心エコー検査の実技講習(医学部学生対象)
東京大学医学部附属病院検査部 櫻井 進 技師
☆はじめに
医学部学生を対象とした心エコー検査の内容例
☆1日のスケジュール
午前:心エコー検査の基礎実習(9:00-12:00 教官1名、技官1名、学生6〜7名)
男子学生1名を被検者に見立て、担当教官がプローブを操作し、心エコー画像を描出しながら必要な知識を伝授する(約30分)
(プローブの知識・操作法、基本画面の描出法、各種機能紹介)
その後、学生同士が互いに検者・被検者になる。質問があれば担当教官または担当技師が対応する。
別紙資料
に準拠して全基本断面を描出する(1人あたり20〜30分)。
女性も希望があれば、専用検査ブースを設け、お互いに検査実習する。
午後:実際の臨床例(循環器内科)の見学:13:00-
☆心エコー検査法の説明
(1)プローブ構造と描写画面の関連
超音波プローブは探触子とも呼ばれ、プローブ本体・コード・コネクタよりなる。
本体先端にはシリコン製のカバーに覆われた超音波送受信部分がある。
超音波送受信部分の長辺方向に沿って超音波を発する
クリスタル(発信子)60〜120個が1列に埋め込まれている。
クリスタルが高周波で同時に振動すると超音波が長辺方向前方に面状に照射される。
この伝搬する超音波をビームという。ビーム形状は本来3次元の広がりを持つが、
教科書などでは断面図で表されることが多い。一列に並んだクリスタルの振動開始を
少しずつ変化させることにより、ビーム方向を変化させることが出来る。
心エコー検査用プローブ(セクター型)では、ビーム方向を規則的に変化させ扇形の画像が得られる。
プローブ先端面を第3肋間胸骨左縁上に置き、側面のボッチを患者の右肩に向けると。
画面右に上行大動脈、左に心尖方向が表示され、左室長軸に沿った断面が得られる。
すなわち、プローブ先端面の長辺方向に沿って切断した断面をボッチが右にくるように
真横からみた画像が得られる。
(2)加齢による左室位置と長軸方向の変化
乳児から幼児にかけては立位心(左室長軸と正中線のなす角が小さい)で、
プローブ位置は第2肋間胸骨左縁位置である。
加齢とともに心臓は下方移動し、適切なプローブ位置は第3〜5肋間位に下がり、次第に横位心に近づく。
老人では、第5肋間胸骨左縁にプローブを置き、側面のボッチを右腋窩方向(プローブ長辺と正中線のなす角は直角)に
向けると適切な断面が得られる。また、剣状突起下からのアプローチが有用なことが多い。
(3)心エコー検査における基本断面の描出と説明
心エコー検査の基本手技
(音響窓)−(プローブ方向)−(断面名)
胸骨左縁−左室長軸 −左室長軸
−左室長軸計測
−左室長軸僧帽弁(僧帽弁M-mode)
−左室長軸大動脈(大動脈弁M-mode)
−左室短軸 −大動脈基部(収縮期)
−大動脈基部(拡張期)
−左心耳
−僧帽弁
−腱索乳頭筋
−心尖部
−肺動脈長軸
心尖部 −左室長軸 −左室長軸
−僧帽弁
−大動脈弁
−2腔
−4腔
−右室流入路長軸
心窩部 −正中線 −腹部大動脈長軸
−正中線右側 −下大静脈・肝静脈長軸
−左室短軸(大動脈弁位〜心尖部)
−4腔
胸骨上窩−大動脈長軸(大動脈弓部〜下行大動脈)
胸骨右縁−正中線右側(右房〜心房中隔〜左房)
胸骨右縁高位肋間−正中線右側(大動脈弁〜上行大動脈)
(4)左室長軸の描出しながらの説明
左室長軸断面を描出する上での基準点とは
描出部位のオリエンテーション
(肺静脈・左房・僧帽弁・左室・腱索・乳頭筋・大動脈弁・大動脈・右室・心室中隔・胸部大動脈・冠状静脈洞)
(5)プローブの基本操作法
操作方法の説明と描出画面:傾斜・回転・スキャン・スライド
(6)左室機能評価
M-モード画面の説明
左室内径・左室壁厚の計測、%FS、EF
(7)左室短軸の描出
大動脈弁〜心尖部までのスキャンと描出される構造物
左心耳内血栓の観察とその意義
(8)肺動脈の描出
プローブ位置:左室長軸と短軸の中間位置。ほぼ矢状面となる。
カラードプラ説明
赤色部分はプローブに向かう成分。
青色部分はプローブから遠ざかる成分。
黄色緑色などの多色部分は表示可能速度より速い血流成分。モザイクパターンともいわれる。
パルスドプラ
基線より上側部分はプローブに向かう血流成分。
下側部分はプローブから遠ざかる血流成分。
(9)右室流入路
三尖弁逆流の描出と連続波ドプラ
簡易ベルヌーイ式:圧較差=4V**2
肺高血圧症の判断基準
吸い込み血流の説明
(10)心尖部
・左室長軸
描出される左室壁(心室中隔、後壁)
左室流入路血流(E,A波、僧帽弁逆流の検出)
左室流出路血流
HOCMの形態、S字状心室中隔
・4腔断面
描出される左室壁(心室中隔、側壁)
・2腔断面
描出される左室壁(前壁、下壁)
・逆4腔断面
左室壁運動異常の確認は全周観察が必須。
(11)剣状突起下
・腹部大動脈
パルスドプラによる大動脈弁逆流の評価
・下大静脈・肝静脈
右心負荷の確認。
・左室短軸
経胸壁での観察不全例での有用性
・4腔断面
心房中隔、心室中隔の観察
カラードプラによる欠損孔の観察
(12)胸骨上窩
上行大動脈・大動脈弓部・主要3分枝・下行大動脈
大動脈縮窄症・大動脈病変
(13)検査終了時の諸注意
画面フリーズ・プローブの清拭・次の術者患者のための整頓
上記内容は、本学学生の講義講習内容とは関係ありません。
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