日本病理学会関東支部

平成18年度総会および第31回学術集会

プログラム

日 時:    2006年6月3日(土)13:00〜17:00

会 場:    日本大学医学部

              東京都板橋区大谷口上町30-1  TEL 03-3972-8111

主 催:    (社)日本病理学会関東支部

世話人:   日本大学医学部病理学講座 根本則道

スケジュール

幹事会 :11:00〜12:00日本大学医学部図書館 2F同窓会会議室

標本供覧:12:00〜16:00日本大学医学部基礎棟B2F 組織実習室

総  会:13:00〜14:00日本大学医学部第2臨床講堂

              平成17年度事業報告

              平成17年度収支報告

              平成18年度事業計画

              平成18年度予算案

              その他

症例検討:14:00〜17:00日本大学医学部第2臨床講堂

               演題1 - 4:   14:00〜15:20

               休憩           15:20〜15:40

              演題5 - 8:   15:40〜17:00

懇親会 :17:00〜18:30 日本大学医学部図書館 2F同窓会会議室

学術集会演題および座長一覧

演題番号

演題名

所属

演者

座長

1

特異な組織像を示した乳癌の1例

山梨大学医学部

人体病理学講座

岩科雅範

日本大学医学部病理学講座

助教授

逸見明博

2

拘束型心筋症を示したlight chain deposition diseaseの一例

虎の門病院病理部、東京大学人体病理学

新谷裕加子

3

診断に難渋した馬尾腫瘍の一切除例

順天堂大学

病理学第一

高瀬 優

埼玉医科大学病理学講座

助教授

清水禎彦

4

淡明細胞が主体を成す肺腺癌の一例

東京大学医学部

人体病理学・病理診断学

野田直宏

5

Parietal cell carcinomaの組織像を示した胃癌の一例

東京大学医学部

人体病理学・病理診断学

大倉直樹

虎の門病院

病理部

部長

大橋健一

6

稀な低悪性度腎癌(Mucinous tubular and spindle cell carcinoma)の一例

同愛記念病院病理

黒田陽子

7

診断困難な縦隔の炎症性腫瘤性病変

群馬大学医学系大学院応用腫瘍病理学

櫻井信司

群馬県立がんセンター臨床病理検査部

部長

小島 勝

8

皮膚リンパ腫の一例

日本医科大学多摩永山病院 病理部

細根 勝

敬称略

#1: 特異な組織像を示した乳癌の1例

山梨大学医学部人体病理学講座

岩科雅範、村田晋一、加藤良平

症例は40歳代、女性。約半年前から左乳房のしこりに気づき、急速増大してきたため、当院第1外科を受診した。精査の結果、左ABE領域に4.5cm大の腫瘤を認め、穿刺吸引細胞診でClass Vであったため、Invasive ductal carcinomaの診断のもと、左非定型乳房切除術、Level I腋窩リンパ節郭清術が施行された。病理組織所見では、腫瘍は、脂肪組織および真皮へ広範囲に広がり、小管状、充実性、面皰状構造が混在する多彩な組織像を示した。一部には篩状構造も認められた。SMAの免疫組織染色では、管状構造の外層のみならず、充実性部分にも陽性細胞が混在していた。

以上、唾液腺や皮膚付属器の腫瘍に類似した部分が混在しているものの、adenoid cystic carcinomaの典型像とは異なると考えている。組織診断をご教授いただきたい。

#2: 拘束型心筋症を示したlight chain deposition diseaseの一例

1虎の門病院病理部、2東京大学人体病理学

新谷裕加子1,2、大田泰徳1、野口寛子1、井下尚子1、藤井丈士1、大橋健一1、深山正久2

症例は53歳女性。50歳で慢性腎不全、血液透析導入となったが、原因は不明であった。52歳時、労作時呼吸困難が出現した。心エコー等では、拘束型心筋症によるうっ血性心不全の状態であった。心筋生検を施行したが、アミロイドは陰性で、確定診断には至らなかった。血圧は徐々に低下、血液透析困難となり、4ヶ月後に死亡した。後にM蛋白血症(Bence Jones-λ型)が判明した。剖検の結果、個々の心筋細胞を取り囲むような線維化が見られ、免疫染色ではλ light chainの陽性所見を認めた。電顕所見では、心筋細胞の基底膜に細顆粒状の沈着物を認めた。light chain deposition disease(LCDD)と考えた。同様の沈着は腎、肝にも認めた。心臓のLCDDは比較的稀であり、心筋生検で診断する機会は少ないと思われるが、貴重な症例として提示する。

