基本検査手順(異常がある症例)
慶応大学病院心機能室 団 真紀子 技師
☆日常よく見受けられる異常所見例
氈D左室径、左房径拡大(血行動態の評価、壁在血栓の有無)
a.左室拡張末期圧上昇を認める場合
・B-Bユ step
・左室流入血流波形のA/E比<1.0、DcT<150msec
・PVflowのA波増強(0.4m/sec以上)
・肺高血圧(PH)の評価
b.壁在血栓は心室瘤に合併しやすい。5MHzセクタープローブにて確認する。
.左室壁厚増大(心筋疾患の鑑別)
a.心アミロイドーシスの心エコー所見
・壁の肥厚
・granular sparkling pattern
・左房径拡大
・弁の肥厚
・心のう液貯留
・左室流入波形の拘束パターン(A/E比<2.0、DcT<150msec)
b.非対称性中隔肥大(ASH)と誤認しやすいもの
・左室仮性腱索、右室肉柱、sigmoid septum
。.右室径、右房径拡大(心室中隔の扁平化、 PH所見の有無)
a.PHの評価
・肺動脈弁エコーの拡張期平坦化(MモードエコーにてA波の消失ないし低下)
・PA flow patternの評価(加速時間の短縮=AcT/ET<0.3、減速脚が上凸型、減速脚での再加速パターン)
・TRから右室収縮期圧の推定(TRPG+右房圧)
・PRから肺動脈拡張期圧の推定(拡張期PRPG+右房圧)
・下大静脈から右房圧の推定
IVC径≦1.6B、呼吸性変動良好=5@Hg
IVC径>1.6B、呼吸性変動減少=10@Hg
IVC径>2.0B、呼吸性変動減少=20@Hg
「.肺動脈内の異常血流(肺動脈弁狭窄症、肺動脈弁閉鎖不全症、冠動脈瘻、動脈管開存)
a.異常血流の分布と時相から鑑別する
」.心腔内構造物で注意すべきもの
a.キアリ網、ユスタシア弁、仮性腱索、調節帯、左室肉柱、肺静脈の出口
、.心タンポナーデの有無(心のう液貯留)
a.心タンポナーデ:心膜腔内圧の上昇
・右室前壁の拡張早期虚脱(collapse):Mモードエコー法で時相の観察
・奇脈(paradoxical pulse):吸気時の右室径拡大と左室径減少、吸気時の僧帽弁E-Fslopeの減少、吸気時の左室流入血流波形E波の減高
・大量貯留時の心臓の振子様運動(pendular motion):拡張期に心臓が前に出てきて収縮期に後方へ移動する
・.心膜の肥厚
a.収縮性心膜炎
・心膜の肥厚、輝度増強
・心室の狭小化と心房の拡大
・心室中隔の拡張早期前方運動 (early diastolic septal motion)
・左室後壁の拡張障害(diastolic plateau)
・心房収縮期の心室中隔ノッチ(atrial systolic septal notch)
・E波の増高・尖鋭化、DcTの短縮、A波の減高(restrictive pattern)
・上大静脈血流パターンの呼吸性変動と左室流入血流波形により拘束性心筋症と鑑別
ヲ.人工弁置換術後のチェックポイント
・弁座の動揺
・最大流速とPHTの確認
・逆流の有無(paravalvular leakage, transvalvular leakage:逆流ジェットに加え、逆流の上流の吸い込み血流をとらえる)
・合併症の有無=PHの有無
上記は1998年1月25日都臨技主催心エコー実技講習会の資料として作成したものです。
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