pearl colored ball 7. 循環器疾患の基礎
    (問題)次の問いに答えよ。

      心室中隔
    1. 心室中隔欠損症(VSD)の欠損部位の違いによる分類をしなさい。Kirklin(K)および東京女子医大(J)の両分類で
      K-I(J-I)型VSD:肺動脈弁直下型で大動脈弁が落ち込み大動脈弁逆流を起こすこともある。
      K-I(J-II)型VSD:肺動脈弁下型で1型より下方に欠損口がある。大動脈弁が落ち込むこともある。
      また、右冠尖の逸脱、膨隆が観察されることもある。
      K-II(J-III)型VSD:膜様部型で最も頻度が高い。
      K-III(J-IV)型VSD:心内膜床欠損(ECD)型である。
      K-IV(J-V)型VSD:筋性部型である。
    2. 心室中隔欠損患者の最高血圧が150mmHg、三尖弁逆流最高血流速度が3m/secであるとき、欠損孔における最高血流速度はどの程度と想定されるか。(右房収縮期圧は10mmHgとする)
    3. 肺動脈直下心室中隔に欠損孔がある症例において、注意すべき合併病変は何か。
      僧帽弁、三尖弁などの欠損孔に近い房室弁機能異常の有無。

      心房中隔
    4. 心房中隔欠損症で良く見られる所見は何か。
      心房中隔欠損症では、右心系の血流量が増加するため、
      右房、右室、肺動脈は容量負荷の変化を生じる。
      これらに伴い、心室中隔奇異性運動が認められることもある。
      左心系(左房、左室、大動脈)は小さい。
    5. 心房中隔欠損症の欠損部位の違いによる分類をしなさい。
      一次口心房中隔欠損症、二次口心房中隔欠損症、静脈洞心房中隔欠損症
      一次口心房中隔欠損症では、欠損口が房室弁近辺にあるため僧帽弁および三尖弁閉鎖不全の有無の確認が必要である。

      大動脈弁
    6. 大動脈弁閉鎖不全により2次的に引き起こされる心臓の変化について答えよ。
      重症例では左室だけにとどまらず左房まで
      容量負荷の変化を生じることもある。
      大動脈弁閉鎖不全では、左室の容積および圧負荷がある。
      重症例では左室だけにとどまらず左房まで
      容量負荷の変化を生じることもある。
    7. 大動脈弁通過血流波形について、臨床的な意義は何か
    8. 大動脈弁閉鎖不全の原因として、考えられる障害部位、原因は何か。
      大動脈弁閉鎖不全の原因として、僧帽弁逸脱がある。
      これは収縮期に弁帆が左房側に膨らむ現象である。
    9. 大動脈弁狭窄の原因として、考えられる障害部位、原因は何か。
      大動脈弁狭窄の原因として、リウマチ性変化がある。
      これは収縮期に弁帆が左房側に膨らむ現象である。
    10. 大動脈弁狭窄の重症度判定にはどのような方法があるか。その基準はなにか。
      大動脈弁狭窄の重症度判定には大動脈弁通過血流速の最大速度から圧較差を求める。従来の心カテーテル検査結果との比較をする上で平均圧較差を求めることも重要である。
    11. 大動脈弁弁尖数異常について
      ・無尖弁、単尖弁の違いを説明しなさい。
      無尖弁:弁交連部がないもの。竹筒の節の真ん中を抜いたような形状の弁。
      単尖弁:弁交連部が一つのもの。半円形の紙の一端を閉じたような形状の弁。
    12. 無尖弁、単尖弁、二尖弁、四尖弁、五尖弁それぞれの加齢による弁変化を説明せよ。
      無尖弁、単尖弁は生下時すぐに外科的処置が必要。
      二尖弁は不均等な圧負荷に長期間さらされることにより、弁の石灰化が進み、やがて弁狭窄を引き起こす。
      また、二尖弁のうち、大きな弁は逸脱を起こしやすい。
      四尖弁、五尖弁はそれぞれ弁の閉鎖不全を起こす。

