東京大学大学院医学系研究科・医学部 倫理委員会において承認を受けた研究
溶血による生化学検査への影響の検索(承認番号3333-19)
- 研究課題名
溶血による生化学検査への影響の検索 - 承認番号,承認日
平成23年11月17日(承認番号3333-19)
- 内容
物理的あるいは化学的刺激により,赤血球中の内容物が細胞外へ漏出することを溶血という.In vitroにおける溶血を血管外溶血というが,これが引き起こると生化学検査へ様々な影響を与える.影響を与える原因は主に二つある.一つは,赤血球内の濃度が血清中より高い物質が溶血によって血清中に漏出し,測り込むため偽高値となるもの(LDH,AST,K,Feなど).もう一つは,溶血によって漏出したヘモグロビンの影響で血清の色が赤くなるため,赤色付近の波長で測定している測定項目が偽高値となるもの(TP,遊離脂肪酸など)である.血管外溶血が引き起こる最も頻度の高い原因は,採血時の手技の誤りである.そのため,提出された検体に溶血が認められ,検査オーダーの中に偽高値となる項目が含まれる場合は採血し直しとなる.しかしながら,患者の状態によっては再採血が困難な場合も多く,また,外来患者においては,溶血が発覚した時には帰宅している場合もあり,診療に支障をきたすこともある.現在,臨床化学検査室では,溶血が引き起こった場合,影響のある項目に“溶血の影響あり”という結果コメントを付して臨床へ報告している.しかし,それによって,どの程度正の影響を与えるかは知られておらず,臨床医が検査値の解釈を誤る可能性もある.したがって,本研究では,溶血の程度によって,それぞれの項目がどのくらい影響を受けるかを検討したい.さらには,溶血のし易さおよび溶血による影響の与え方の個別性の有無を検索し,日常の検査の質の向上に役立てたい.(大川 龍之介)