肺拡散能検査における減量法
1)肺拡散能検査における呼気ガス採取法の検討:特に低肺気量症例における減量法の意義
 肺拡散能検査は肺内での酸素の取込の良否の程度を、一酸化炭素を指標ガスとして計測するものである。現在日常的に使用されている測定機器を用いて測定準備から測定終了まで5〜6分で完了し再現性にすぐれていることなどから、肺線維症や間質性肺炎の重症度、予後の判定にも有用とされ、また種々の薬物とくに抗ガン剤による副作用のモニタリングとしても有用な検査の一つとなっている。現在広く行われている一回呼吸法はFosterらによって臨床応用の道が開かれ以来、多くの改良法が報告され1987年、American Thorasic Sociaty ( ATS)より DLco標準法として勧告され、わが国においてもこの標準法によって検査が行われている。
 この検査方法は指標ガスに0.3%CO,10%Heを用い、残気量位まで呼出したあとこの指標ガスを最大吸気位まで吸入しそのまま10秒間の息こらえする。その後、一瞬のうちに呼出する。呼出をはじめてから3秒以内の呼気ガスのうち、はじめの500〜750 mlを死腔洗い出し量として破棄し、つぎの1000 mlを検査試料とし採取する。この検査では最低でも肺活量が1500 ml以上ないと検査ができない。このため拘束性疾患や高齢、低身長のため肺活量が少なく検査ができない場合がある。実際に最近5か月間に当院にて肺拡散能力検査をうけた430件の内144件33%が標準法による測定ができなかった。これらの問題を解決するため1994年に洗い出し量と検査試料の減量法について研究し第41回臨床病理学会に発表した。即ち、測定機器の機構や解剖学的死腔量を考慮して、洗い出し量を300 ml、検査試料を700 mlと設定し、標準法と減量法について比較検討した。結果はn=90 r=0.990 y=1.025X-0.53 と良好な相関が得られた。
 こうした検討結果をもとに、以後当施設では低肺気量の患者にたいして肺拡散能の検査を施行する際この方法を用い、参考値として報告し診療側に役立てていただいている。
 このたび高速応答のマルチアナライザー( CO/CH4 )を使いリアルタイムで肺拡散能を測定することができる Sensor Medics 社の Vmax シリーズにて肺拡散能力を測定する機会を得た。この測定方法によれば、洗い出し量、サンプル量を予め設定する必要がないので、われわれがかつて設定した減量法による測定法の評価が可能と考え、洗い出し量300 mlで十分解剖学的死腔量を洗い出しているか、またつぎの700 mlは拡散に関与した肺胞気であるかを検証したい。以上の検討により、現在は参考値としてしか計測できない低肺気量症例や閉塞性障害の強いケースにおいても、測定機器の機能を最大限発揮することで臨床に役立つ正確な肺拡散能検査が実施できるものと期待される。
ml n=90 r=0.990 y=1.025X-0.53 Sensor Medics Vmax CO/CH4 肺拡散能検査は、肺線維症や間質性肺炎の重症度、予後の判定などに重要な検査の一つとなっている。現在わが国においても標準的に使用されているのは一回呼吸法であるが、本検査では呼気のはじめの500〜750 mlを死腔洗い出し量として破棄し、つぎの1000 mlを検査試料とし採取するため最低でも肺活量が1500 ml以上ないと検査ができない。このため拘束性疾患や高齢、低身長のため肺活量が少なく検査ができない場合がある。そのため減量法が試みられているがその妥当性を検証することが困難であった。今回高速応答のマルチアナライザー( CO/CH4 )を使いリアルタイムで呼気ガスを測定する機器を用いて、これらの諸点を解決しようとする研究である。この測定方法によれば、洗い出し量、サンプル量を予め設定する必要がないので、われわれがかつて設定した減量法による測定法の評価が可能

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