      僧帽弁
    13. 僧帽弁閉鎖不全により2次的に引き起こされる心臓の変化について答えよ。
      僧帽弁閉鎖不全では、左房の容積負荷が起こる。
      重症例では左房だけにとどまらず肺動脈、右室まで
      容量負荷の変化を生じることもある。
    14. 僧帽弁通過血流波形について、臨床的な意義は何か
      ・E波とは急速流入期に左房から左室へ向かう血流波形である。
      ・E波は年齢が若い人が高い。
      ・A波とは心房収縮期に左房から左室へ向かう血流である。
      ・E/A=1となるのはだいたい55歳前後である。
      それより若年ではE>A老人ではE ・心房細動では、E>>Aとなり、ほとんどA波が目立たない。
      ・重症収縮性心膜炎、重症拡張型心筋症などの左室拡張障害および重症大動脈弁閉鎖などの拡張末期圧上昇例ではE波は急峻となり、A波は小さい。
      ・重症僧帽弁閉鎖不全などの左房流入血流増加症例ではE波は大きい。
    15. 僧帽弁閉鎖不全の原因にはどのようなものがあるか。
      僧帽弁閉鎖不全の原因として、僧帽弁逸脱がある。
      これは収縮期に弁帆が左房側に膨らむ現象である。
      逸脱部位と反対方向に逆流血流が認められる。つまり、後尖middle scallopの逸脱であれば、大動脈後壁に沿って逆流血流が認められる。
    16. 僧帽弁狭窄の場合の弁口面積を調べる方法を挙げよ。
    17. 僧帽弁狭窄が重症である場合の僧帽弁通過血流の特徴はなにか。
      僧帽弁狭窄が重症であるほど、E波のピークからの減速度が緩やかになる。
    18. 僧帽弁狭窄において連続波ドップラー血流を計測し、PHT(圧半減時間)を求めたところ、230msecであった。このときの弁口面積を調べよ。
    19. 僧帽弁狭窄において重要な検索すべき点をあげよ。
      血栓の有無。逆流の程度。

      三尖弁
    20. 三尖弁閉鎖不全により2次的に引き起こされる心臓の変化について答えよ。
      三尖弁閉鎖不全では、右房の容積および圧負荷がある。
      重症例では右房だけにとどまらず下大静脈、肝静脈まで
      容量負荷の変化を生じ径の拡大をみることもある。
    21. 三尖弁狭窄の心エコー検査における診断方法およびその診断基準はなにか。
      三尖弁狭窄の診断には右房-右室間の平均圧較差で判定する。概ね4mmHg以上から軽度の三尖弁狭窄がある。
    22. 三尖弁閉鎖不全において、最大逆流速度が5m/secの場合、右房-右室間圧較差はどれほどか。
      また、推定右室収縮期圧はどれほどか。
      重症例では右房だけにとどまらず下大静脈、肝静脈、下肢まで
      容量負荷の変化を生じ内径の拡大や浮腫など右心不全状態になることもある。

      肺動脈弁
    23. 肺動脈弁通過血流が早くなる原因を挙げよ。
      肺動脈弁通過血流が早くなる原因として、肺高血圧症などによる右室圧負荷がある。
      この際には、通過血流速のピークは駆出早期に見られる。
      心房中隔欠損症などによる右心系容積負荷がある。
    24. 肺高血圧症でみられる異常はなにか。
      肺高血圧症では収縮期弁開放速度は増加し、acceleration time は延長する。
      また、肺動脈弁の振幅も増大する。
      肺高血圧症では駆出された血流の波が反射し、
      収縮中期に一度閉鎖し、再び開放する特有な弁の動きが観察される。

      コントラスト心エコー検査
    25. 左上大静脈遺残患者の左肘静脈からコントラスト剤を静注した場合、コントラスト剤が観察される順番を記せ。
      左肘静脈-左上大静脈-冠静脈-右房-右室-肺動脈。

