ラボクイズ-01解答(labquiz)
労作時呼吸困難(Hugh-Jones 4度)
解答
問題1:7
問題2: 改善率17 %
解説
問題1:この症例は、入院時pO2 67.4mmHg(安静時)、呼吸機能検査にて%VC61%、 FEV1.0% 51%という混合性換気障害を認めた。β2刺激薬とテルシガンエロゾル8パフ/日を開始したところ、自覚的に呼吸困難感が改善し、他覚的にも呼吸機能検査値に改善が見られたが依然高度の閉塞性障害を示していた。運動負荷呼吸機能検査を施行したところ、70W負荷にてSPo2は92%と良好で、負荷後のpO2は80.2と正常範囲内であった。室内気下の平地歩行140mにてSPo2は85%であったが、この際のpO2は74mmHgであった。睡眠中酸素飽和度のモニターを施行したところ、睡眠時の低酸素血症は軽度で、睡眠中のO2投与は必要ないと考えた。
混合性換気障害のうち閉塞性障害の原因は病歴、胸部Xpより気管支喘息、肺気腫、および両者の合併を疑った。胸部XpとCT上、拘束障害を来す明らかな原因となる所見や肺気腫に一致する所見を認めなかった。
慢性閉塞性肺疾患とは、慢性の気道閉塞所見を示す疾患群の総称で、以下のような特徴がみられる。
1.患者のほとんどに喫煙歴があり、中高年に発症する。
2.慢性に咳・痰(慢性気管支炎の症状)、呼吸困難(肺気腫の症状)
3.理学的所見:ラ音、呼吸音の低下、呼気延長
4.肺機能検査所見:閉塞性呼出障害
慢性気管支炎は臨床的所見(持続する咳と痰)から診断され、肺気腫は病理組織学的所見(形態学的に明らかな線維化によらない肺胞壁の破壊による終末細気管支より末梢部の拡大)で診断される。これらはしばしば類似の臨床症状を呈し、かつその鑑別が困難なことから、まとめて慢性閉塞性肺疾患と呼ばれてきたが、最近ではCTなどの画像診断の進歩などにより、可能なかぎり区別し、なるべく慢性閉塞性肺疾患という言葉を用いないようになっている。また、慢性閉塞性肺疾患は、数カ月にわたって大きく変化することのない呼出障害を主徴とする病態であり、可逆性の気道閉塞所見を示す喘息とは区別されなければならない。本例は咳・痰がほとんどなく、慢性気管支炎は否定的であったが、肺気腫と気管支喘息の鑑別は困難で、両者のオーバーラップが疑われる(図1)。 以上から図1の7の範疇に分類される。
問題2:気道可逆性の意味
気道閉塞の可逆性とは、自然に、または薬物投与などによって閉塞性換気障害の改善のみられることを意味し、気管支喘息の重要な呼吸生理学的特徴である。その一般的な評価として、気道可逆性試験がある。これは最も再現性に優れ、疾患の重症度とも相関する1秒量をめやすに、その気管支拡張剤(最も一般的にはサルブタノールなどのベータ2刺激剤の吸入)使用前後での改善度を、(使用後1秒量)- (使用前1秒量)/ 使用前1秒量 x100から計算する。本例では17%である。この値が15-20%なら可逆性ありと判定することが多いので本例も気道可逆性ありと考えた。
以上、この症例は、慢性に持続する高度の閉塞性換気障害とDLcoの低下を認めたが、CT検査所見でも肺気腫の所見がみられず、また気道可逆性試験で可逆性があり、その後の臨床経過でも肺機能の改善を認め気管支喘息に合致するものであった。現在、本例は気管支喘息として外来治療中である。慢性閉塞性肺疾患のとらえ方を理解する一助になればと考え供覧した。
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