|
はじめに
この『前立腺肥大症診療ガイドライン』は、臨床的な必要性に基づいて、患者と医師が、前立腺肥大症の最も効果的な診断法と最も適切な治療法を選択するための指針を提供することを目的としたものである。
前立腺肥大症の進展には、加齢と男性ホルモンの関与が示唆されているが、多くの研究にもかかわらず、未だその病因は十分に解明されていない。しかし、前立腺肥大症の自然史からみると、その病態は適切な診療により、直接、生命にかかわる疾患ではないが、患者の生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼす疾患といえる。
このことより、本ガイドラインは、前立腺肥大症の発生と進展、診断、治療に関する最新の科学的根拠(EBM)に基づいて、@前立腺肥大症の診断において、その重症度を客観的に評価しうる最も適切かつ有用な診断法と、Aインフォームドコンセントに基づいて、患者個々の病態に立脚した経過観察を含めた最も適切な治療法を確認し、選択のための指針を示すものである。
本ガイドラインでは、EBMに基づいて診断・治療法の侵襲性とその得失を明らかにし、現時点での前立腺肥大症の標準的な診断・治療法について、図8に示すごとく簡便な形でアルゴリスムで表示し、以下に各事項について解説し、各事項の論拠となった主な参考文献を記す。
1. 前立腺肥大症のガイドライン作成の背景と目的
前立腺肥大症は、高齢男性に最もよくみられる排尿障害の原因となる前立腺の良性腫瘍で、前立腺癌と明らかに異なる良性疾患である。その有病率は高く、加齢とともに増加する。前立腺肥大症は組織学的に60歳の男性では50%以上に、85歳までに約90%に認められ、その1/4に臨床症状が出現する1)。
前立腺肥大症は疾患の進行に伴い、@前立腺の解剖学的増大、A排尿障害を主とした臨床症状、B尿流動態からみた下部尿路通過障害(閉塞)が出現するが、さらに通過障害に起因する膀胱排尿筋機能の変化などが出現し、これらが相互に関連して症候性前立腺肥大症が疾患として成立する2),3〕。
患者のなかには、解剖学的増大と尿路通過障害所見を認めるが臨床症状を伴わない患者から上記のすぺての病態をもつ患者まで多様である(図4)。
前立腺肥大症の内然経過と治療に関する長期予後の研究は少なく.その適切な治療法・治療開始時期に関する指標は明らかにされていない。このため前立腺肥大症の標準的な診断と治療は本邦に限らず、先進諸国においても未だ多様である。
厚生省統計資料をもとに、本邦における1990年代の前立腺肥大症治療の現況をみると、全診療科における前立腺肥大症の受療患者数は、90年25.6万人、93年30.1万人、95年35.7万人、96年47.8万人、98年60.1万人へと増加し、特に95年以降急増している。前立腺肥大症治療に費やされる医療費は92年度760億円(入院270億円、外来490億円)から97年度1,480億円(入院480億円、外来1,000億円)へと大きく増加しているが、この間、前立腺肥大症に対する手術件数は年間4.5〜5.5万例程度で手術件数はほぼ一定に保たれており、93年度に市場化されたα1遮断薬による市場の拡大によるところが大きい。
米国では、男性の4人に1人が80歳までに症候性前立腺肥大症の症状緩和を月的として治療を受けると推定されている。また、経尿逆的前之腺切除術(TURP)が人準を占める前立腺肥大症の手術は年間30万例以上が行われており、Medicare(米同政府管掌の包括的老人医療健康保険制度)対象者に施行される手術のうち.TURPは白内障手術に次いで多く行われており.そのために費やされる医療費は年間20億ドル以上と推定される4〕。
これらのことから、わが国においては、高齢男性の多くが排尿障害を呈しているにもからず、適切な前立腺肥大症の診断と治療の恩恵を未だ十分に浴していない現状にあるといえる。前立腺肥大症は泌尿器科領域疾患において、一般的な疾患にもかかわらず診療内容に偏差の多い疾患であり、平成11年度厚生科学研究費補助金による医療技術評価総合研究事業の「泌尿器科領域の治療標準化に関する研究」において、前立腺肥大症のガイドライン作成を初年度事業として取り上げた。
