苦痛と、した場合の苦痛についても専門家の意見を聞いた上で、今後のことについてできるだけ正確な情報を知ってお伝えし、患者さんに最善の治療法を(治療をしないことも含め)考えてほしいと思いました。

自分の乏しい経験ですが、以前もっと高齢の90才の女性の方の腎不全の時は、痴呆もあったため、腎不全に対しては、積極的な治療はせず、家で何日か寝込んで亡くなられたというだけで、ほとんど苦痛もなかったような記憶があります。

透析開始の基準(図1)は色々な教科書に書いてあるのに、透析をしなかった場合のターミナルがどうなるのか、そして透析をしない場合どのような医学的対応をしていくのかについては、あまり教科書や特集雑誌にも載っていないようです。


問題点は,
1)高齢者の透析導入について、腎臓専門医はどのように判断しているのか?
2)血液透析を拒否しているが、次にどのように患者と家族に説明するか?

という点について皆様の御意見をお願いします.
その他,先生方の御経験とかありましたら教えてください.
(具体的にこうしたらこうなったとか)



大阪市山本内科小児科、山本義久さんのコメント()に山本さんへの返事を記入


ターミナルケアについてとは悪性腫瘍を合併したということではなく、ご高齢の保存期腎不全患者に対する血液浄化療法(在宅医療を含む)の適応をどうするかということですね、これからさらに重要になる問題ですよね。
(そうです)

> 外来でみている慢性腎不全の78才の女性です。

ということは歩行可能であるということですね、それとも、介護されながら通院されているのでしょうか。
(今のところ診療所の送迎バスを利用して、自分で外来に来られている方です)

体重を40kgとするならば、、
予測式では
(140−78)*40/72*5=6.9ですね、

食事摂取量が減っていませんでしょうか、
頭痛、手足のしびれなど他症状は全くないということでしょうか、
(はい、今のところありません)

> 本人は総合病院入院の時、同室の70台の方が、
> シャントがつぶれて何度もくり返して再手術

もし、腹部手術も受けておられないなら、ご高齢で、心疾患があれば、ショントを必要としない在宅医療としてのCAPDも、一つの選択肢ですね、ただ、介護者がいないので、難しいですね。

> をする姿や、家族の負担なども考えると (肝
> 硬変の御主人と2人暮しで、透析の病院まで連
> れていくのは難しい)、これ以上悪くなっても
> 透析はしたくないと何度も訴えておられました。

高齢者の透析導入について、問題になっていることですよね。透析病院によっては介護施設を併設しているところも最近増えているようです。

> 家族(御主人と子供さん)もそのことを了承さ
> れています。
> もう寿命の分は生きたので、死ぬ時は色々な機
> 械のお世話にならずに、安らかに死にたいと。
> できるだけ最期は自宅で過ごしたいと。
>

これは多くの高齢者の方が言われることですよね、

> さてこれから腎不全が進むとどのようなことが
> 起きてくるのか。以前もっと高齢の90才の方の
> 腎不全の時は家で何日か寝込んで亡くなられた
> というだけで、ほとんど苦痛もなかったような

恐らく 高K血症や心不全で、なくなられたのでは
ないでしょうか、

> 経験はありますが。他に経験がありません。

私の場合は、今まで、勤務医時代に、100才の方を
本人およびご家族の希望で、血液透析を導入したこ
とがります。明るいおばーちゃんでした。また、開業し
て、90代の方を診療し、その後、病院で、血液浄化
療法が導入していただいた経験などもあります。ただ
今、どうなっているのか、わかりません。

> 今後本人家族に、どのような経過をたどるのか
> の説明や、どのような場合は入院を考えるた方
> がいいのかなど、説明したいので、経験のある
> 先生方の御意見を うかがっておきたいのですが。

患者さんには、
尿を作って、毒素(ゴミ)を排泄している腎臓が機能しなく
なると体に、いらなくなった水とゴミがたまります。
水がたまり、心不全となると肺に水がたまります。透析を
して水を抜かないと息苦しくなる。ようは海でおぼれている
のと同じようになり、やや苦しい思いをします。
また、毒素(ゴミ)の中でも、Kが多くなると突然心臓が
止まってしまうことがあります。
以上の症状がでれば緊急に入院が必要です。
というのはいかがでしょうか、

> 意外と透析開始の基準はよく書いてあるのに、
> 透析をしなかった場合のターミナルがどうなる
> のか、そして透析をしない場合どのような医学
> 的対応をしていくのかがあまり教科書や特集雑
> 誌には載っていません。

これはやはり結論がでていないからではないでしょうか
個々のケースで、大きく対応が変わりますよね、
患者の人生観、経済力などなど、、

> 腎機能が悪くなったため
> レニベースはやめてたのですが、血圧は160/90
> くらいです。むくみに合わせてラシックスなどの
> 利尿剤を使おうかと思っています。

まずは、
胸部XP、心エコーなどからの心機能は、いかがでしょうか、
(これは大丈夫ですが)
飲水量、尿量(蛋白量なども)と体重の変化はいかがでしょうか、
(体重変化は1-2kgくらいアップです。飲水、尿量は正確なチェックは
していませんが、あまりかわらないようです) 
その上で、少量の利尿剤を使用すると良いと思います。
(ラシックス20mgやってみて体重は1kg減りましたが、BUNはまた10位
上昇しました)

静脈血でいいのですが、血ガスはいかがでしょうか、
重曹の併用は、また、カリメートなどは投与せず、
Kはコントロールされているのでしょうか、
(Kはカリメートなしで今のところ5.1くらいです)
骨粗鬆症のすすみ具合はいかがでしょうか、

白浜先生がよく使用される臨床倫理の4分割法で、ちょとやって
みました。ご指導いただければ幸いです。

[ステップ1(認知分析)]

