labquiz ラボクイズ-06(labquiz)

37歳女性
主訴 慢性咳漱
喘息、アトピーの既往、家族歴なし。タバコ12本x15年、現在禁煙
1996年3月ごろから乾性の咳出現。近医での鎮咳剤無効なため、当院受診胸部レ線で全肺野にスリガラス陰影あり、血液所見などから好酸球性肺炎と診断された。入院安静のみで軽快。IgE 170IU, RASTすべて陰性。ペットやカビなどの関与など精査されるも原因不明。このときの第1回の気道過敏性試験は陰性。退院後、一ヶ月ごろから再び乾性咳漱出現。胸部レ線は正常で、好酸球は軽度の増加にとどまっていた。7月に第2回の気道過敏性試験を行ったところ、メサコリン1250μg/mlにて明かな陽性を示した。咳喘息と診断し、ベクロメサゾン400μg/日を開始し、改善をみた。9月に台風の到来と一致して喘鳴とともなう喘息発作がおこり、テイフィリンの点滴静注も必要であった。その後は順調に経過。肺の好酸球増多のピークには気道過敏性を示さず、好酸球が正常上限まで低下してから気道過敏性が顕在化した点が興味深かった。
クイズ解答06
慢性咳漱の原因として、喫煙、後鼻漏、胃・食道逆流現象などが重視されているが、気管支喘息の一亜型である咳喘息(cough variant asthma, CVA)も重要である。
CVAについては当初の報告にもどういう症例を含めるか若干の混乱はあったが、今日その用語の臨床的な有用性は認められているといえる。今回の陽性例7例では全例ステロイドの吸入療法が有効で、日常生活上も満足がみられ、一方陰性例では咳の継続がみられる例が少なくなかった。こうした陰性例は藤村らのいうアレルギ−性咳の症例と思われるが、今回はメサコリンの吸入試験のみによる成績であり、ヒスタミンや咳試験において報告のあるカプサイシン誘発試験は行っていないので、詳細は不明である。将来、より系統的にこれらに症例の病態分類が行われることが期待される。

 まとめ
 当院の咳喘息症例について検討し、気道過敏性試験による診断が治療選択と有効性に反映され有用であることを確認できた。
 文献
1) Corrao WM, et al.: Chronic cough as the sole presenting manifestation of bronchial asthma. N Engl J Med 300:633, 1979.
2) Fujimura M, et al: Sex difference in the inhaled tartaric acid cough threshold in non-atopic healthy subjects. Torax 45:633, 1990.
3)藤村政樹:アトピー素因を有する咳漱患者の臨床像ーいわゆるアレルギー性気管支炎ー アレルギーの臨床9:66、1989。

ラボクイズ
東京大学医学部附属病院検査部
滑川妙子、佐藤道子、佐々木賀津乃、小川桂子、片山弘文、滝沢 始
著者連絡先:滑川妙子
〒113-8655
文京区本郷7ー3ー1
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