本ガイドライン作成の目的は、科学的な論拠に基づいて前立腺肥大症に対する最も効率的な診断法と病態に応じた最も適切な治療法を明らかにし、診療を行う医師と診療を受ける患者の両者が共通の基盤に立って疾患を認識し、その診断と治療にあたって患者中心に決定していく原則を確立することにある。
そのため、本ガイドラインは泌尿器科医をはじめ、泌尿器科を専門としない医師、コ・メディカルや患者ならびにその関係者などを広く対象として作成した。
2. 前立腺肥大症の診断法
標準的な前立腺肥大症の診断手順の概略として、まず基本的評価でスクリーニングし、問診などで排尿異常が示唆されれば国際前立腺症状スコアを用いて自覚症状の評価を行う。自覚症状が中等症以上、もしくは軽症であっても突出した項目があるときは、排尿機能と前立腺形態の客観的評価へと段階を追って進み、各項目の重症度を総合して全般重症度判定を行う。
前立腺肥大症は、患者の日常生活の質(QOL)に影響を及ぼす疾患であり、このことから前立腺肥大症の病態は患者自身の症状の受け入れや不満の程度に大きく左右される。前立腺肥大症の客観的なパラメータとして最大尿流率や前立腺容積などがあるが、大きな前立腺であっても排尿障害を認めない例があるように、これらは必ずしも症状とは相関していない。
したがって、前立腺肥大症では症状の重症度を把握することは重要である。前立腺肥大症による症状の重症度診断基準に関しては、WHOにより国際的に承認されて、すでに本邦において厚生省長寿科学総合研究事業「研究課題:前立腺肥大症の診断基準とその評価に関する研究」と文部省科学研究費補助金総合研究(A)「前立腺肥大症の病態の評価ならびに治療効果判定の作成に関する研究」において十分にその有用性が検証され、日本泌尿器科学会排尿障害臨床試験ガイドラインに収載されている重症度診断基準を用いることが妥当と考えられる5),6〕。以下に各事項について概説する。
(1)墓本的評価
前立腺肥大症が疑われる50歳以上のすべての男性には、以下の初期評価を勧める。
@初期評価項目7〕
・病歴:全般的な健康状態、併発疾患とその治療の詳細、既往症、排尿障害の原因となる他疾患、排尿状態の詳細な聴取
・身体所見:直腸指診や神経学的検査を含む
・尿検査:試験紙法・尿沈渣
・腎機能評価:血清クレアチニン測定
初期評価では、血液検査で行う前立腺特異抗原(PSAまたはPA)の測定は保険診療の制約上オブションとしたが、直腸指診よりも前立腺癌の検出率が格段に高いPSA検査は.前立腺癌の除外診断のためにも初期評価として測定することが望ましい8〕。また、本ガイドラインで示す評価事項は、前立腺肥大症の診断に直接関連する事項を中心としており、治療にあたって必要となる患者の系統的な身体状況の評価とは、まったく独立したものであることを明記する。
A緊急を有する症例の除外
尿閉を繰り返す症例と明らかに前立腺肥大症に起因する病態を合併する症例は、重篤な前立腺肥大症として区分し、診断アルゴリズムでは独立して分類した。これらの病態では、明らかな多臓器障害が発生している、もしくは発生する可能性が高く、手術などによる抜本的な治療が必要である。前立腺肥大症に関連する合併症には、再発を繰り返すもしくは持続する尿路感染症や肉眼的血尿、膀胱結石、および腎機能障害などがある7)。
(2)国際前立腺症状スコアを用いた症状の定量的評価
前立腺肥大症が疑われる患者の評価において、症状の重症度を定量的に評価することが重要である。症状の客観的な定量的評価法としては、国際前立腺症状スコア(I-PSS:lnternational
Prostate Symptom Score)とQOL(Qua1ity of Life)スコアは自覚症状の評価には有用で、重症度診断の評価項目として、治療指針の決定や治療効果の評価に利用されている(図1,図2)。I-PSSは、排尿障害の症状に関する7項目の質間からなり、それぞれ0-5点の評価を行い、各項目点数を合計(総計35点)し、軽症(0〜7点)、中等症(8〜19点)、重症(20〜35点)に分類する。同様に、QOLスコアは現在の排尿状態に対する患者自身の満足度を表す指標で、0点(大変満足)から6点(大変不満)までの7段階評価し、軽症(0〜1点)、中等症(2〜4点)、重症(5〜6点)に区分する6〕,7)。