医学的適応
 診断は 1)慢性腎不全(腎硬化症)+腎性貧血 2)高血圧性心疾患である。
 治療は保存的治療がされている。近いうちに、ご高齢であり、感冒、脱水など、
 不適切な利尿剤の使用により、容易に、 血液浄化療法(血液透析、血液濾過、
 ECUM、CAPDなど)が必要なると思われる。 痴呆は進んでいないようであ
る。

患者の選択
 患者の判断能力はあると思われる。
 周囲の環境のため、悲観的な判断をしている可能性がある。
 透析はしたくない。
 家族(御主人と子供さん)もそのことを了承されている。

QOL
 こんな体で、長生きしても、家族に迷惑をかけたくないし、おもしろくない。

周囲の状況
 家族にとって、介護など、さらに、経済的にも負担がかかるであろう。

[ステップ2(調査検討)]

医学的適応
 最終的治療目標は何か?
(血液浄化療法を導入して、うまく上記 疾患をコントロールして、家族にも
 迷惑をかけないで、生活する)

患者の意向
 なぜ透析を拒否するのか、 ?

QOL
 どうすることが患者のQOLをあげることになるのか?
 病気になる前は何が楽しみだったのか?

周囲の状況
 だれが中心に介護を行っていくのか?
 家庭の経済的なには状況は?
 (健康保険、身障者手帳など)
 同居している家族は?
 ( (肝硬変の御主人と2人暮)
 家族の介護への考えは?

 家族以外の社会資源は?
 (診療所医師と訪問看護、ヘルパーなど)

[ステップ3(今後の具体的対応)]

医学的適応
 血圧のコントロールが必要。
 今後は、心不全、高K血症に対する早期発見、治療が重要である。
 診療所医師と訪問看護、ヘルパーなど家族以外の社会資源を確保する。
 介護施設を併設している透析病院への転送はいかがでしょうか。
(透析病院への送り迎えにタクシーとか使っても介護保険でカバーする
とかなるといいのですが、介護タクシーが認められなかったのはなぜな
のでしょう?)

患者の意向
 定期的な往診を続け、患者および家族との信頼関係を築く。

QOL
 患者の楽しみ、たとえば、孫などいれば、本人の生きがいになる
 のではないか。 
 
周囲の状況
 だれが具体的にかかわれるか検討する。
 その他、協力を依頼する。



高松市 横井医院 横井徹さんのコメント


今回の増悪のきっかけに、なにかの急性〜亜急性疾患および生活上の
急な負担増が隠れていないかどうか
がポイントになるかと思います。たとえば、
1)消化管出血(←胃潰瘍)などの急性疾患合併
2)薬剤性の腎障害
3)たとえばANCA関連腎炎など←比較的慢性に進むタイプなら発見しにくいことあり
4)忙しくて動きどおしである、食事も適当になっているなど

1)これについては症状の有無、検査で区別できると思うので否定的か
2)ノルバスク:慢性腎不全の場合にまれに溶血性貧血になることがありますが、
もっとも、直接の腎障害としては考えにくいかもしれません。ACEIをやめてますので、
今後は血圧が高くならないように気をつける必要があるでしょう。カルシウムブロッカー
単独だと全身血圧がそのまま糸球体内にかかって、糸球体内高血圧→腎障害のさらな
る増悪につながるかも知れません。
ザイロリックも間質性腎障害などを引き起こすことがあります。尿酸値のコントロール
が十分なら減量してもいいかもしれません。
3)通常、腎硬化症で急性増悪する場合、大部分は例えば脱水、循環血液量低下に伴う
ことが多いと思います。たとえば身内の不幸または自身の風邪などで?食欲が低下す
る、余りにも忙しすぎて食事も満足にとれていない、飲水が不十分である(特に高齢
で毎日農作業に従事している場合等)、利尿剤の過量投与、などです。従って今回の
ように浮腫の増悪を伴うような腎不全の増悪のパターンをとることは比較的稀ではな
いかと思います。
今回の場合、尿所見の変化はありませんでしょうか?。たとえば、蛋白尿が増えて
低蛋白血症の傾向になっているとか、血尿円柱尿が出てきたとか(もともと血尿がある
場合は別として、通常腎硬化症では尿所見は大人しく、円柱尿や高度蛋白尿はないと
思いますので、こんな所見が新たに出てきているなら新たな腎炎の合併ということが
考えられます。特にこの時期ではANCA関連腎炎も頭に置く必要があります。
必ずしも急速進行性腎炎症候群の形をとらないこともあります。慢性に経過するパタ
ーンもあり、エコー上も腎硬化症?と思ってしまうこともあります。
4)新たな腎炎等3)の可能性が低くても、家事や畑仕事などではたらきづめであって
食事も適当になって蛋白質や水分塩分の過剰摂取になっていれば、低蛋白血症を伴わ
なくても浮腫を伴った腎不全増悪をきたすことはあると思います。

元気なおばあさんでデータと浮腫以外特に変わらないなら4)のようなことを考えた
いです。
その次には3)でしょうか。1)は考えにくいですが、2)の薬剤性については一度
疑って見る必要もあるかと思いました。

あと、一度Cr値の逆数グラフを書いてみてはいかがでしょうか?。
7年前にCr2.4であれ当時ですでにCcrは20〜10の後半くらいになっているでしょう
から、ひょっとしたら今年になって急性増悪しているんでなくて腎硬化症の自然経過
かも知れません。
(1/Crをとると確かに昨年末より悪化しており自然経過のようです)

