labquiz ラボクイズ-04(labquiz)

38歳男性。労作時呼吸困難を主訴に受診。身長 156cm, 体重75kg, 体温39.6、脈拍112、呼吸数23回・分、血圧120・75、室内気吸入下(臥位、採血後室温で30分後に測定)での動脈血ガス分析では、PaO2 60.5 Torr, PaCO2 32.5 Torr, pH 7.402でった。
この結果を評価せよ。

クイズ解答04
基本的なことだが、ガス分析所見を評価する上で、大切な点を述べながら、話そう。
1)測定までの時間: PaO2は血液中の白血球などの好気的代謝の影響で、低下する。30分室温で放置すると、100Toorの場合13Torr低下すると言われる。この影響はPaO2が高いほど大きい。基本的にすぐ測定できないときは、氷水中に保存すべきである。
2)体温:測定装置は37℃の設定で測定するので、高熱時は見かけ上低く、または、低体温だと見かけ上高くなり、実際と異なる値となる。較正にはノモグラム(参照)があるが、便宜的には、39℃でPaO2は15%低く、PaCO2は10%低く、pHは0.03高くでると覚えておけばよい。
3)年齢: PaO2は加齢とともに、低下する。これは、とくに closing volumeが増加して、FRCに近づくことが重要と考えられている。
さまざまな予測式があるが、簡便には、102 - 0.3 x age   が一般的である。
また、下限値をみるには、 102 - 0.4 x age      も便利である。
4)体位: 一般に若年者では、坐位と仰臥位ではほぼ等しいか、仰臥位の方が高いというが、加齢につれて、closing volumeが増加し、またFRCは仰臥位で低下するため、仰臥位の方が低くなる。
5)肥満:一般に肥満者ではPaO2が低いとされる。その補正式としてHertleのものをあげる。
corrPaO2 = 85.9 - 0.39 x age - 0.02 x weight ( kg ) + 0.06 x height ( cm )
以上を参考に、この症例での補正値、およびAaDO2を計算せよ。

ラボクイズ
東京大学医学部附属病院検査部
滑川妙子、佐藤道子、佐々木賀津乃、小川桂子、片山弘文、滝沢 始
著者連絡先:滑川妙子
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