I-PSSで中等症もしくは重症と評価された患者ではその状態を把握するために、さらに以下の検査が必要である。
(3)排尿機能と前立腺形態の評価
排尿機能の評価には尿流率測定と残尿測定が、また、前立腺形態の評価には超音波断層法による前立腺容積の測定が標準として用いられる。いずれも前立腺肥大症の客観的な評価に有用で、重症度診断の評価項目として、治療指針の決定や治療効果の評価に利用する5〕,7〕。
@排尿機能の評価
排尿機能の評価には、尿流率測定と残尿測定の両者を加味して評価する。
・ 尿流率測定
排尿障害を有する患者において排尿状態の客観的・定量的な評価に有用な検査である。排尿障害の訴えが強いにもかかわらず、最大尿流率(ml/秒)がほとんど低下していない患者を診断することができる。排尿筋収縮障害と下部尿路通過障害の鑑別には内圧/尿流検査が用いられる。
最大尿流率の測定は苦痛の伴わない検査で、尿が十分にたまった時点で専用尿器に排尿するだけの非侵襲的な検査である。検査機器として受尿器と解析装置からなる専用機器が必要であるが、一般的にはコップと時計で1回の排尿量と排尿に要した時間を測定し、総排尿量を総排尿時間で除して平均尿流率が算出でき、排尿機能の指標として用いることができる。
・ 残尿測定
残尿測定は排尿効率の評価に用いられ、重症度判定と治療経過のモニタリングに用いられている。残尿の多い患者は何らかの治療が必要であるが、同一患者での残尿測定の再現性は低く、反復測定を心がけるべきである12〕。従来、尿道カテーテリスムで測定されてきた残尿測定は、その侵襲性から経腹壁的超音波断層診断法で非侵襲的に測定することが望ましい13〕。なお、残尿量の多寡により治療効果を予測しうるか否かは、未だ証明されていない。
・ 排尿機能の重症度
排尿機能の重症度は、軽症;最大尿流率15ml/秒以上かつ残尿50ml未満、中等症;最大尿流率5ml/秒以上かつ残尿100ml未満、重症;最大尿流率5ml/秒未満または残尿100ml以上に区分する6〕,7〕。
A前立腺形態の評価
前立腺肥大症が疑われる患者においては、まず初期評価項目である直腸指診で前立腺の大きさや形態とともに神経学的な所見を評価する。前立腺の大きさと臨床症状とは必ずしも相関しないが、前立腺の腫大の状態の客観的評価には、経直腸的前立腺断層診断法は前立腺の容積測定と詳細な内部構造の観察に優れている。経直腸的超音波断層診断は専用機器が必要であるが、一般に広く用いられている経腹壁的超音波断層法でも、膀胱に尿がたまっている状態であれば、前立腺の容積測定と膀胱・前立腺の形態の観察は可能である。容積は一般的に1/2(縦径×横径X上下径)で算出される。
前立腺容積の重症度
前立腺の形態上の重症度はその容積で表現し、軽症;20ml未満、中等症;50ml未満、重症;50ml以上に区分する。
(4)前立腺肥大症の領域別重症度と全般重症度
以上に記載した症状(I-PSS・QOLスコア)、排尿機能(最大尿流率と残尿量)および形態(前立腺容積)の評価領域別にみた重症度の判定基準を要約して表にまとめると、以下のごとくとなる(表1)。
全般重症度は、以下の表に示した全般重症度判定基準に従い、症状、機能および形態の各評価項目の重症度の数により、総合して判定する(表2)。
(5)手術適応の決定のために必要と考えられる検査
@内圧・尿流検査
排尿筋収縮障害と下部尿路通過障害の鑑別および通過障害の定量的評価として、また、カテーテル挿入を必要とし侵襲的ではあるが、治療効果を予測するのに有用である。排尿障害の原因として前立腺肥大症による下部尿路通過障害以外の要因が疑われる症例(たとえば糖尿病性神経症や小さい前立腺症例など)に対する治療においては、本検査を施行しその適応を決定することが望まれる18〕,
19〕。
A膀胱尿道鏡検査
侵襲的ではあるが、膀胱・前立腺部尿道などの観察に優れ、外科治療の適応症例において、治療法選択の決定に用いる20〕。
(6)前立腺肥大症の診断に必須と考えられない検査
@上部尿路画像診断