そうすれば上記の1)〜3)の考察は考えにくくなります。自然経過に塩分水分の過
剰摂取が加わって浮腫が出ているのかも知れませんね。

>これ以上悪くなっても
>透析はしたくないと何度も訴えておられました。
>
>家族(御主人と子供さん)もそのことを了承さ
>れています。
>もう寿命の分は生きたので、死ぬ時は色々な機
>械のお世話にならずに、安らかに死にたいと。
>できるだけ最期は自宅で過ごしたいと。
>
>さてこれから腎不全が進むとどのようなことが
>起きてくるのか。以前もっと高齢の90才の方の
>腎不全の時は家で何日か寝込んで亡くなられた
>というだけで、ほとんど苦痛もなかったような
>経験はありますが。他に経験がありません。

上記1)〜3)のようなことがなければ、高カリウム血症(これも食事のカリウム制
限で十分治療可能ですが)がない限り、急変するようなことはないように思います。
水、塩の過剰摂取がなければ、利尿剤投与で肺水腫に陥ることも防げます。ただし利
尿剤投与に伴って、腎機能のさらなる増悪は起こるでしょうが。
そうしているうちに尿毒症期になり(といっても食欲低下、嘔気等が主体)だんだん
臥床がちになって最後に亡くなるというような経過かと思います。
肺水腫で苦しむということはないように思いますから、本人の希望に近い最期に持っ
てゆくことは十分可能のように思います。
ただし、4)のような状態なら別です。

>意外と透析開始の基準はよく書いてあるのに、
>透析をしなかった場合のターミナルがどうなる
>のか、そして透析をしない場合どのような医学
>的対応をしていくのかがあまり教科書や特集雑
>誌には載っていません。

透析をしない場合に、うまく行けば上に書いたように経過するでしょうが
そのとおりいかないこともあり得ます。特に肺水腫で呼吸不全に陥るなど。
その場合には透析しなければ救命はできませんね。
ただし、尿毒症期に透析を導入する目安として以下の3点がありますが、
それまでの食事でのコントロールができていれば
1)アシドーシス(消化器症状)→少量の重曹でコントロール可能
2)高カリウム→これもカリメート(内服や注腸)でコントロール可能
3)肺水腫→利尿剤でコントロールできなければ透析(またはECUM)で除水
となります。すなわち、水分コントロールの目的以外で体外循環を必要とすることは
あまりないでしょうから、肺水腫にさえならないようにすれば本人の希望どおり
安らかに?在宅死可能と考えます。

しかし、水分コントロールができなかった場合、その時点で家族や本人の意志を再度
確認し場合により透析導入ということもあり得ます。もともと透析希望がなくても
いざそのときになると考えがかわる患者さんは多いですし、透析導入ご元気になって
「透析という選択はよかった」とあとで言われる高齢の方も結構いらっしゃいます。
結局、できるだけ自覚症状なく治療し、保存治療の限界が来た時点で再度透析するか
どうかの判断を行うというのが現実的かと思います。

御夫婦以外の家族がどちらにお住まいかどうかも重要でしょうが、CAPDという選択も
可能である場合があります(最近は夜間のみ自動腹膜還流装置を用いて腹膜透析
するこことも可能です。うまくいけば日中は今までと変わらない生活が可能です。
入浴などがちょっと困りますが)。
実際岡山時代に80才でCAPDを導入した男性で84才で骨折等に伴うADLの低下、心不全で
入院→死亡となった患者さんは入院直前までの4年間、一人でバッグ交換を行い、一人で
CAPD外来に通われ、自己管理生活管理もされていました。もっとも、「寿命が4年間
伸びた」ということをどのように考えるかで評価が異なるかも知れませんが。他のCAPD
患者さんの模範的存在でした。そう言うこともありますので、状況が許さるなら積極的
治療がそのかたのQOLを最期まで保つために有効であることもあります。

本人の希望どおりに考えるなら、3)の状態になってあらためて入院(すなわち透析
導入)の意志を再度確認してみる、というのが現実的でしょうか?。
ただ、途中で本人の考えが変わったならその時点でできるだけ早く入院していただく
べき(上記3)の状態になるのを待たずに)でしょう。
というのは早めに入院して、食事や安静をしながらいろいろやることで腎機能が落ち
着き改善して退院、に持ってゆくことも可能であるからです。その意味で最初に
「今回の増悪のきっかけに、なにかの急性〜亜急性疾患および生活上の急な負担増が
隠れていないかどうかがポイントになるかと思います。」と書きましたが、今の時点
で入院精査しておくことで腎機能をもとに戻すことも可能ではないか、とも思います。

以上、まとまりの無い文章ですみません。
高齢者の腎不全については、スタンダードというものはなく1例毎にまったく対応が違う
べきと考えていますので、高齢だからといって一律「透析導入はしない」とか「どん
な場合でも透析を積極的にすすめる」とかの対応にならないと思いますし、いろいろ考
えているうちにいろんな考えが出てきて、専門医でも悩むことがおおいのです。
例えば70歳以上では透析が保険外診療=自己負担になる、とかいった国であれば
話は別なんでしょうが・・・・。



東京大学 南学正臣さんのコメント


非常に難しい症例だと思います。

> 1)高齢者の透析導入について
>  腎臓専門医はどのように判断しているのか?
私個人は、暦年齢ではなく、実際の肉体年齢が重要と思いますので、ご本人がしっか
りしていて透析をしながら人生を楽しめるようであるなら、年齢に関係なく導入します。
導入について negative な patient education を行う具体例として、透析は本人が
協力しながら治療を受けることが前提ですから、痴呆があっていきなりラインを引き抜い
たりする可能性のある人などについては、適応外である旨の education を行います。
ただ、急速に痴呆が進んだような例では、なかなかどの程度まで uremic な影響が修飾して
いるのか自信がもてないことも多く、そのような場合はケースバイケースの判断をします。

