左室流入血流の基礎的知識（lv inflow）
社会保険中央総合病院 角 洋子技師
☆左室流入血流の基礎的知識
左室流入血流（僧帽弁通過血流）波形の見方健常
| E波 | 70〜100 cm/sec | 拡張早期波 |
| A波 | 45〜70 cm/sec | 心房収縮期波 |
| E/A | 1.0〜1.5 cm/sec | |
| DT | 160〜240 msec | 減速時間（deceleration time） |
拡張機能障害
| E波 | 減高 | LV-LA圧較差が少ないため |
| A波 | 増高 | 心房収縮直前のLA圧が上昇しているため左房収縮力は増大 LV-LA圧較差が大きくなるため |
| E/A | ↓ | |
| DT | 240 msec↑ | 左室コンプライアンス低下 LV-LA圧較差が少ないため |
| E波 | 増高 | LA圧上昇 LV-LA圧較差が大きくなるため。 |
| A波 | 減高 | 心房収縮直前のLA圧は上昇しているが左室拡張末期圧またはPV圧上昇のためLV-LA圧較差が小さくなるため。 |
| E/A | ↑ | |
| DT | 160 msec↓ | 左室コンプライアンス低下のためLV-LA圧較差はすぐ均衡し、流入量（減少）に対するLV圧上昇が激しくLV-LA圧較差が増大するため少ないため |
・ピットホール
1.年齢：E/Aは20〜30才では2程度。50才前後で1程度。60才以上で1以下。
DTは加齢により延長。
2.サンプリングボリュームの位置：LA方向に偏るとE波↓。A波↑
3.前負荷の低下もしくは後負荷の増大：脱水・高齢者・透析後など前負荷の低下例では、E/A↓。
血圧上昇など後負荷の増大例では、E/A↓。
4.心電図変化：心拍数が90〜100を越えると、E波とA波が重合し、E波が重合する分だけA波は過大評価され、E/Aは低値となる。沒x以上の房室ブロックではA波の早期出現のため、同様の現象を生じる。
5.呼吸の影響：吸気時には胸腔内圧が低下し、右心系の静脈還流が増大するが、肺静脈還流は減少するため左心系の圧は低下し、E/Aは低値となる。通常は呼気止めにて測定する。
┃生理検査のホームページへ┃