軽症から中等症の典型的な前立腺肥大症の診断には、上部尿路の画像診断(排泄性尿路造影もしくは腹部超音波断層診断)は原則として不要である。尿路疾患の合併あるいは種々の異常(血尿、治療に抵抗する尿路感染症、腎機能不全、尿路手術・慢性尿閉・尿路結石の既往など)がみられる前立腺肥大症患者には施行する21〕,22〕。
A逆行性尿道膀胱造影
古典的診断法で侵襲的であり、前立腺肥大症の診断的意義は少ないが、尿道狭窄を疑う、もしくは合併する症例の評価には有用である23〕,24〕。
B畜尿時膀胱内圧測定(CMG)
膀胱蓄尿機能の評価法であり、内圧・尿流検査に比較して前立腺肥大症の診断においては有用性が少ない25〕。
3. 前立腺肥大症の治療指針の提示
症状のない前立腺肥大症患者が治療を要することはまれである一方、尿閉や明らかな前立腺肥大症関連合併症などが認められる患者では、外科治療が最も適切な治療法である。
前立腺肥大症は患者のQOLに影響を与える疾患であることから、上記以外の前立腺大症患者では治療法の選択にあたっては、医師は各治療法の得失に関する情報を患者に提供し、さらに患者・家族の個人的な背景などの病態以外の要因にも配慮して患者と相談の上、治療法を決定する。
4.前立腺肥大症の治療
現時点で、選択対象となる治療法は、無治療経過観察、薬物療法、低侵襲治療(手術)、外科治療および尿道留置カテーテルなどに大きく分類され、以下にその概略を記す。
(1) 無治療経週観察
排尿を含めた日常生活指導のみで、排尿状態が改善する症例が約1/4に認められることから、軽症患者では無治療経過観察も標準的な治療選択肢となる26〕。症状悪化や合併症がみられるときは速やかに適切な治療を選択する。
(2)薬物療法
全般重症度が軽症から中等症の患者が適応となる。
@α遮断薬
α遮断薬は膀胱頸部および前立腺の平滑筋を弛緩させ、尿道抵抗を低下させ、排尿障害を改善させる。血管をはじめとする平滑筋におけるα受容体の機構が明らかになりつつあり、下部尿路および前立腺により選択的に作用するものが副作用の軽減を目的として種々開発されている。比較的効果の発現が早く、中長期の効果も認められており、薬物療法の標準的治療である。副作用として、起立性低血圧、めまいなどがみられるが、前立腺により選択性の高いものではその頻度が低いことが報告されている27〕〜30〕。
A抗男性ホルモン薬
本薬剤は前立腺の容積を縮小させ、下部尿路通過障害を改善し症状を軽減させる。効果発現は緩徐で、中断により前立腺の容積は再度増大することが報告されている。副作用は性欲減退、勃起障害など、主に性機能に関違するものである31)〜33〕。
なお、本薬剤は血清PSA値を低下させることから、潜在する前立腺癌が合併している症例では、その早期診断を困難にする可能性があり、長期投与を必要とする症例では注意を要す34〕。本薬剤とα遮断薬の併用については、未だ十分な臨床研究の報告は少なく35)、今後、併用投与に関する検討が必要である。
Bその他の薬剤
植物エキス製剤、アミノ酸製剤、漢方薬などがあるが、その作用機序や有用性については、十分解明されておらず、今後の検討が必要である36〕。
(3)低侵襲治療
この分野に分類される前立腺肥大症治療に対する先端医療としては、レーザー37)〜39〕、ステント40〕、高温度療法(therma1therapy)
41)〜44〕などがある。通常、低侵襲治療の多くは、治療直後には前立腺の縮小効果はみられない。前立腺部尿道に空間を作るステントは、形状記憶合金を用いたものが開発され、留置後、即時に閉塞を解除し排尿障害を軽減させる。これらの治療法に関しては、現時点では低侵襲性と安全性に関する報告はあるが、他療法と比較した有効性ならびに長期成績に関するデータは少なく、標準的な治療法としての結論は見出せず、今後の検討が必要である37〕〜44〕。
患者の希望や年齢などの病態以外の要因を考慮すると、今後の発展が期待され、無作為化比較臨床試験による安全性と有効性の検討を行い、これらの治療の前立腺肥大症治療における位置づけが必要である。
(4)手術
尿閉や前立腺肥大症に起因する合併症のある患者と、総合評価で中等症から重症の前立腺肥大症患者が対象となる。前立腺肥大症における、あらゆる治療選択肢のうち、手術は最も侵襲的ではあるが、手術により肥大した腺腫が切除されることで、排尿障害の改善に最も有効性が高い。