> 2)血液透析を拒否しているが
>  次のどのように患者と家族に説明するか?
体液量がコントロールできない場合、心不全になり非常に息が苦しく、窒息状態にな
る可能性があること、尿毒症性の神経症状などが前景に出た場合、吐き気や嘔吐など種々
の症状が強く出る可能性があること、などを説明します。
ご質問の患者さんの周囲の透析病院の状況や、患者さんの血管の状態などが分かりま
せんが、もし本人が通院可能であるような状況の方ならば、もう少しデータが悪化し
たらいざという時のために shunt だけ作っておく、という選択肢もあると思います。
私個人としては、種々の理由で輸血ができず、出血傾向もあるため shunt ope も
血管外科ができないと判断した患者を経験しました。透析もぎりぎりまで先延しにした
ところ、BUN 240(体重は30kgくらいでした), Hb 4で acidemia も非常にひどくなっ
た時点で全身の鋭い痛みを訴え、尿毒症性の神経症状と考え、その時点で透析導入を決
断し、ドップラーエコー下でカテーテルを挿入し、透析を行いました。神経症状はとれ
ましたが、貧血はその後も進行し、地元の病院に転院後数週間で亡くなられました。



山形県酒井市 さとう内科クリニック 佐藤 顕さんのコメント


この症例は血液透析を拒否していますが、renal replacement therapy (RRT)を全面
的に拒否しているわけではなさそうです。つまり、拒否の原因はシャントの問題と通
院の問題です。私が主治医ならCAPDの絶好の適応と判断します。(ただし私は「PD
first」という立場なのでbiasも大きいかもしれません)
ところで、白浜先生がおっしゃるように「透析をしない判断」についての文献的記載
は多くはありませんが、皆無ではありません。内科学会雑誌2000年7月号の55ページ
に「慢性腎不全における透析導入」という論文の中で、「透析に導入しないという判
断」という解説があり、Hirshらの論文(Ethical and moral issues in nephrology.
Experience with not offering dialysis to patients with a poor prognosis. Am
J Kidney Dis 23:436-466, 1994)が紹介されています。この中でHirshは透析の適応
がないとする状況を以下のようにあげています:
1)腎不全を原因としない痴呆
2)転移性癌あるいは切除不能の固形癌が存在
3)治療に反応しない造血器悪性腫瘍
4)非可逆性の肝障害、心障害、呼吸障害で臥床を強いられ日常生活に介助者を必要とする、
5)非可逆性の神経障害のために身体活動ができない高度の脳卒中、無酸素性脳症
6)生存が期待できないMOF
7)透析操作を行うために鎮静操作または抑制操作を必要とする。
注目してほしいのはここには年齢は含まれていないことです。

私自身も年齢という数字自体は透析の適応の決定にはなんら影響を与えるべきではな
いと考えています。「臨床透析」の2001年6月増刊号には、前田貞亮先生の「透析療法
導入の可否判断」という論文があり、この中で95歳の透析導入例が紹介されています。
一般に緩徐に進行する慢性腎不全患者では、患者は知らず知らずにその活動量を低下
させ、調子の良いという感覚(sense of well-being)や生活習慣を腎不全の進行に
あわせて調節してしまっていることが知られています(Hakim RM, Lazarus JM:
Initiation of dialysis. J Am Soc Nephrol 6:1319-1328, 1995)。末期腎不全状態
ではその時点でのQOLが悪いために透析開始後の生活に希望がもてない可能性もある
わけです。実際、私自身も85歳以上のCAPD導入を何例か経験していますが、最初
はCAPDを拒否していた患者も実際にCAPDを開始してuremiaの症状が改善すると、やは
りCAPDを行って良かったと感じていたようです。特に最近では「ゆめ」という患者さ
んが就寝中に腹膜透析を行える便利な器械があり、治療の幅が広がっています。



秋田大学 今井裕一さんの再コメント、私の追加コメントに対して


早速,ご質問に回答します.

>英国のこの65才以上透析制限というのは今は
>撤廃されているのでしょうか?
人道的でないということで廃止されているはずです.
その後の,データとして真っ向から対立する
高齢者透析が,テーマの論文が出現しています.

>現在日本が20万、アメリカが4〜50万人で世界の
>透析の65%をやっているという文章を読んだこ
>とがありませすが、その差はやはり保険医療シ
>ステムの差なのでしょうか?透析の必要な患者
>が日本とアメリカにだけ多いとは思えません。

現在,日本では,20万人います.
新規導入が,3万くらいでしょうか
アメリカでの,透析は多くは,高齢者と同じメデイケア
の枠で支払っているようです.
日本は,ほとんど公費です.

>日本では透析患者1人に年間500万の医療費が
>かかり、透析だけで年間1兆円のお金が使われ
>ているというのは本当でしょうか。日本の1年間の
>医療費の33兆のうち1兆円というお金がどういう意
>味をもつのかよくわかりませんが。そのあたりのこ
>とを腎臓の先生方はどのようにお考えでしょうか?

500万円x20万人=1兆円は,ほぼ正しいです.
33兆円のうちの1兆円です.大きな問題です.
ただし,おそらく病院・医療関係者に残るのは
20%もないでしょう.ほとんどは,機械(透析膜)や透析液
に流れています.医療産業というべきでしょう.
1台の透析機械を購入(リース)すると
1人では採算があいませんが,3人入れて
ようやく余力がでます.経済原理からすると
開業時に,5台を購入すると,15人導入されて
安定した生活ができます.このような計算が
立てやすいような収入の額です.
簡単には,透析管理量は,約10万円/月ですので
このような計算がたてやすいことで,透析医療の算術
の面が強調されます.
高血圧の患者さんは,5000円くらいですから,
20人分に相当します.いろいろな矛盾があります.
日本腎臓学会としても,透析医療にかかる1兆円の1%でも
予防や成因解明,治療法開発に回すように要求しているので
すが、政府はそのようなお金の使い方はしません。
毎年10億円くらいかけたら、克服できるかもしれませんが
なかなかそうなりません.
(関連する医療業者が路頭に迷います.そんな圧力があるのかもしれません)

