☆症例 1-4(感染性心内膜炎に基づく僧帽弁瘤の形成過程)1998.05.25
横浜栄共済病院 臨床検査科 幅 喜枝子(はば きえこ)技師

☆はじめに
感染性心内膜炎ではしばしば心臓弁の破綻を来すが弁破壊にいたる経過を観察しうることはまれである。
今回我々は感染性心内膜炎による僧帽弁瘤形成と弁尖の断裂にいたる経過を心エコーで観察し手術時所見で確認し得た一例を経験した。

☆症例
患者:70歳、男性

☆病歴および心エコー検査所見
平成9年3月入院時:感冒様の症状と39℃の高熱が続いたため平成9年3月入院。
CRPは12mg/dlと強陽性であり、収縮期および拡張期に心雑音を聴取した。
血液培養検査でStreptococcusが検出され感染性心内膜炎による僧帽弁閉鎖不全兼大動脈弁閉鎖不全が疑われた。

*970326
CRP 8.7mg/dl AR3-4度/4度、MR 2度/4度
僧帽弁前尖輝度亢進、左室拡大(+)

*970404
CRP 2.9mg/dl 僧帽弁前尖輝度亢進強

*970415
CRP(-)、弁瘤形成開始

*970422-1
弁尖亀裂拡大認める。

*970422-2
上記の拡大図を示す。
*9700523-1
経食道心エコー 僧帽弁前尖にドーム状弁瘤を認め、瘤内への血流をドプラにて認めた。

*9700523-2
経食道心エコー
上記の拡大図を示す。
*9700530-1
僧帽弁瘤さらに拡大。弁尖断裂、弁瘤一部石灰化、弁瘤内に血流認める。

*9700530-2
上記の拡大図を示す。

☆手術所見
僧帽弁は前尖のほとんど全てが瘤となり、膜様に薄くなった部分に穿孔と亀裂を認めた。
さらに後交連寄りの腱索断裂を認めた。疣贅は認めなかった。
大動脈弁は弁尖の硬化と変形による接合不全が著明であった。
僧帽弁、大動脈弁ともに人工弁置換を行った。

☆結 語
 Streptococcusを起炎菌とする感染性心内膜炎の経過中に僧帽弁瘤の発生と増大の過程を心エコーにて観察し、手術所見でほぼ心エコー所見どおりの僧帽弁であったことを確認し得た。
感染性心内膜炎による僧帽弁瘤の診断に心エコー検査は有用であった。

 
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