      経食道心エコー検査
    26. 経食道心エコー検査は経胸壁心エコー検査の有利な点を挙げなさい。
      左房内血栓観察。大動脈弁、僧帽弁の詳細観察。など


      ドプラ心エコー検査
    27. 連続波ドプラ心エコー検査とパルス波ドプラ心エコー検査の違いを挙げなさい。
    28. ドプラ心エコーにおいてて折り返し現象(エイリアシング)
      を防ぐための工夫はどれか。
      ・連続波ドプラを用いる。
      ・血流とのなす角度を大きくする。
      ・パルス繰り返し周波数を上げる。
      ・中心周波数が低いプローブを用いる。
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      先天性心奇形
    29. ファロー四徴症の特徴を説明しなさい。
      ファロー四徴症は心室中隔欠損、肺動脈狭窄が基本病態で、大動脈騎乗、右室肥大は2次的に生じたもの。

      大動脈疾患
    30. 解離性大動脈について発生機序を説明し、解離部位による分類をしなさい。
      大動脈は内膜、中膜、外膜の3層により構築されている。
      このうち内膜に亀裂を生じたため内膜と中膜の間に血液が広がり解離腔を生じた状態を大動脈解離といい、解離腔の広がり、範囲によりDeBakeyらにより分類が行われている。
      また、大動脈基部から上行大動脈にかけて解離が認められる例では、解離により、心外膜に血液がたまる場合がある。この場合は心タンポナーデを生じ危険な状態となる。 ・DeBakey I 型(Stanford A型):大動脈弓を含む上行および下行大動脈に解離を認める症例。
      ・DeBakey II 型(Stanford A型):上行大動脈の大動脈弁近位部のみに解離を認める症例。
      ・DeBakey III 型(Stanford B型):上行大動脈、大動脈弓に認められず、左鎖骨下動脈より遠位の下行大動脈にのみに解離を認める症例。
      DeBakey分類:解離箇所大動脈弁近位部上行大動脈部大動脈弓部下行大動脈
      I 型++++
      II 型++--
      III 型---+

      左室肥大
    31. 左室肥大(left ventricular hypertrophy)において肥大部位による分類をしなさい。
      ・Maron I 型:心室中隔前1/3のみに肥厚を認める症例。
      ・Maron II 型:心室中隔前1/3および後2/3のみに肥厚を認める症例
      ・Maron III 型:心室中隔前1/3、後ろ2/3、前壁、側壁のみに肥厚を認める症例(後壁以外の肥厚)。
      ・Maron IV 型:側壁および心室中隔後2/3のみのみに肥厚を認める症例(心室中隔前1/3、前壁、後壁以外の肥厚)。
      ・Maron」型:心尖部のみに肥厚を認める症例。
      Maron分類:肥大箇所心室中隔前1/3部心室中隔後2/3部左室前壁左室側壁左室後壁左室心尖部
      I 型+-----
      II 型++----
      III 型++++--
      IV 型-+-+--
      V 型-----+

    冠動脈
  1. 冠動脈(corronary artery)の心筋潅流域について述べよ。
    ・左前下行枝:左室前壁と心室中隔前2/3と心尖部。
    ・左回旋枝:左室側壁と左室後壁。
    ・右冠動脈:右室、左室下後壁と心室中隔後1/3。

    下大静脈
  2. 下大静脈(inferior vena cava)について次の文章の誤りを指摘しなさい。
    ・下大静脈内径は吸気時に小さく、呼気時に大きい。
    ・右心負荷があるときは、下大静脈内径の変化は小さい。
    ・下大静脈と肝静脈の内径変化などの挙動は概ね一致するが、肝硬変などでは一致しないこともある。
    次の疾患の特徴を答えなさい。

  3. ・Ebstain奇形:三尖弁付着異常:三尖弁中隔尖の付着部が心尖部側に偏位している。僧帽弁前尖付着部と三尖弁中隔尖の間隔が2cm以上離れている。
    ・Fallot 四徴症:VSDとPSが基本病態。大動脈騎乗、右室肥大は2次的に生じたもの。
    ・Eisenmenger症候群。 ・Ehler's Danlos症候群:結合織異常で僧帽弁などの異常伸展を認める。 ・Marfan症候群:結合織異常で大動脈弁輪部拡大、僧帽弁逸脱、大動脈解離などの弁血管に異常を認める。 ・Blalock-Taussig手術:ファロー四徴症、三尖弁閉鎖不全などで充分な肺血流を確保するために鎖骨下動脈と肺動脈を吻合する手術。

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