>>  わたしは,個人的に
> > 「PD first and last」の言葉が好きです.
> 1)この言葉の意味をもう少しわかりやすく解説してい
> ただけないでしょうか。透析が最後の手段である
> ということはわかるのですが、firstというのはどうい
> うことでしょうか。

現在,血液透析は,透析技師,看護婦が主体に行っており
医師にとっては,効率がよいわけです.
CAPDは,現在透析患者の約5%です.
秋田県では,約 15%で全国最高です.
血液透析とCAPDの利点欠点を比較してみて
透析導入する特に尿が出ている人は
残った腎臓の働きに腹膜の働きを加えて
透析を行う方が,ベターという意味です.
血液透析では,1年以内に尿が出なくなります.
透析導入に際して、CAPDで行うことをPD firstとしています。
また高齢者でCAPDを最後の数年間行うことをPD lastという
意味で使用しています。ただし、学会で認められているよう
な正式な用語ではありません。

具体的には,透析開始の残腎機能のある症例では
数年間,CAPDを行う,その後,血液透析か移植を考える.一方
高齢者で,最後のチャンスとしてCAPDを行う.
数年間延命できれば,有用であると判断しています.
本当にできなくなると,枯れるようにして召されていきます.

> この枯れるように召されていくという最期になることを希望します。
> 透析のことを考えたきっかけは、昨年九大の内科学会の講演会
> で、福岡日赤の藤見先生が、慢性腎不全の患者の問題として話
> され、その後、ちょっとお話させていただいた時に、昔はクレアチ
> ニンとか簡単に測れなかったから腎不全の診断ができなくて、専
> 門医まで来ることなく老衰死といわれるものの中に腎不全による
> 死亡もあったのではないかと思う。透析導入の依頼で紹介されれ
> ば透析するしかないが、本当にその人が透析の適応にあるのか
> は、それまでのかかりつけ医の先生が、患者の価値観、家庭環
> 境を背景に検討しておいてもらわないと、専門医ではそのことを
> 聞き出すのが難しいといわれたのが、心に残っていたからです。

コメント:
患者さんの家族関係が,医療を受ける際には非常に重要です.
患者さんが,子供や周りの人とトラブルを起こして大事にされていない人は
家族からも見放されるし,自分自身でも生きる希望をなくしている
かわいそうな人もいます.かなり哲学的な問題になりますが
これまで歩んできた人生が,やはり相手の人間を
大事にしてこなかった人は,それ相応の結末になるようです.
一方で,家族を思うあまり,家族に負担をかけたくないために
自分の人生を終わりにしようと考える人もいます.
そのような意味で,本人が家族をどのように思っているのか
家族が,患者をどのように考えているのかを
十分聴取します.

患者さんが,家族にとってかけがえのない人であったら
「もう一度,お家で楽しい時間を過ごしてみませんか?」
だいたいこれで,落ち着くことになります.

> 2)では透析導入を判断する腎臓専門医がかかりつけ医に知らせ
> てほしい情報とは具体的にどいういうことでしょうか。

家庭の環境が一番です.

> 3)それから、すみませんCAPDのことはよく知らなくて。ただ、
> CAPDは高齢者で負担になる。危険があるということは
> ないのでしょうか。なかなか普及しないのはなぜでしょうか。

CAPDが普及しない理由は,
医師に負担を強いるものであること
血液透析は,極端な話,優秀な技師と看護婦がいれば
大方はすみます.細かいことは全部無視しても
患者さんは,結構安定しています.

ここでCAPDと血液透析を単純に優劣を比較することは
現実的でないと思いますが,多くの透析医はあまり深く考えていません.
CAPDの技術面に関して,各会社主導でいろいろな基準や概念を出して
きていることから、統一性がありません。そのような意味で新規にCAPD
を行うことが難しい状況がありましたので、昨年「CAPD実践マニュアル」
という本を作りました.

従来は,高齢者でCAPDは禁忌であるような意見がでていました.
実際に10年前のテキストにはそのようにかかれています.
そして、未だにそのような本が売られています。
しかし,高齢者ほど,操作が安定すれば
血圧の変動も少なく,日常生活が普通に行えます.
数年間でも行う方がメリットがあると思っています.



熊本大学 早野恵子さんのコメント


>78才の女性
>1)腎硬化症による慢性腎不全
>2)高血圧性心臓病
>3)腎性貧血

高齢者によくあるパターンですね。
これから、高齢社会になるに連れて
ますます増加中です。
透析導入の原因として、DM腎症が
急増していますが、腎硬化症も
ダークホースです。
私としては、人生の終焉まで、患者さんの腎機能が
保持されんことを祈るような気持ちですが、
先のことはわかりません。

>7年前に、BUN50、Cr2.4くらいの時期に足の
>むくみがあるとのことで一度総合病院の腎臓
>内科へ紹介し、腎硬化症による慢性腎不全の
>診断を受けています。その時の退院時に、徐
>々に 悪化していくでしょうが、しばらくは、
>食事と血圧のコントロールで大丈夫でしょう
>とのコメントでした。
>以後
>ノルバスク(2.5)2T
>レニベース(5)1T
>ザイロリック 1T
>を投与していました。

足部のみの浮腫は、よく見かけますが、
腎不全のせいではないことや
Ca拮抗剤や、depending edemaなどもあり、
塩分の制限(水分ではなく)や下肢の挙上
等を試みます。
全身浮腫ではなく、局所のみならば心配ないと
思います。
むしろこわいのは、脱水です。
しばしば、患者さんは浮腫には敏感で受診されますが、
脱水には無頓着です。
それで、旅行後や、葬式などの忙しい行事の後に
腎不全の増悪が見られます。