#3; 診断に難渋した馬尾腫瘍の一切除例

1)順天堂大学病理学第一、2)順天堂大学整形外科

高瀬 優、松本俊治、須田耕一1)、鳥越知明、米沢郁穂2)

症例は28歳女性で腰痛・下肢痛を主訴に当院整形外科を受診した。灰白色、充実性の馬尾腫瘍が切除された。組織学的には紡錘形細胞を主体とする細胞密度の高い腫瘍で、束状の増生を認めた。腫瘍の壊死巣が散見された。細胞一部で腫瘍細胞の円柱上皮様の配列、小型の腺腔様構造、乳頭状配列を認めた。核は楕円形で細胞分裂像が散見された。免疫組織化学では、vimentin (+), GFAP(±), S-100 (±), EMA (±), cytokeratin (-), MIB-1 labeling index 12% であった。S-100は通常の神経原性腫瘍のような強陽性ではなかった。鑑別診断として(1)富細胞性神経鞘腫(2)悪性末梢神経鞘腫(3)退形成性脳室上衣腫(4)低分化型滑膜肉腫を考えた。組織標本の見方・考え方、組織診断に関して、ご意見を伺いたい。

#4: 淡明細胞が主体を成す肺腺癌の一例

東京大学医学部人体病理学・病理診断学

野田直宏、後藤明輝、深山正久

【症例】69歳男性.検診にて右肺異常陰影を指摘.胸部CTで右肺S6に5cm大の腫瘍を確認.1ヶ月半後,下葉切除施行.

【病理組織】S6-8の胸膜下に位置する境界明瞭な腫瘍.白色〜淡褐色充実性の増殖を示し,広範な壊死を伴う.組織学的には,充実性胞巣ないし癒合管状構造を呈して増殖する腺癌で,淡明な細胞質を有する腫瘍細胞が主体を成す.通常型の粘液非産生性細胞の増殖よりなる領域も存在.免疫組織学的には、TTF-1(-/+), AFP(+/-), p53(-/-) (淡明細胞 / 通常型細胞).神経内分泌マーカーの発現は少数の細胞にのみ認める.β-カテニンの核内集積は確認されず。

【考察】特異な細胞像を示す肺腺癌で,high-grade adenocarcinoma of fetal lung type (AJSP 1998;22:399)も考慮される腫瘍であった.文献的考察と併せて報告する.


#5: Parietal cell carcinomaの組織像を示した胃癌の一例

東京大学医学部人体病理学・病理診断学

大倉直樹、牛久哲男、深山正久

【はじめに】胃癌の稀な組織型としてParietal cell carcinomaが知られている。組織学的、超微細構造的に胃底腺の壁細胞に類似した細胞からなる胃癌で、従来の報告では比較的予後良好な傾向があるとされている。【症例】60歳代男性、胃体中部小弯を主座とする9.5x6.0 cm大の全周性4型病変に対し胃全摘術を施行。組織学的には、繊細顆粒状の好酸性胞体と核小体の明瞭な大型核を有する壁細胞に類似した細胞が、充実性胞巣状、あるいは接着性に乏しいびまん性増殖を示す腫瘍であった。高度の脈管侵襲を伴い漿膜まで浸潤し、多数のリンパ節転移もみられた。【考察】特徴的な細胞像からParietal cell carcinomaと考えられ、免疫組織学的、電子顕微鏡的検討をあわせ本症例の特徴を提示し、文献的考察を加えたい。

