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introduction:教育・共育・学習



私の教育目的は、特に「人を育てる人」を育てることである。このご時勢、教育が最後の砦だと感じているからである。また、どちらかといえば卒後教育よりも卒前教育に興味が強い。その理由は、医学知識だけでなくできるだけ若い時期にこそ伝えたいことが多くあるからである。

特に現在の地方の病院を潰そうという時代時代背景の中、病院そして医療は当然ながら医者だけでは成り立たないということ、経営・行政を意識できないと医者という職業としても危険であること。そして、病気が急性期から慢性期中心に移行し、「生活圏の医療化(医学の進歩は医療の範囲を広げ、共同体の崩壊により様々な問題に対する解決能力が低下し、国民の「自己解決の放棄」ともいうような状況が生じている。そして、その国民のニーズに合わせて、医療は生活圏を取り込み侵食・補完した。結果、子育ての小児科相談など以前は医療で取り上げなかった問題にまで医療に求められる風潮になっている。)」が進み、一昔の「技術」さえあれば人間性は良くなくてもそれで済んでいた時代ではなく、人間性・社会性がますます求められているといった背景を感じている。こうした社会情勢の厳しさの中、医者になりたくなくなる、または医者を辞めたい、うつ・過労死などを危惧する医療従事者が増えている。彼ら/彼女らがどう医療と接していくか、医師免許の意義(活かせる職業は他にもある、極論すれば使わなくたってよい)をよい意味で割り切れるかという道が示すことも医療従事者の心の安定のために重要と思う。逃げ道を持っているということが続けるエネルギーになる。

また、例えば、医学の勉強の方法、医療とはなにか、社会/時勢の中の現状、よい遊び(身内の酒盛・部活・バイトだけでなく、一人旅や病院と関係のない人との触合い)などを考え・経験することを望む。

evidenceでなくEBMを学ぶことが、医学というscienceでなく「医療」という「モノ」を学ぶキッカケとなりうるよいツールだと思っている(特にSTEPの1と4:患者の把握と患者への適応)。医療はあくまでツールであるという、医療に対する「手段の目的化」を防ぐためにも賦活剤となることを信じている。この意義において現在EBM勉強会を開催している。

自分自身もちろん結論など出ていないし、生きている間に少しでも分かればよいかなといった次第だが、少なくとも失敗談からの成功談を知恵として後輩に伝えていくのは年配者の努めであり、義務でもあると考えているためである。せめて皆選挙には行ってほしいと思う。

そしてできれば、医学生だけでなく小学生、中学生、高校生といったさらに若い世代や一般国民が「医療を考える」機会を増やしたい。「国民教育」とでも表現するのか分からない。が、医療は国民―医療関係者―行政のバランスで在り、医療関係者や行政への変化の要望が強い現在において、国民側への医療に対する啓蒙も必要と考える。例えば、医療は共通の財産であり、その中でどのようにして医療の需要と供給のバランスをとっていくかなど。

また、一部のエリートがよい臨床家になっても日本に医療はよくならない。すべての医者がよい医者にならないと日本全体の医療はよくならない。自分独りが10頑張るより、10人に伝えて10人に1ずつやって頂いた方が効率がよい。社会全体の利益を考えるならば、「全体の底上げ」は是非やりたい。一方、gifted adultへの教育も忘れてはならない。時代を引っ張る(引き戻す?)のは彼らなのだから。

教育専任医師はまだ日本ではあまり認知されていないこと。そのため、1つの優れた技術分野があることなしでは周囲から認められないと考える。この道に入るには、まず医者としての5感を磨くトレーニング(技術が進歩しても医者の能力の基礎は観察力・問診・身体所見だと思う)やpresentation skillのトレーニング、なにか専門分野(専門医という意味ではなく)を得てからのほうがよいのかもしれない。少なくとも若い体力のあるうちに「鉄は熱いうちに打て」のように体に染み込ませた方がよいとも考える。初期研修はその意味でも重要である。ただ、熱く打ち込みすぎて(打ち込まれすぎて)「過労死」をしないためにも、自分の身は自分で守れるようにしたい。

私の知る限り、日本の大学医学部では優れた医学教育者が少なく、研究の傍らでしか医学教育をしない(できない・やり方が分からないのも事実)医師達の犠牲として長い間苦しんできたのはやる気に満ちた医学生達であり、その結果十分な教育を受けられなかった医師の診療を受ける患者がひいては苦しむこととなる。やはり効率良く、質の高い教育者を数多く排出するには教育を専門とするための専門研修が必要だと考える。
 
 ただ、結局勉強は自分でするものであって、教わるのが目的ではない(詳しくは「*学生への提言で」)。


2007年9月記載