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各検査室の紹介
臨床化学検査

T.検査室の紹介
  臨床化学検査では血清または血漿成分中の電解質・無機物質(ナトリウム,カリウム,クロライド,カルシウム,無機リン,血清鉄など),蛋白質(総蛋白,アルブミン),非蛋白性窒素成分(尿素窒素,クレアチニン,尿酸),脂質(コレステロール,中性脂肪など),酵素(CH-E,LDH,GOT,GPT,γ‐GTP,ALP,AMY,CKなど),ビリルビン,C反応性蛋白の検査を担当しています.
  検査のために採血された臨床化学検査用の検体は検体搬送処理システムにより自動的に遠心分離,分注などの前処理がされ,途中の大型自動分析装置により依頼された多項目について同時に,特異的な反応を用いて正確にそして精密に測定されます.測定結果はコンピュータでチェックされた後,リアルタイムに報告されます.測定が終了した検体は2週間,冷凍庫に凍結保存され,必要に応じて追加検査や再検査等がされます.

U.検査項目と臨床的意義
  臨床化学検査で実施している検査項目の中で代表的な項目の生理的意義と臨床的意義は次のとおりです.

1.電解質・無機物質
  1)ナトリウム(Na),クロライド(Cl)
  ナトリウムとクロライドは血漿の浸透圧保持に重要な働きをしている.したがって,血漿中のナトリウムとクロライドは生体調節によって一定の濃度に保たれている.ナトリウムとクロライドは食事により摂取され,多くは尿中に排泄される.血漿濃度は腎臓で水分と塩類の排泄で調整される.この水分の排泄は抗利尿ホルモンによって浸透圧の調整がされ,塩類の排泄にはアルドステロンによって調整されている.アルドステロンの過剰ではナトリウムとクロライドの排泄が抑制され,血漿濃度は高値となる.
  ナトリウム値とクロライド値の変動は上記のホルモンの異常により起こるほか,腎臓の機能障害によって起こり,ナトリウム値とクロライド値の低下は重症の腎臓の機能障害時にみられる.

  2)カリウム(K)
  カリウムは細胞の活動,神経・筋の興奮性発揮に重要な働きをしている. 血漿中のカリウム値は腎臓でのアルドステロンによる排泄調整によって調整される.アルドステロンの増加で低値となり,副腎皮質機能低下(アジソン病)では高値となる.また,重篤な腎臓の機能障害では高値となる.

  3)カルシウム(Ca)
  カルシウムは細胞内での酵素の活性化や神経や筋の興奮性に関与する.人体中のカルシウムの99%は骨,歯などの硬組織に存在する.これらと血漿カルシウムとの間には交換が行われ動的平衡状態にある.
  血漿カルシウムの値は副甲状腺ホルモン(PTH)により,腸管からの吸収促進,尿への排出抑制,骨からの溶出などにより調整されている.副甲状腺機能亢進症では高値になり,機能低下症では低値になる.ビタミンDも腸管からの吸収の促進するため,ビタミンD過剰症では高値に,欠乏症では低値になる.

  4)無機リン(IP)
  無機リンはほとんどがカルシウムやマグネシウムと結合して骨組織に存在し,他に広く細胞成分として存在する.
  無機リン値はカルシウムの代謝と関係し,副甲状腺ホルモン(PTH)とビタミンDに調整される.副甲状腺ホルモン(PTH)の機能亢進ではカルシウム値とは反対に低値になり,ビタミンDの過剰ではカルシウムと同じに高値になる.重篤な腎臓の機能障害,腎不全では排泄は障害され高値になる.

  5)血清鉄(Fe)
鉄は臓器での貯蔵鉄,血漿の運搬鉄,生理機能を持つ機能鉄として作用する.
  鉄の代謝で重要なのは骨髄での赤血球ヘモグロビンの合成である.したがって,血清鉄の値は血液疾患との関連が強い.食事での摂取不足,あるいは出血によるヘモグロビン鉄の損出では鉄欠乏性貧血になり,低値になる.ヘモグロビンの分解で鉄が遊離される溶血性貧血では高値になる.悪性貧血,再生不良性貧血では高値になる.急性肝炎では貯蔵鉄が放出され高値にな
る.

2.蛋白質
  1)総蛋白(TP)
  血清中の総蛋白のうち約60%がアルブミンと20%はグロブリンである.アルブミン,α1-,α2-,およびβ-グロブリンは肝細胞で,γ-グロブリンは形質細胞で合成される.これらの蛋白は合成・崩壊・体内への分布と体外への漏出が行われ,動的平行が保たれている.
  血清総蛋白値の変動は多くの病態や生理的変動を反映している.構成している蛋白の分画の精査と他の検査項目との組み合わせによって診断される.
  血清総蛋白の低下は栄養失調や尿中に蛋白を喪失するネフローゼ症候群でみられる.肝障害で合成能が低下した場合は低アルブミンとなる.上昇は,多発性骨髄腫や脱水などでみられる.