エリスロポエチン(EPO)で保存期腎不全の
腎性貧血も十分に治療可能になりました。
患者さんによっては、高血圧とカリウム値の上昇
が極端なかたもいますので注意しています。

>本人は総合病院入院の時、同室の70台の方が、
>シャントがつぶれて何度もくり返して再手術
>をする姿や、家族の負担なども考えると (肝
>硬変の御主人と2人暮しで、透析の病院まで連
>れていくのは難しい)、これ以上悪くなっても
>透析はしたくないと何度も訴えておられました。

>家族(御主人と子供さん)もそのことを了承さ
>れています。
>もう寿命の分は生きたので、死ぬ時は色々な機
>械のお世話にならずに、安らかに死にたいと。
>できるだけ最期は自宅で過ごしたいと。

私の患者さんにも、同じような境遇の方がいて、
ご主人を介護中です。
こちらは、自分が最後までご主人を介護して
看取るので透析を受けることを決心しています。
ご主人をときどき病院に入院させる練習を施行中です。

>さてこれから腎不全が進むとどのようなことが
>起きてくるのか。以前もっと高齢の90才の方の
>腎不全の時は家で何日か寝込んで亡くなられた
>というだけで、ほとんど苦痛もなかったような
>経験はありますが。他に経験がありません。

ほとんどの方は透析されますので、
私もあまり経験はないのですが、
何人かはあります。
natural なdown hill course でした。
高齢の方は、昔は老衰と考えれたかたも
いらっしゃるのでは?

>今後本人家族に、どのような経過をたどるのか
>の説明や、どのような場合は入院を考えるた方
>がいいのかなど、説明したいので、経験のある
>先生方の御意見を うかがっておきたいのですが。

>意外と透析開始の基準はよく書いてあるのに、
>透析をしなかった場合のターミナルがどうなる
>のか、そして透析をしない場合どのような医学
>的対応をしていくのかがあまり教科書や特集雑
>誌には載っていません。

患者さんの高齢や 痴呆を理由に透析導入をしない
場合を論議すると、マスコミ上大変な騒動になるからだと
思います。とくに朝日新聞が・・・
私は、一度朝日から尋ねられたことがありますが、
もちろん希望者には全て透析を致しますとお答えしました。
本来は、皆でMPQC法などでじっくり検討しなければ
ならない問題(適応、Ptの意向や無益性、医療資源の
適正配分など)なのですが、マスコミの問題もありまして・・・

ただ、施設に入っていて動きたくない患者さんに
寮母さんの理解を得て、施設内でのCAPDを
施行して喜ばれたことはあります。
ゆるやかな3回交換のCAPDなどもおすすめです。
腹膜炎になったときは、抗生剤で対処できますし
難治性な場合は、転院すれば良いと思います。

>腎機能が悪くなったため
>レニベースはやめてたのですが、血圧は160/90
>くらいです。むくみに合わせてラシックスなどの
>利尿剤を使おうかと思っています。

ACE阻害剤やアンギオテンシンUレセプター阻害剤も
高血圧がコントロールできないときは、使用もやむを
得ないときもあります。

ラシックスも、必要に応じて。
DMの場合は腎機能に比べて、異様に
水分貯留が生じ、Cr2〜3でも、心不全や
体重増加が著明なかたがいますが、
ECUM(限外濾過)のまえに、ラシックス+
フルイトランのコンビネーションで強力な利尿を
得ることができます。
これは、水分貯留が難治性のときの奥の手です。

1.毎日、体重を測ることが大切です。

2.血清Kのチェック。
  透析寸前まで、K値が上昇しないことが多いのですが、
  ときにDMのかた, 高齢女性は上昇しやすい傾向が
  あります。上昇したときは、食事療法とカリメート
  (アーガメートというゼリー状のものも)内服など。

3.心不全への対処。
  3日くらい前から、咳が(夜中に)でたり、夜間の呼吸困難が
  生じたりの前兆が・・・
  3日間以上放置すると、限界に達し、救急車ということに。

とりいそぎ、簡単ですが、私の経験からお書きします。
エビデンスにつきましては、またの機会に。



航空医学研究センター 三浦靖彦さんのコメント


私も以前、このような問題でずいぶん頭を悩ませました。

1) 高齢者の透析導入について、専門医はどのように判断しているのか?
透析非導入に関しては、以下のHirschの基準と、大平の私案があるだけです。

三浦 靖彦、川口良人、細谷龍雄:透析の中止、(3)事前指示書/透析の中止ー日米独
の比較 の中の表より転載。なお、引用されたHirsch、大平論文は以下の通りです。

Hirsch.D.J., WestM.L.,Cohen,A.D., et al:Experience with not offering dialysis to patients with
a poor prognosis. Am.J.Kidney.Dis. 1994; 23; 446-463

大平整爾:慢性腎不全患者の透析を止めるときー誰がいつ、決意するか。Clinical Engineering
1996;7:401-407

ただし、今回の症例は基準にはあてはまりませんので、個別に判断しなくてはなりません。

2)血液透析を拒否しているが
次のどのように患者と家族に説明するか?
私が以前書いた論文の中に「在宅医療・緩和医療としてのCAPD療法」があります(腹膜透析98:212-4)
つまり、シャントが作れない、施設に通えない、心肺機能が低くて体外循環が出来ないなどの際に、超
negative selectionとしてCAPDを行うのです。当然、交換作業時の家族等による介助は必要です。しかし、
導入せずに放置するよりは、「出来るだけのことはやった。」という満足感は得られます。
CAPDの場合、カテーテルの跳ねによる除水不全や、透析不十分、腹膜炎が合併症として起こり得ますが、
これも、ある意味では天命として受け入れやすいのではないかと私は考えています。(いわゆるsoft landing
と私は考えます)

