病気の解説と治療法の紹介

二分脊椎

はじめに

腰仙椎(髄)に見られる先天異常は一般に二分脊椎として理解されています。二分脊椎とは脊柱管という管構造を形成する脊椎骨の一部が形成不全となり、本来ならば脊椎の管の中にあるべき脊髄が脊椎の外に出て癒着や損傷しているために起こる様々な神経障害の状態を言います。しかし個々患者さんによって病態が様々であり、すべてをここで解説する事はできませんが基本的なものについて外科治療法を中心に解説します。

脊髄披裂または脊髄髄膜瘤

いわゆる二分脊椎を代表する疾患です。出生時に腰部や仙骨部に皮膚欠損を伴う腫瘤を認めることによって診断されます。しかし最近では、本疾患に合併する脳室拡大等の脳の形態異常によって胎児期に診断される例が多くなっています(図1参照)。頭囲拡大が認められる場合には産道通過の際の児の損傷を予防する目的で帝王切開を行う場合もあります。


(図1)
出生後は髄液感染予防のために早期(生後48時間以内)に閉鎖術(整復術)が行なわれます(図2参照)。また脳室拡大を合併している場合は、同時にオンマヤリザーバーを頭皮下に設置するか脳室ドレナージを留置して脳脊髄液の排液を行う必要が生じます。水頭症の症状が顕在化するようならば後日、脳室腹腔シャントが必要となります。出生直後に閉鎖術と脳室腹腔シャントを同時に行わないのは、新生児期には髄液産生が大きく変化するためにシャント閉塞や感染等の合併症を来し易く、それを予防するためです。 おおよそ一ヶ月程度で自宅退院となるでしょう。


(図2)
本疾患に合併し易い異常について説明します。
水頭症:脳室あるいはその他の頭蓋内に異常に大量の脳脊髄液が貯留しこれらの腔が拡大し頭蓋内圧が亢進した状態を指します、二分脊椎に合併する場合は生後に症状が明らかになる例が多いようです。一般的には脳室腹腔シャントが行われます。シャントの具体的な方法については他のホームページ等を参照ください。
下肢運動障害:脊髄の損傷部位に応じて様々な運動障害や変形が認められます。軽い場合は足の指の動きが悪い、足関節の動きが悪いという程度ですが下肢が全く動かせないこともあります。ただし出生直後には運動機能の判定が困難で成長を待って判断する必要があります。下肢の変形を伴う場合は装具の装着が必要なこともあり脳神経外科の治療が終わる頃には整形外科を受診してください。
神経因性膀胱:先天的に排尿機能が障害されて尿路感染等を引き起こし、いずれは腎機能の障害を起こしてしまいます。二分脊椎には高頻度で合併する事から尿路感染が見られる場合は泌尿器科専門医の受診が必要です。
排便障害:便秘や下痢を繰り返し、また肛門の締りが弱く便により皮膚にびらんができることがあります。尿便の後お尻はこすらずに温水などで流した後にオイル・軟膏などで保護してあげて下さい。排便量が摂取量に比べて少ない場合,もしくは2-3日排便がみられないときには浣腸などで促すことが必要なことがあります。
キアリ奇形:脳が正常より少し下方に変位していることがあり、稀に呼吸や嚥下の障害を認めることがあります。ミルク・食事でむせる、睡眠時にいびきをかく、呼吸を休止することがある、手の動きが気になる、などの症状が続くときには脳神経外科に相談してください。
脊髄稽留症候群:成長とともに手術部分の脊髄が周囲組織と癒着するために引っ張られてしまい下肢機能障害や腰部以下の疼痛、しびれなどの感覚障害が起こることがあります(2-4割といわれています)。また5~6歳になって排尿機能の悪化によって発見される場合もあります。病初期に変化を捉える事に依って治療成績も向上しますが、早期診断には脳神経外科、泌尿器科、整形外科の連携が必要です。
脊髄脂肪腫
脊髄脂肪腫とは脊椎骨の形成不全の部位に一致して、脊髄が正常に形成されない場合、異常部位に脂肪組織が付着しそれが皮膚や筋肉等の周囲組織に連続している状態を意味します。一般的には腰背部に皮下脂肪腫、母斑、皮膚陥凹、異常毛髪などの皮膚異常が認められます。成長と共に脂肪腫によって固定されてしまった脊髄が牽引され、体脂肪と同様に脂肪腫自体の肥満による脊髄の圧迫によって膀胱直腸障害(排尿、排便の障害)および下肢の障害(運動障害、感覚障害、変形)等の症状が出現します。症状が一度出現すると、その改善率はあまりよくありません。一旦症状が出た後の手術後の改善率に関しては運動機能障害は60~80%、膀胱直腸障害は40%以下という報告があります。
このため、一般的には症状が出る前(できれば1歳くらいまで)に予防的に脊髄と付着する脂肪組織を切り離し、不要な脂肪組織を摘出してしまうことが推奨されています。ただし乳幼児では臨床症状の有無の判断が困難なことが多く画像所見や発達の度合いを見て総合的に判断する必要があります。また成人になっても症状が出現しない場合があります、ただしこの疾患の長期的経過観察の報告が少なく実態は明らかにされておりません。現在、厚生労働省の研究班が中心となって共同調査が行われております。
手術の目的は脊髄の下端部の脂肪腫を切り離し外力が脊髄に及ばないようにする事、神経組織を傷つけない事、再度の癒着を来さないように配慮する事につきますが、経験症例の多い施設では安全な治療が行われています。脊髄脂肪腫には手術の難易度の高い脂肪脊髄髄膜瘤(図3参照)と呼ばれるものから、安全に治療が行える終糸脂肪腫と呼ばれるものまで様々な病態が含まれています。
実際の手術(図2参照)は背中の真中で、病変のすぐ上の部分の皮膚切開を行なって手術を行います。
術後3日程は起き上がったりすると背中に痛みが出るため寝ていることが多くなりますが、その後は普通に生活できます。手術1週間目に抜糸をして問題なければ翌日に退院となります。
合併症としては新たな神経症状が出現する、皮膚・髄液の感染症、傷から髄液が漏れる等が上げられますが、頻度は低いと考えられております。
しかし手術の際に神経に触るため、一時的に神経症状がでる可能性があります。(尿が出難い、足~腰がしびれる、痛む、等)このような症状は長くても3~6ヵ月で改善しますが注意深い経過観察が必要です。一時的に尿道カテーテルによる排尿を行なうこともあります。


(図3)