#6: 稀な低悪性度腎癌(Mucinous tubular and spindle cell carcinoma)の一例

1同愛記念病院病理、2横浜市立大学大学院医学研究科分子病態腫瘍病理学

黒田陽子1、手島伸一1、長嶋洋治2

Mucinous tubular and spindle cell carcinoma(以下MTSCC)は、遠位ネフロンへの分化を示す低悪性度の稀な腎癌として報告されており、2004年のWHO分類にて独立した疾患として提唱された。臨床経過が比較的良好であるため、通常の腎癌との鑑別を要する。今回MTSCCの1例を経験したので文献的考察を加え報告する。症例は73歳女性、下血にて腹部CTを施行時偶然本腫瘍を指摘された。腫瘍は8x8x7cm大で右腎中央を占拠し、割面は黄白色、均質、髄様であり、被膜を欠くが境界明瞭であった。組織学的には、核異型に乏しい立方状の細胞が長い腺管を形成し増殖する像で、間質は粘液性であった。一部紡錘形細胞、淡明細胞もみられた。免疫組織学的には高分子ケラチン、Vimentin、EMA、E-cadherin、CD9が陽性、CD10、CD15が陰性であった。MTSCCの数例に神経内分泌細胞への分化を示したとの報告があるが、本腫瘍はChromogranin A陰性であった。


#7: 診断困難な縦隔の炎症性腫瘤性病変

群馬大学医学系大学院応用腫瘍病理学

櫻井信司、瀬川篤記、佐野孝昭、中島 孝

症例は55才女性。昨年から咳嗽が出現、近医でフォローされていたが、改善せず。胸部CTにて縦隔腫瘍を指摘され、当院呼吸器外科に紹介入院。本年2月、腫瘍の摘出術が施行された。病変は前縦隔に存在する径3.3 cm大の結節性腫瘤で、周囲との境界は比較的明瞭であるが被膜の形成はなく、肉眼的には悪性の腫瘍を考えた。しかし、組織学的には明らかな異型細胞の増生を認めず、病変は著明な形質細胞、組織球浸潤、膠原線維の増生を伴った炎症性肉芽性の組織であった。硬化性縦隔炎、炎症性偽腫瘍、Langerhans’ cell histiocytosisなどが鑑別となったが、何れも典型的な組織像とは異なるように思われる。リンパ節腫脹は認めず、採取されたリンパ節にも著変は見られなかったが、節外性のRosai-Dorfman disease の可能性もあるのではないかと思われる。病理診断についてご意見をいただきたい。

#8: 皮膚リンパ腫の一例

1)日本医科大学多摩永山病院病理部、2) 日本医科大学付属病院病理部、

3)日本医科大学病理学第2

細根 勝1)、前田昭太郎1)、杉崎祐一2)、内藤善哉3)

【症例】80歳代の高齢男性。【主訴+現症】右手首皮膚腫瘤.腫瘤は皮膚表面からドーム状に盛り上がり、暗赤色、40mm×30mm大を呈した。【生検】腫瘤生検のHE染色では、真皮内に中型〜大型でN/C比の高い芽球様細胞の稠密な増生を認めた。表皮との間にGrenz zoneの形成を認めた。また、捺印細胞診上、Azur顆粒は陰性であった。【免疫染色+flow cytometry】CD45(+), sCD3(-), CD4(+), CD5(-), CD7(-), CD8(-), CD10(-), CD16(-), CD19(-), CD20(-), CD30(-), CD45RO(-), CD56(+), CD57(-), TdT(+), cMPO(-), cCD3(-) を示した。【診断と問題点】以上、本例の鑑別診断としてplasmacytoid dendritic cell由来の皮膚腫瘍であるagranular CD4+/CD56+ hematodermic neoplasm (新WHO分類では"blastic NK cell lymphoma"にほぼ相当)を第一に考えており、CD123,TCL-1などの追加解析を予定しているが、その他の鑑別診断などに関してもご意見を伺いたく提示した。