3)透析の問題点、苦痛は何かあるのか?
シャントが出来れば、穿刺の痛みと、場合によっては、透析中の血圧低下に伴う気分不快があります。
また、3-4時間じっとしていなくてはならないと言う苦痛もあります。
その意味でもCAPDだと、在宅で行えますし、交換作業(一回30分、一日3-4回)時以外は、好きにして
いられます。ただし、日本人の場合、自分でするのがいやなので血液透析の方がお任せでいられるので
気が楽だという言う人もたくさんいます。

現在、BUN80ということですので、導入時期はかなり近いと思います。というのも、高齢者の場合、
筋肉量が少ないため、内因性Cr産制量が少なく、BUNの1/10ぐらいが真のCr値と考えた方がよいからです。

導入しない場合の症状ですが、

1、肺水腫症状:結構苦しいと思いますので、利尿剤・水分調節で肺水腫を起こさないよう留意する。
また、肺水腫状態になったら、モルヒネを使うのが良いと思います。

2 、尿毒症症状:アシドーシスが進むと、食指不振・吐き気が出現します。これも、鎮静剤でコント
ロールするしかないと思います。

3、カリウム排泄が低下してきた場合、カリウム制限をしないと、高K血症で、不整脈死する可能性が
高くなりますが、これを逆利用するという・・・・(これ以上はやめておきます)

4 、上記@Aに対して、尿毒症状による痴呆が進むため、高齢者だと、症状があまり強く出ない場合も
ありますので、先生の90歳の症例の場合はそれだったかもしれません。また、本来の痴呆なのか、尿毒
症による痴呆なのかも判別が難しいところです。以前「ひどい痴呆状態なので透析を開始しても、後が
大変なのでは?」と思った症例に、透析導入したところ、スッキリとクリアーになったという経験が何
例かあります。

また、透析を導入しない場合の私がよく使ったムンテラは

「人間の寿命というものがあると思いますが、患者さんの場合は、脳や心臓の寿命がくる少し前に腎臓
の寿命が尽きてしまったのだと思います。したがって、透析をしても、すぐに(何ヶ月か場合によって
は数年?)全体の寿命がきてしまうのではないかと思います。」といった内容を話していました。たい
ていの場合は、この説明で納得していただきましたが、本当にそれで良かったのかは疑問です。



千葉医療福祉専門学校副学校長 猪狩友行さんのコメント


先ず、指摘したいことは、高血圧性の腎硬化症であれば
進行は、きわめてゆっくりであるということです。
ですから、昨年来の腎機能低下が顕著であるとすれば、
何か、増悪因子はないかを検討し、それを除去することです。
この方の場合も、案外、レニベース(ACE阻害薬)を止めることで
少し、腎機能が改善しませんか。
小生は、腎機能をサポートする意味で、(washout) 早くからループ利尿剤を加えます。
この腎機能ですと、80mg〜120mgくらい飲ませないと利きません。
その上で、十分、水分を摂らせます。ただし、糖尿病性腎症であれば、対策が少し違
います。
食事中のタンバク制限を主張する専門家をいるでしょう。
しかし、70歳以上の人には勧めないというのが、むしろ王道です。
腎性貧血は、エポジンでコントロールできます。
私が見ていたケースでは、83歳の女性で、Cr4〜5を往復していますが、
2年間くらい不変で診ている人がいました。
このケースも、保存的治療はまだまだ捨てたものではないと思います。

> 1)先生は透析を拒否された方の最期をみとられた
> 経験を多くお持ちでしょうか。その最期はやはり
> 悲惨でしょうか?昔の老衰の中にはたくさんの
> 腎不全によるものがあったという先生もおられ
> ますが。

実は、最近やはり、クリスチャンで79歳の方で、腎不全を
透析せず(本人の希望で)に看取ったことがありました。
私も初めての体験でした。
透析の絶対適応になってから、約4ヶ月でなくなりました。
この方も腎硬化症と見られます。
私自身も、左心不全で、肺水腫をおこされたらどうしようと心配していましたが、
最後まで、水分としての尿量は保たれました。
この方で、わかったことは、いわゆる老衰が、短期日に、一気に生じました。
ほんの4ヶ月前には、少し息が切れるくらいで、家事全般をしていた人が、
ADLが見る見る低下し、受動的臥床状態になり、しかも、知的機能も、顔貌まで
一気に老け込んだのは驚きでした。最後は、全く、苦しむことなく、昨晩まで、話を
し、朝、介護していたご主人が起きたら、夜中中になくなっていました。それも、
一人で苦しんだ様子もありません。
多分、最終的な高K血症による心停止を想像しています。

> 2)透析をはじめて、透析をするのが苦痛だと言う
> 方はおられましたか。人工的に血液をきれいにする
> わけで、体の不調を訴える方もあると思いますが。

勿論、患者にとっては、自覚的に一番不調なのは、透析当日の寝るまでです。
それでも、基本的には、小生は、多くの臨床経験から、積極的に透析を勧めます。
血液透析自体、ルチーン化してやっていると、高度医療のカテゴリーに入るほどのも
のではないように感じてしまいます。
95歳を頭に、80過ぎても、透析を受けて、とても快適な自己実現を果たし、透析を受
けて良かったという人が多かったです。