  2)アルブミン(ALB)
  アルブミンは肝臓で合成される.生理的作用は(1)栄養蛋白で,栄養不良では低値を示す,(2)物質の運搬を作用とし,ビリルビンや薬剤と結合して運搬する,(3)膠質浸透圧の維持などである.
  アルブミンの低下は合成材料の不足や肝臓での合成能力の低下,および,血管外あるいは尿への漏出などでみられる.

3.非蛋白性窒素成分
  1)尿素窒素(BUN)
  尿素は蛋白代謝の最終産物として肝臓で合成されたのち,腎臓で尿中に排泄される.従来から尿素の値を尿素窒素として表している.
  腎臓が機能不全になると尿素の排泄能力が低下し尿素窒素値は高値となる.すなわち,腎不全,尿毒症,などで高値になる.腎外性因子については高蛋白食,消化管出血,脱水などでも高値になる.肝硬変で肝機能がひどく低下した状態では尿素の合成が十分にされなくなり低値になる.低蛋白食でも低値になる.

  2)クレアチニン(CRE)
  クレアチニンは筋肉中で,エネルギー代謝に携わっているクレアチンリン酸の最終代謝産物として尿中に排泄されるものである.
  クレアチニンの上昇は腎前性因子,腎性因子,腎後性因子で発生する.すなわち,脱水,心不全,ショック,糸球体腎炎,間質性腎炎,尿管結石で軽度に高値になり,腎不全では高値になる.筋ジストロフィーなどの筋疾患では低値になる.

  3)尿酸(UA)
  尿酸は核酸中のプリン体の最終代謝産物である.尿酸値が高値になるのは,食事性高尿酸血症,白血病や骨髄腫などの細胞破壊性高尿酸血症,痛風時の高尿酸血症,糸球体腎炎や妊娠中毒や尿路閉塞などの腎性高尿酸血症などの他,特例では先天性代謝異常症Lesch-Nyhan症候群などである.

4.脂質
  1)コレステロール(TC)
  生体内のコレステロールは食事由来の外因性コレステロールと肝で合成される内因性コレステロールがある.合成の中心は肝臓である.
  動物性脂質を多く含む食事を長く続けると高コレステロール血症になり,動脈硬化,特に冠状動脈硬化を来たす.家族性高コレステロール血症,代謝異常疾患,内分泌疾患(甲状腺機能低下症,Cushing症候群,末端肥大症),高値になり,内分泌疾患(甲状腺機能亢進症,Addison病,下垂体機能低下症),肝実質障害,吸収不良症候群,糸球体腎炎, Taniger病などで低値になる.

  2)中性脂肪(TG)
  食事により摂取された中性脂肪は生体内で形をかえて移動し吸収され,肝臓,脂肪組織,末梢組織に摂取される.エネルギー源が不足した場合など,エネルギー源として消費される.多くは再度,中性脂肪に合成されてリポ蛋白として血中に存在する.
  動脈硬化症,心冠動脈疾患では高値が見られる.糖尿病では異常高値が見られる.甲状腺機能低下症では高値になり,機能亢進症では低値になる.肝実質障害,アジソン病,バセドウ病,慢性副腎不全,心不全では低値が見られる.

  3)高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)
  HDL‐コレステロールは血管壁などの末梢組織に蓄積された遊離型コレスエロールを特異的に取り込みコレステロールの沈着や蓄積を抑える抗動脈硬化作用をする.この低下は冠動脈心疾患の危険因子として扱われている.

5.酵素
  1)コリンエステラーゼ(CH-E)
  CH-Eは生体内でコリンエステルをコリンと有機酸に加水分解する酵素である.肝臓、膵臓、肺、腸に含まれるが、血液中に存在するのは、ほとんど肝臓で作られたものである。
  CH-Eは慢性の肝実質障害性疾患すなわち肝硬変で低値になる.その他,慢性肝炎,重症消耗性疾患(悪性腫瘍,うっ血性心不全,貧血など)の全身栄養状態が低下している場合は低下する.また,有機リン製剤(農薬,殺虫剤など)の中毒で低値になる.ネフローゼ症候群では高値になり,脂肪肝,甲状腺機能亢進でも高値になる.

  2)乳酸脱水素酵素(LDH)
  LDHは生体内で乳酸とピルビン酸の可逆的移行反応を触媒する酸化還元酵素で,多くの組織に存在する.特に心,肝,腎,肺,脾,血球に多く存在する.
  LDHは多くの組織に広く分布するため,LDHが高値を示してもそれのみでは診断的価値が低く,各種疾患診断の補助データの一つである.心,骨格筋,肝,血液などの臓器の炎症,壊死,腫瘍で細胞損傷がみられる場合に上昇し,心筋梗塞,肺梗塞,肝炎,進行性筋ジストロフィー,白血病,肝癌で高値になる.