開放性前立腺被膜下摘除術は通常、前立腺が極度に肥大した患者に施行されるが、TURPに比して合併症の発現頻度が高く、回復期間も長い。TURPはより低侵襲で、確立した標準的な治療として広く普及している4〕,45〕。
(5)尿道留置カテーテル
尿道バルーンカテーテルの留置は、急性尿閉期への緊急的処置として、また循環器不全などの重篤な他疾患を併発している症例には、有用な治療法の一つである。しかしながら、長期にわたる尿道バルーンカテーテルの留置は、患者のQOLを著しく低下させ、さらに尿路感染症や膀胱結石を合併する頻度が高いことから、全身的な身体状況と病態の評価を十分に行い、低侵襲治療を含めた適切な治療を選択することが望まれる。清潔操作で行う間歇的導尿は、患者自身や介護者が施行でき、QOLの保持の点で優れており、症例を選択することで今後の発展が期待される。
5.今後の展望
泌尿器科領域の治療標準化に関する研究において、疾患自体の普遍性と診療ガイドライン策定の要求度の高い前立腺肥大症を対象として、以上に記載した診療ガイドラインを作成した。このガイドラインの有用性の判定には、今後、排尿異常を有する高齢男性に対する一般診療においてどの程度活用されるか、さらに、このガイドラインを用いることによる便益を明らかにする作業が必要である。
さらに、本ガイドラインは、前立腺肥大症の診療を専門とする日本泌尿器科学会の推薦の下に作成したが、泌尿器科専門医のみを対象としたものではないことから、日本Endouro1ogy・ESWL学会、日本老年医学会、日本医師会などの関連諸団体をはじめ、多くの医療関係者や患者団体などによる評価と批判を受け、さらに医療の発展に合わせて、定期的に改訂を重ねなければならないものと考える。
一方、医療も標準化に欠くことのできない要素である患者の疾患に対する認識の向上には、一般市民が容易に理解できる小冊子の作成や現在全国で展開されている排尿障害に対する市民公開講座などを通じた啓蒙活動をさらに発展させる必要がある。
すべての医療従事者と前立腺肥大症に悩む患者・家族が手を携えて、科学的根拠のある診断と治療の選択が可能になるには、今後、適切にデザインされた臨床研究を推進し、自らがその根拠を形成する作業も重要な要素であり、今後の発展が期待される。
前立腺肥大症の診療ガイドライン作成に関する主な論文
Cochrane Library, Pub Med.などのデータベースから抽出した臨床研究の論文を、以下のレベルにランク付けし、主要な論文を以下に記す。
臨床研究論文レベル
T:大規模のRCTで結果が明らかなもの(RCT: Randomized Contro1ed Clinica1 Trial)
U:小規模のRCTで結果が明らかなもの
V:無作為割付によらない同時期の対照群を有するもの
W:無作為割付によらない過去の対照群を有するもの、およぴ専門家の意見が加わったもの
X:症例集積研究(対照群のないもの)、および専門家の意見が加わったもの
前立腺肥大症の疫学・診断
1) Berry SJ, Coffey DS, Walsh PC, Ewing LL: The development of human benign
prostatic hyperplasia with age. J.Urol., 132:474-479, 1984. レベルX
2) Ha1d T.:Urodynamics in benign prostatic hypreplasia; a survey. Prostate(Supp1).,2:
69-77.1989. レベルW
3) Abrams P, Bruskewitz R, De la Rosette J, Griffths D, Koyanagi T, Nordling
J, et al.: The diagnosis of bIadder outlet obstruction; urodynamics Proceedings
of 3rd international Consultation on Benign Prostatic hyperplasia, pp.297-368.