> 3)これは決して直接患者やその家族の方には話し
> ませんが、日本の33兆円の医療費のうち透析に
> 1兆円使われていることについてどう思われますか。

これは、最も頭の痛いところで、私も結論を持っていません。云えることは、一人の
患者がいれば、助けたい。
それが、無前提に出来る日本という医療環境はなんて天国だろう。
それに、透析医療者も、その1兆円で食っているわけですから。
多分、医療経済的見地から正しい選択は、遺体腎移植を進めて、透析人口を減らすこ
とです。(1人で2人助かる。)
今、その透析医療者から足を洗ったものとしては、日本もそろそろ年齢制限を設ける
時期が来ただろう、ということでしょうか。



透析を受けている同年代の友人の医師のコメント

自分の場合は急性に進行した腎不全で、考える暇もなく透析になった。
色々考えるより、実際苦しくなったら透析と言うのが一番現実的かも。


長年透析をされている先輩医師のコメント


人間寿命と言うのはあります。腎臓だけが悪くなるのではありません。
透析が出来なかった昭和30年代には大学病院でも腎不全に対して積極的な治療法
もありませんでした。ただ腎不全の枯れるような最期は特別苦痛が強いと言うもの
ではありません。


実際の私の対応


以上のような様々な情報を頂いて、自分なりに整理し、
かかりつけ医として、家族と本人に集まってもらって、お話をした。
その内容は以下のとおり、

1)急速な腎不全の進行があり、その原因を調べるためもう一度総合病院に入院したらどうだろうか。
2)透析については、その入院治療の結果で、今回透析をするかどうか専門医の先生と相談して決めたら
どうでしょうか。
3)透析をしなかったら、ある時からどんどん腎臓が悪くなって、体の毒物がオシッコに出せなくなって
むくみがひどくなる、頭がぼうっとする、肺に水がたまって息苦しくなるなどの症状がでることがありま
す。症状が出て苦しくなった時に透析とか考えてもいいですが、悪くなってから透析を始めると合併症が
おきやすくなるので、透析するかどうかは別にして、いつでも透析ができるように、透析用の血管のシャ
ントというのを作ってもらっておくのもいいのではないでしょうか。
家族の意見は、最初本人の意思を尊重するとのことだったが、遠くに住む息子が、絶対透析は受けて一日
でも長生きしてほしいと電話をしてきたとのことであった。
あと一つ嬉しい情報として、来年には診療所の後方病院(車で20分のところ)に透析室が開設されるそ
うで、家族の透析送迎の苦労も、これまで40分近くかかっていた現状の半分ですむらしい。
という話で、最終的には本人も納得して再入院された。
病院の担当の先生自身慢性疾患を患っておられるらしく、この患者に「私も病気をもっています。お互い
生きられるんだったら、できるだけ苦しみは少なく生きていきましょう。」と話されたらしい。
結局入院後シャントを造設され(心配していたこの手術は1時間ほどでできて非常にうまくいったらしい)
今後2週間ごとに、総合病院の外来で経過をみるようになったと紹介状の返事をもって挨拶にこられました。
今回高齢者の慢性腎不全に対する透析導入について、患者さんが否定的であったことから、腎機能がわるく
なったから即腎臓専門医への紹介入院ではなく、まずこのようなインターネットを用いて色々な専門家の意
見を伺い、自分なりに勉強した上で、患者にも正確な情報を伝えて判断してもらったわけですが、このよう
なことが簡単にできるようにしてくれたインターネットという文明の利器と、ご協力いただいた先生方に心
から感謝しています。



長崎大学 宮崎正信さんのコメント


 突然で済みません。今井先生へ送られたものが転送 されたので、先生のHPを大変
興味深く読ませていただきました。
 確かに高齢者の透析導入については問題が多く、まじめなドクターは皆悩んでいる
問題かと思います。私が昨年の九州地区の腹膜透析の研究会で、高齢者(いわゆる老
人病院)の腹膜透析導入を発表したら、数人のドクターから”適応があったのか?”
とかなり強い口調?で質問がありました。私もいろいろと応えたのですが、ある透析
専門のドクターから、透析導入を決めるとか決めないとか、そのような論議はドクタ
ーが決定すべきものでない。判例(精神患者の透析導入で宮崎の病院が敗訴になった
とか?)(注)で、透析は医療の一つであるから、やることを前提に考えなくてはな
らな いという旨の発言をされたことを覚えています(言い回しは少し異なるかと思い
ますが)。
 よって、適応の有無という発言を患者さん並びに家族にするときは、よほど慎重に
すべきことではないかと思います。実際には、各先生が述べられたようなことで個々
の症例について対処しておりますが、基本的に腎不全その物に対しては、透析という
治療法があるわけで、やれるところまで、やってみますか?あるいはやってみましょ
うか? ということで問いかけることになるかと思っています。ただ、高齢者は透析導
入しても予後は悪いのは事実であり、それだから透析の適応はないとはいえないでし
ょうし、 医療費の問題や、生きる意思表明living willの問題など深いものを含んでいる
かと思います。

(宮崎さんのコメントで白浜が考えたこと)
 確かに、こちらから適応の有無と言う発言をすることは慎重にしなければならない
でしょう。()で引用した裁判にもあるように、最初から医師の判断だけで、血液
透析の生存機会を失わせることは許されないのでしょう。
 しかしながら、今まで、慢性腎不全=透析という対応しか考えなくて、今回その透
析に消極的なという患者がいて、それに対してどうするのが一番いいのかということ
を主治医として考え、透析をした場合の苦痛やしなかった場合の苦痛についての情報
を集めてお話し、再度本人や家族の意見を聞いて、結局再度紹介して透析を含めて考
えると言う方向へ向かったのですが、最終的な結果は同じことであっても、その結論
へ至る過程が違ったのではないかと考えています。最初から医師がすべてを判断する
のではなく、患者の意見も尊重し、患者が最善の判断ができるような情報を提供して、
最終的な判断を一緒に決めていくという私が考える臨床倫理の考え方を、実践できた
のではないかと思っています。



このケースについての外国からのコメント(英文)
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