事例1:心カテ中に心筋梗塞を起こした事例 70歳男性 元市役所職員、定年後無職

現病歴:3年前から時々、胸痛はあったらしいが、5分もしないでよくなり、もともと病院嫌いできちんと治療を受けていなかった。ある朝、外出先で、急に強い胸の痛みが出現。改善しないため、救急車で総合病院の救急センターへ搬送された。救急車中での心電図では軽度のST低下があったが、発作から15分後、救急センターについた時には、痛みは軽減し、採血では心筋梗塞を疑う異常や、心電図でも明らかなST変化はなかった。

経過から、不安定狭心症が否定できないため観察入院、すぐニトロールの内服が始まり、翌日心臓カテーテル検査をすることになり、検査のための説明がなされた、治療法、その効果、リスクについて説明され、承諾書に本人と家族が署名した。心臓カテーテル(以下心カテ)検査については、本人も理解していたようで見舞いに来た親戚に「心臓の血管が細くなっている可能性があるため、腕の血管から管を通して心臓の検査をする。手術はいやだが、検査だからしないといけないね。検査のあと、必要であれば、狭くなった血管を風船で広げる、あるいは血液を溶かす薬を入れる治療をすることになるかもしれない。でも完全につまる前に見つかってよかった。」といって検査室に入った。

ところが、検査開始10分後に、病棟で待っていた患者家族に、すぐ検査室に来て欲しいと連絡があり急いで駆けつけたところ、担当医から、「心カテ検査を始めた所、予想しなかった左冠状動脈起始部のほぼ100%近い閉塞が認められ、これ以上カテーテル検査を続けることは危険なので中止し、胸部外科に連絡して、緊急の冠動脈バイパス手術をできるように準備してもらっている。(冠動脈は99%狭窄があっても検査前の症状がひどくないことも1%以下の確率である)」という説明があり、家族も手術を受ける方向で本人に説明することを了承したが、患者は検査をするだけだと思って検査室には入室しており、元々病院(注射や点滴なども)が苦手なためか、「今日の検査の結果、緊急の心臓の手術が必要になりましたので、ちょっとお話したいのですが」と話されたとたん、「別の部屋に人を待たせているから手術はできん」と言い大声を出して興奮し、周りのスタッフに押さえつけられた。ところがその興奮で、再度、胸痛発作が起き心停止、心臓マッサージ、電気ショックなど救急蘇生を40分以上されたが回復せず、死亡が確認された。
 家族は、なぜ、直前まで元気だった人が、急に命を落としたのか。検査をすると説明したのに、急に手術することになったのか納得できない。病院側からは、「急に興奮してベッドから起き上がろうとされ危険だったため、安全のため抑えざるをえなかった。」と説明されたが、興奮させる状況にしたのは誰なのかという気持ちがある。緊急だったとはいえ、説明が不十分で納得できず、スタッフへの不信が残った。しかし、今さら亡くなった人が帰ってくるわけではなく、供養にもならないので何も言わないことにした。もっと前から体の具合が悪かったはずなのになぜ家族として気付けなかったかという後悔もあるらしい。

<検討してほしいこと>
この事例でどのような検査前のインフォームドコンセントと、急変後対応をすれば良いか。


事例1<心臓カテーテル検査について>検討のための参考資料

内科専門医会作成の「よりよいインフォームドコンセントをもとめて」の冠動脈造影検査の説明
http://square.umin.ac.jp/masashi/coronary.html
冠動脈造影検査のリスクの説明についてのメリットデメリット
http://www.nankodo.co.jp/yomimono/hoshinoDr/hoshino04/hoshino04.html
りんくう総合医療センターのかなりくわしい患者さん用の心臓カテーテル検査の説明書
http://www.rgmc.izumisano.osaka.jp/hos/cvm/Patient/kensa.pdf
千葉大学病院循環器内科の心臓カテーテルの説明(合併症の説明が詳しい)
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/cardio/data/kanja/kandoumyaku_kensa.html
インフォームドコンセント 万が一へのお願い 偶発余病へのリスクマネージメント
http://www.myojin-kan.jp/doctor_colm/banzai03.html