1995.レベルX
4) Holtgrewe HL, Mebust WK, Dowd JB, Cockett ATK, Peters PC. Proctor C.:
Transurethral prostatectomy; Practice aspects of the dominant operation
in American urology. J.Uro1., 141:248-253, 1989. レベルX
5) Kap1anSA, 01sson CA, Te AE: The American Urological Association symptom
score in the evaluation of men with lower urinary tract symptoms; at 2
years of followup. Does it work?. J.Urol., 155: 1974-1974, 1996.レベルV
6) 排尿障害臨床試験ガイドライン作成委員会編:排尿障害臨床試験ガイドライン、医学図書出版、東京、1997.レベルX
7) Koyanagi T, Artibani W, Correa R, Desgranchamps F, DeReijke TM, Govier
F, Hanash K, Hirao Y, Hoisaeter PA, Kobayashi S, Kurth KH、Marshall VR,
Palmtag H, Wasserman N, Zerbib M: Initial diagnostic evaluation of men
with lower urinary tract symptoms; In Proceedings of 4th international
consultation on benign prostatic hyperplasia (BPH).レベルX
8) Oesterling JE, Jacobson SJ, Cooner WH: The use of age-specific reference
ranges for serum prostatic antigen in men 60 years old or older. J.Urol.,
153: 1160-1163, 1995. レベルX
9) Poulson A, Schou J, Puggaard L, Torp-Pedersen S, Nordling J: Prostatic
enlargement, symptomatology and pressure/f1ow evaluation; Interrelation
in padents with symptomatic BPH. Scand.J.Urol.Nephrol., (Suppl. 157):
67-73.1994. レベルX
10) Mah P, Lim C, Abrams Z, Abrams P: Are urine flow studies adequate
for the investigation of older men with lower urinary tract symptoms?
; Proceedings of the 25th Annual ICS 25th Annual ICS meeting, Sydney,
1995.レベルX
11) de1a Rosette JJMCM, witjes WPJ, Debruyne FMY, Kersten PL, Wijkstre
H: Improved reliablity of uroflowmetry investigation; Results of a portable
home-based uroflowmetry study. Brit. J. Urol., 78: 385-390, 1996.レベルW
12) Barry MJ、Cockett AT, Holtgrewe HL, Mcxconnell JD, Sihelnik SA, Winfield
HN: Relationship of symptoms of prostatism to commonly used physiological
and anatomical measures of the severity of bening prostatic hyperplasia.