  3)グルタミン酸オキザロ酢酸転移酵素(AST:GOT)
  グルタミン酸ピルビン転移酵素(ALT:GPT) AST,ALTは多くの組織に存在する酵素である.特に,ASTは心筋,肝に多く,ALTは肝,腎に多い.その働きはTCAサイクルにおける代謝産物とアミノ酸との間のアミノ基の転位を調整することである.
  AST,ALTは組織の損傷によって細胞内から逸脱して血中に大量の酵素が放出され血中の活性値が高値となる.心筋障害や筋疾患ではASTはALTよりはるかに高値になる.急性肝炎ではASTとALTは共に急上昇して,ピークの活性値はALTが高値になる.一般的に慢性肝炎ではAST<ALT,肝硬変ではAST,ALT共に持続的に血中に放出され,傾向としてAST>ALT,肝癌ではAST>>ALTになる.閉塞性黄疸でもAST,ALTは上昇する.腎疾患ではAST,ALTはあまり高値を示さない.

  4)γ‐グルタミルトランスペプチダーゼ(γ‐GTP)
  γ‐GTPはγ‐グルタミルペプチドのγ‐グルタミル基を他のアミノ酸またはペプチドに転位させる作用を触媒する酵素である.γ‐GTPは組織では腎に特に多く,次いで膵,肝,胆,脾,小腸,脳,心筋に分布する.
  γ‐GTPはALPと共に臨床的には肝・胆道酵素と扱われ,胆汁うっ滞で上昇し,閉塞性黄疸,胆汁うっ滞性肝障害,胆汁性肝硬変などで高値になる.また,アルコール性肝障害および薬物性肝障害でも高値になる.γ‐GTPが多く存在する腎疾患については上昇しない.妊娠について低値を示す傾向がある.

  5)アルカリ性ホスファターゼ(ALP)
  ALPは生体内では多くの組織に分布し,特に腎,小腸,骨,胎盤,肝,肺に多く存在する.ALPの生体内ではリン酸モノエステルとアルコールの転位作用を触媒する酵素であるが,その他の役割については不明な点が多い.
  ALPが骨疾患,肝・胆道疾患について高値を示す.骨疾患ではくる病,骨軟化症,骨肉腫,癌性骨転移,Paget病,副甲状腺機能亢進症で高値になる.小児については基準範囲(正常範囲)が成人より高く,骨折中も高値になる.肝・胆道疾患では閉塞性黄疸で高値になる.また,各種の悪性腫瘍でも上昇がみられる.甲状腺機能低下症,悪性貧血で低値になる.

  6)アミラーゼ(AMY)
  AMYはデンプンなどの多糖を加水分解する酵素である.血中のAMYは膵臓と唾液腺由来である.上昇する機序は膵臓や唾液腺の炎症,腫瘍や結石による閉塞による逸脱,腸からの漏出,腎からの排泄傷害による.血中AMYは急性膵炎や慢性膵炎,膵臓癌,肝胆道疾患,腸閉塞,腹膜炎,慢性腎不全,急性耳下腺炎,外科手術,アミラーゼ産生などで高値となる.

  7)クレアチンキナーゼ(CK)
  CKはATPのリン酸基のクレアチンに転移する反応とクレアチンリン酸のリン酸基をADPに転移する反応を触媒する酵素である.TCAサイクルや嫌気的解糖系で生産されたATPのリン酸をより安定なクレアチンリン酸の形で貯蔵し,必要に応じてエネルギーとして用いるために存在する.生体内では骨格筋,心筋,脳に存在する.
  CKは神経疾患では筋シストロフィーで著明に高値になる.多発性筋炎,筋肉障害,手術でも高値になる.心疾患では心筋梗塞で高値になる.

6.ビリルビン ビリルビン(TB,DB)
  ビリルビンは血清の黄色色素の主成分である.ビリルビンには血漿中でのアルブミンと結合した間接ビリルビンとグルクロン酸と結合した直接ビリルビンからなる.臨床検査では総ビリルビン(TB)と直接ビリルビン(DB)の測定を行っている.
  血清中のビリルビンが上昇すると色調は黄色を増す.全身の組織が黄色を呈し,皮膚,眼球はが黄染が観察され黄疸となる.黄疸には赤血球の破壊が亢進してビリルビンの生成が増加して間接ビリルビンが高値になる溶血性黄疸,肝細胞機能が低下したために間接ビリルビンと直接ビリルビンが増加する肝細胞性黄疸(肝実質性黄疸),および,胆石や異物で胆管が閉塞されて直接ビリルビンが高値になる閉塞性黄疸に分類される.

7.C反応性蛋白(CRP)
  CRPは生体内で炎症が発生すると血液中に増加する急性相反応物質の一つである.
  CRPは病原微生物の侵入,循環障害などによる細胞や組織の傷害・壊死,手術や外傷,免疫反応傷害などで炎症が発生したとき血中に速やかに鋭敏に高値になる.疾患についての特異性は乏しく,病気の活動性や重症度を良く反映する.

参考文献  新臨床検査技師講座 9 「臨床化学 第3版」,医学書院.
        LAB DATA 「臨床検査データブック」,医学書院.

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