心尖部 左室長軸

特徴

<心臓全体および周辺構造物の異常の有無を観察記録するための断面>
・胸骨左縁からのアプローチでは検出困難な左室長軸断面の観察
・心尖部周辺の観察。
・大動脈弁、僧帽弁の逆流および狭窄の血流の観察。

患者の体位、体表上の探触子位置方向
・患者の体位は左半側臥位をとる。
・心尖部(心尖拍動の最強点のやや外側下方または心電図検査におけるV5付近)に探触子を置く。
・ビームを患者の右肩甲骨方向に向ける
・[胸骨左縁 左室長軸]と同じ断面が心尖部より描出されるように探触子の位置を調整する。

基本断面を得るための基準点
心尖部左室長軸のポイントとして以下の3つの基準点が描出される断面に探触子の位置を合わせる。
・左室の心尖部。
・僧帽弁の弁輪部の中心。
・大動脈弁の弁輪部の中心。

アドバイス(B-mode)
・心尖部、大動脈弁、僧帽弁の順に基準点を決めていくと描出しやすい。
・また、心尖部は個人差が大きいため広い範囲を検索する必要がある。

置換弁(僧帽弁、大動脈弁)の観察のポイント(一部修正1999.03.29)
  ・置換弁の種類の特定を行う。二葉弁、一葉弁、ボール弁、生体弁の区別をする。
・機械弁の可動性についての評価は、開閉が最も明瞭な断面でのM-mode記録が適している。
・弁の開閉に伴うM-modeエコーが矩形を保っていない(角がなまっている)場合はヒンジ部または弁座面に血栓が付着するなどによる機能不全が疑われる。
・人工弁逆流の評価は、弁逆流が弁輪の内側または外則のどちらを通過しているかの鑑別が重要である。
・弁輪部(弁座)内側に見られる少量の逆流(transvalvular leakage)は機能的逆流と考えられ問題とならない。
しかし外側からの逆流(perivalvular leakage)は弁輪縫合部の障害などが疑われ溶血などが起こることもあり、
詳細な観察が求められる。
・疣贅・疣腫などの異常構造物の付着、弁座周辺の異常腔(弁瘤形成の可能性)の存在、弁座のがたつき、
逆流量が多い場合は重篤な状態を疑わせる所見である。ただちに専門医への連絡が必要である。
・人工弁など強反射体の裏側となる領域の観察に注意が必要である。大動脈弁位人工弁置換術後の胸壁からの僧帽弁逆流は観察しにくい。
右側臥位による高位右肋間などからの観察が有用である。

走査の基本ポイント(B-mode、カラードプラ)
・心尖部を基準に、左室壁(心室中隔、左室後壁)および内腔を広く描出する断面で観察する。

その他
・心尖部肥大型心筋症の肥大が心室中部におよぶと異常血流が観察されることがある。心室中隔下部および後半部の心筋肥大は発見しにくい。
・心尖部の観察は周波数の高い探触子に変え、拡大しておこなうとよい。心窩部からの観察も併用すると異常を検出しやすい。

・この断面は心室瘤の検出に有用である。
・冠動脈の還流範囲により 左室segmentationが決められ、それぞれの部位での壁運動状態を評価する方法が一般的である。
・近年は、心基部および心室中部をそれぞれ6断面、心尖部を4断面の計16分割した壁運動の評価をする方法も推奨されている。
 

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