J.Urol., 150:351-358.1993..レベルW
13) Roehrborn CG, Chinn HK, Fulgham PF, Simpkins KL, Peters PC: The role
of transabdominal ultrasound in the preoperative evaluation of patients
with benign prostatic hypertrophy. J.Urol., 135:1190-1193,1986. レベルX
14) Bosch JLHR, Kranse R, van Mastringt R, Schroder FH: Reasons for the
weak correlation between prostate volume and urethral resistance parameters
in patients with prostatism. J.Urol., 153:689-693,1995. レベルV
15) Kaplan SA, Te AE, Pressler LB, Olsson CA: Transition zone index(TZI)
as a method of assessing benign prostatic hyperplasia; correlation with
symptoms, uronow and detrusor pressure. J.Urol., 154:1764-1769.1993.レベルX
16) Hough DM, List A: Reliability of transabdominal ultrasound in the
measurement of prostate size. Australian Radiology, 35: 358-360, 1991レベルX
17) Bangma CH, Niemer AQHJ, Grobbee DE, Schroder FH.:Transrectal ultrasonic
volumetry of the prostate; in vivo comparison of different methods. The
Prostate, 28:107-110, 1996. レベルX
18) Gerber CS: The ro1e of urodynamic study in the evaluation and management
of men with lower urinary tract symptoms secondary to benign prostatic
hyperplasia. Urology., 48: 668-675, 1996.レベルX
19) McConnel JD: Why pressure-flow studies should be optional and not
mandatory studies for evaluating men with benign prostatic hyperplasia.
Urology, 44:156-158.1994. レベルX
20) EL Din KE, De Wildt MJAM, Rosier PFWM, Debmyne FMJ, De la Rosette
JJMCH : The correlation between urodynamics and cystoscopic findings in
elderly men with voiding complaints. J.Urol., 155:1018-1022.1996. レベルX
21) Koch WFRM, El Din KE, De Wildt MJAM, Debruyne FMJ, De La Rosette JJMCH:
The outcome of renall ultrasound in the assessment of 556 consecutive
patients with benign prostatic hyperplasia. J.Urol., 155:186-189.1996.
レベルX
22) Wasserman NF, Lapointe S. Eckmann DR, Rosel PR: Assessment of prostatism;
Role of intravenous urography. Radiology, 165: 831-835.1987.レベルX
23) Aguirre CR, Tallada MB, Mayayo TD, Perales LC, Romero JM: Comparative
evaluation of prostate size by transabdominal echography, urethral profile
and radiology. J. Urol (Paris)., 86(9): 675-679.1980.レベルV
24) 小柳知彦:排尿時撮影法の診度的意義について. 日泌尿会誌, 65(1): 29-43.1974.レベルX
25) Ameda K, Koyanagi T, Nantani M, Taniguchi K, Matsuno T: The relevance
of preoperative cystometrography in patients with benign prostatic hyperplasia;
correlating the findings with clinical features and outcome after rostatectomy.
J.Urol., 152: 443-447, 1994.レベルX
前立腺肥大症の治療
26) Wasson JH, Reda DJ, Bruskewitz RC, Elinson J, Keller AM, Henderson
WG: A comparison of transurethral surgery with watchful waiting for moderate
symptoms of benign prostatic hyperplasia. The Veterans Affairs Cooperative
Study Group on Transurethral Resection of the Prostate. N.Engl.J.Med.,
332(2): 75-79, 1995.レベルT
27) Buzelin JM, Roth S, Geffriaud-Ricouard C, Delauche-Cavallier MC and
the ALGEBI study group: Efficacy and safety of sustained-release alfuzosin
5mg in patients with benign prostatic hyperplasia. Urol., 47:335-342,1996.レベルT
28) Roehrborn CG, 0esterling JE, Auerbach S, Kaplan SA, Lloyd LK, Mi1m
DR, et al.. for the HYCAT Investigator Group.: The Hytrin Community Trial
study; a one-year study of terazosin versus placebo in the treatment of
men with symptomatic benign prostatic hyperplasia. Urology, 47:139-168,1996.レベルT
29) Roehrborn CG, Siegel RL: Saegel and efficacy of doxazosin in benign
prostatic hyperplasia; a pooled analysis of three double-blind, placebo-controlled
studies. Urology, 48:406-415,1996.レベルT
30) Chapple Wyndaele JJ, Nordling J, Boeminghaus F, Ypma AFGVM, Abrams
P: Tamsulosin, the first prostate-selective alphalA- adrenoceptor antagonist;
a meta-analysis of two randomized, placebo-controlled, multicentre studies
in patients with benign prostatic obstruction(symptomatic BPH). Eur. Urol..29:155-167.1996.レベルT
31) En LM and Tveter KJ: A prospective, placebo-controlled study of the
luteinizing hormone-releasing hormone agonist Leuprolide as treatment
for patients with benign prostatic hyperplasia. J. Urol., 150:359-364,1993a.レベルT
32) Shida K : C1inical effects of allylestrenol on benign prostatic hypertrophy
by double-blind method. Acta. Urol. Jpn., 32:625-6481,1986.レベルT
33) Stoner E and the Finasteride Study Group: Three year safety and efficacy
data on the use of finasteride in the treatment of benign prostatic hyperplasia.
