教授からのご挨拶

明日の世界を担う子どもたちを守り、
新しい小児科学を担う、優しさと力強さと
柔軟さを持った小児科医を、
一人でも多く育てたい。
熊本大学大学院生命科学研究部小児科学分野
教授 中村 公俊 / Kimitoshi Nakamura
私たち小児科医は、明日の世界を担う子どもたちを疾病から守り、成長と発達を見守り、子どもたちの権利を守る大切な役割を担っています。子どもの総合内科医として幅広い分野を理解し、専門領域の医師として深い知識を持つことを求められています。同時に私たちは、明日の小児科学、小児医療のために、症例をよく理解し、研究を重ね、世界に発信する科学者でもあります。さらに、後進を育成し、医学教育を担う教育者でもあらねばなりません。そしてその根本には、子どもとその家族に対する優しさと、医療に立ち向かう力強さ、社会と広く関わる柔軟さを持つことが求められています。

 

熊本大学小児科は、1897年に私立熊本医学校として始まり、100年をはるかに越える歴史を持ちます。専門領域として新生児、先天代謝異常、内分泌、血液、腫瘍、免疫、腎・泌尿器、神経・筋、膠原病・リウマチ、消化器、小児精神、思春期、小児救急集中治療など、多くの分野の診療をおこなっており、同時に高い専門性を持つ医療に取り組んできました。熊本大学小児科で研鑽を積んだ医師は、熊本県のみならず、全国の大学、研究所、病院、自治体などで、教授、部長、医長や所長、スタッフなどとして活躍しています。同門会員は400名以上、医局員も約170名にのぼる、地方大学の枠を超えたアクティビティを保っています。

 

熊本の小児医療には、特徴が3つあります。一つ目は連携施設や関連施設の役割分担です。小児科の幅広い分野をカバーするために、それぞれの施設が得意な専門領域を持ち、施設間で患者を紹介しながら診療をおこなっています。そのため研修施設には必ず特色があり、小児科専攻医はこれらの施設をローテートすることで、経験すべき疾患をほぼすべて研修することができます。2つ目は開業医との連携です。夜間小児救急医療に開業医が参加する診療体制によって、多くの連携施設、関連施設では2~3次医療に集中し、高度な専門医療をおこなうことができます。また、小児在宅医療、児童・思春期精神医療などでは、開業医が加わった診療体制が構築されています。3つ目は多彩で実際的な教育プログラムです。多くの専門領域の勉強会が開催されており、専攻医はどの勉強会にも自由に参加できます。さらにNEJMのケースレポート抄読会や研究志向の抄読会などにも多くの専攻医が参加しています。

ところで、私たちは2016年4月に熊本地震を経験しました。熊本県内の小児医療は大きな被害を受け、特に新生児医療や小児循環器医療などに長期にわたる影響が及んでいます。しかし、これまで培ってきた協力体制と信頼関係が基礎となり、小児医療はいち早く立て直しが進みました。関連病院のメーリングリスト、開業医も参加した病院間の負担の調整など、顔の見える関係によって結ばれた医療が十分に力を発揮することができました。これらの活動については、平成28年10月に開催された第140回熊本小児科学会の「熊本地震、その後」と題したシンポジウムにおいて報告がなされました。また、厚生労働科学研究費補助金による「平成28年度熊本地震における妊産婦、褥婦、新生児、小児への支援に関する実態調査」においても詳細に報告しています。

 

私は2017年9月1日付で、遠藤文夫名誉教授の後任として第13代の熊本大学大学院小児科学分野教授に就任しました。大学の使命である診療、研究、教育に全力で取り組み、新しい小児科学を担う人材を一人でも多く育てたいと考えています。小児科に興味を持つ医師、医学生が私たちの小児科専門研修プログラムや小児医療・研究に参加してくれることを心から願っています。

■日本小児科学会/専門医・指導医  ■日本人類遺伝学会/臨床遺伝専門医・指導医
■医学博士

略 歴

1990年  熊本大学医学部医学科卒業
      熊本大学医学部附属病院小児科 医員
1992年  熊本大学大学院医学研究科博士課程入学
1996年  熊本大学大学院医学研究科博士課程卒業
      カナダ、アルバータ大学医学部生化学教室博士研究員
2000年  熊本大学発生医学研究センターリサーチアソシエイト
2001年  熊本大学医学部附属病院小児科 助手
2007年  熊本大学医学部附属病院小児科 助教
2009年  熊本大学医学部附属病院小児科 講師
2014年  熊本大学大学院生命科学研究部小児科学分野 准教授
2017年  熊本大学大学院生命科学研究部小児科学分野 教授
      現在に至る
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