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精神科研修をする意義(「問診」への考察)


 精神科で何を学ぶか、すべての対患者診療には精神科の問診感覚は必須です。臨床研修制度でなぜ必修化だったのかのも以下の理由からだと思います。

・精神科の問診は医療面接の基本。
 ⇒面接の目的は2つ。

@ 情報収集 (病歴)
A 面接自体の癒し効果


 この2つを最も意識して診療している専門分野でしょう。
 プライマリケア医/家庭医にとっても必須の技術です

 病気(disease)のタイムコースも大事ですが、それに付随して生じる患者の気持ち(illness)も大事であり、その感情の波・タイムコースを分析することが患者の対話には不可欠である。感情の波をより正確に捕らえるには、その患者の人生・生活・考え方を知る必要がある。急性期疾患での痛みでさえも同様である。詳細はPCM pacient centered medicineを調べてください。

@ 情報収集(病歴)

 脳は一生変化(成長〜退化)し続ける臓器であり、その変化は周囲との環境との相互作用で成り立っている。環境とは、その患者の家族関係であり、友人であり、人生観であり、服装であったり、多種多様である。つまり、精神科の病歴とは、出生(しばしば出生以前)から現在に至るまで全てなのである。

 しかし、患者のすべての思い出を話していたら、外来ではいくら時間が合っても足りない。実際には、環境との相互関係をもっともよく受ける点を絞って問診していく。例えば、正常産か(先天性奇形の有無、低出生体重児、巨大児、難産、母親に合併症ありなど)、幼少期はどういう子どもだったか(発達遅延)、小学校入学して、なにに興味をもっていたか、中学〜高校(思春期)、一人暮らし始めてどうか、仕事はどうか、結婚してどうか、友人や家族の冠婚葬祭での反応はどうか、などである。人生の変革期はだいたい決まっている。多くの場合は、環境の変化に対応しきれないことによる心身反応が初めの症状である。また、上記の環境との相互作用の過程で、そもそも環境の変化に弱い人々がいる。例えば、MR(精神発達遅延)や病前基質(うつ、統合失調症など)や性格(潔癖症、完璧主義者など自分と環境の関係を限定する方向が強い性格)では、発症しやすいといわれている(脳が一生変化していく臓器と考えれば至極当然のことである)。


A面接自体の癒し効果

 精神科では特に顕著であるが、一般外来でもまったく同様である。「よく聞いてもらった」という実感を患者がもてることが大事であるが、それは絶対的な時間に必ずしも一致しない。例えば、患者の訴えは2分間で多くは話しきってしまうという報告もある。また、同じ話が2周目に突入したら、話をさえぎっても満足度に影響はあまりないという報告もある。30分間頓珍漢な問診対話よりも、3分間の的確な問診対話のほうが患者は満足して帰っていくものである(時間があるにこしたことはないが・・・)。

 不眠症の患者が「眠れない」と外来にやってきた。ただ、「はい、睡眠薬飲んでみて」と処方するよりも、「2分話を共感的に聞き、それだけ頑張っているのだから、体も休めてあげよう。心が緊張していると体も休まらないから、気持ちが楽になるのを手伝う薬を試してみようか」などのほうが、効果あることを実感している。プラセボじゃないか!と否定する方もいよう。しかし、プラセボを馬鹿にしてはいけない。いや、むしろプラセボこそが臨床であり、医療の本質なのだと思う。病は気からは本当と思う(だからといって医学知識は医者としての足腰であり必要であることには変わりない)。薬+α(面接)でもよいが、面接+α(薬)でも意識としてはよいかもしれない。もちろん、医者自体の得手不得手によるが。


<まとめ> 精神科で学ぶこと

・ 医療面接の基本:
・ 軽症の広汎性発達障害や精神遅滞は内科ではしばしば見逃されている(指摘がいらないかもしれない)が、薬のコンプライアンスがどうも悪い、いまいち理解が遅いなど、問題になっていることもある。
・ 相手の精神レベル(=脳の発達段階)に合わせた、問診面接を意識できるようになる。精神遅滞MRの患者は、みため中年でも中身は5歳レベルのこともある。わずかな環境の変化に対して不安になり、取り乱し、錯乱するのである。


 2009.9.2記載