Urology, 43:284-294,1994a.レベルT
34) Stoner E and the Finasteride Study Group: Clinical experience of the
detection of prostate cancer in patients with benign prostatic hyperplasia
treated with finasteride. J.Urol., 151:1296-1300, 1994b.レベルT
35) Lepor H, Wi1liford W0, Barry MJ, Brawer MK, Dixon CM, Gormley G, Haakenson
C, Machi M, Narayan P, Padley RJ for the Veterans Affairs cooperative
studies benign prostatic hyperPlasia study group: The efficacy of terazosin,
finasteride, or both in benign prostatic hyperplasia. N.Engl. J. Med.,
335(8):533-539.1996.レベルT
36) Dreikorn K, Borkowski A, Braeckman J, Denis L, Ferrari P, Gerber G,
Levin R, Lowe F, Perrin P, Senge T: 0ther medical therapies; In Proceedings
4th Intenational Consultation on Benign Prostatic Hyperplasia. Pp.633-659,
1997.レベルX
37) Cowles RSV, Kabalin JN, ChiIds S, Lepor H, Dixon C, Stein BS, Zabbo
A: A prospective randomized comparison of transurethral resection to visual
laser ablation of the prostate for the treatment of benign prostatic hyperplasia.
Urology, 46:155.1995.レベルU
38) Whi1field HN: A randomized prospective multicenter study evaluating
the efficacy of interstitial laser coagulation. J.Urol., 155: 318A, 1996.レベルU
39) Muschter R: Interstitial Iaser therapy. Curr. 0pinion Urol., 6:33-38.1996.レベルV
40) Chapple CR, Rosario DJ, Wasserfallen M, Woo HH, Nordling J, MiIroy
EJG.: A randomized study of the Urolume stent vs Prostatic Surgery. J.Urol.,
153(suppl):436A, 1995.レベルU
41) Dahlstrand C, Wa1den M, Geirsson G and Pettersson S : Transurethral
microwave themotherapy versus transurethral resection for symptomatic
benign prostatic obstruction ; a prospective randomized study with a 2-year
follow-up. Brit. J. Urol., 76: 614, 1993.レベルV
42) De la Rosette J, Tubaro A, Trucehi A, Carter SSTC, Hofner K: Changes
in pressure flow parameters in patients treated by transurethral microwave
thermotherapy using Prostasoft 2.0. J.Urol., 154:1382,1995.レベルT
43) 0esterling JE, Arbor A, Muta Ml, Roehrborn CG, Perez-Marrero R, Bruskewitz
R, Madison Wl, Naslund MJ, Shumaker BP, Perinchary N: A single bIind.
Prospective randmized clinical trial comparing transurethral needle ablation
(TUNA) to transurethral resection of the prostate (TURP) for the treatment
of benign prostatic hyperplasia (BPH). J.Urol., 157:A1282, 1997.レベルU
44) Nakamura K: Treatment of BPH (benign prostatic hypertrophy); high
intensity focused ultrasound (HIFU). Current Therapy, 14(11):1-6.1996.レベルW
45) Rechmann M, Knes JA, Neisey D, Madsen PO, Bruskewitz RC: Transurethral
resection versus incision of the prostate; a randmised, prospective study.
Urology,145 (5):768-775.1995.レベルU
|